見出し画像

忘れてはいけない一年

少し前の話になりますが、今シーズンの公式戦をすべて終え、クラブとしても仕事納めを迎えました。本当にどうなることかと思った時期もありましたが、医療従事者の方々をはじめ、多くの方々のご協力のもと、なんとか一年を終えることができました。本当にありがとうございました。

なんとなく忘れてはいけない一年だったような気がするので、備忘の意味も兼ねて覚えていることをざっと書いておこうと思います。

優勝翌年という、事業面では大きな飛躍を遂げるチャンスの年でしたが、残念ながら想像もしていなかった一年となりました。自分の中では昨シーズンと並び、いや、もしかしたら昨年以上に記憶に残る一年でした。

ACLで2試合、Jリーグ1試合を終えた2月末をもって公式戦が中断。再開は7月まで待たなければなりませんでした。その間のクラブの動きは以前書きましたが、今思うとこの期間にJリーグとして各種プロトコルを作ったことは、非常に大きなポイントだったと感じます。細かい部分は色々な議論がリーグ・クラブ間でありましたが、それでもいち早くルールや基準を明確化したことは後々自分たちの身を助けることになったのではないでしょうか。当時は前例も少なく、明確な根拠もない中で決めないといけないことが多く、非常に大変だったことは想像に難くないです。迅速に全クラブ分のサーモグラフィーを手配するなど、スケールの大きいサポートは非常に心強かったです。改めて、Jリーグの方々にも感謝の気持ちをお伝えしたいです。

リモートマッチ(無観客試合)で迎えた7月8日のホームゲーム、湘南ベルマーレ戦は非常に不思議な感覚でした。多くのファン・サポーターの方にご購入いただいた装飾フラッグを前日からクラブスタッフで取り付けたことを鮮明に覚えています。当時は試合運営に携わるスタッフも最小限にしていたため、会場であるニッパツ三ツ沢球技場に人が本当に少なく、異様な光景でした。そういえば、このリモートマッチの際はマスコットも入場できないルールだったのですが、何としてでもマリノス君を入場できないかとクラブ内で頭を悩ませ、ルールすれすれの提案をしてJリーグの方を困らせてしまったことも思い出します。(※マリノス君はJリーグ開幕当初より、ずっとホームゲームにいたため、ここで途切らせるわけにはいかないと躍起になっていました。)

上の写真は試合前日の様子。よく見るとまだ各座席にはフラッグが完全には取り付けられていません。風が強く夜のうちに飛んでしまう恐れがあったため、急遽上部だけ留め、下部は試合当日の朝から取り付けることに変更したのでした。購入していただいたフラッグが飛んでしまわないか、ひやひやしました・・・

その後、7月12日のFC東京戦から、5,000人という限られた人数とはいえ、お客様をお迎えして試合を開催出来ることになりました。例え5,000人という人数であっても、感染症対策でミスは許されないため、妙な緊張感がありました。運営チームはサーモグラフィーの設置位置や動作方法を事前に検証・確認し、チケットチームは配席についてチケット会社の方々と綿密に打ち合わせをし、ファンクラブチームはメールマガジンの内容を大きく変更して配信し、プロモーションチームは来場出来ない方々向けにオンラインでの施策を準備をし、広報チームやオウンドチームは限られた人数の中、プロトコルに準じた上で選手の声を世の中に届けられるように準備をするなど、自分が見ているチームの中だけでも、各自新しい世の中に適応させるべく仕事をしていました。
いざ試合の日を迎えると、なんとも言えない感情が生まれました。普段の日産スタジアムの感覚からは考えられないほど人が少なかったという感想、そんな中でも試合に見てくれる方々をお迎えできる喜び、試合中は拍手が素晴らしい雰囲気を作ってくれ、「ホーム」の感覚を感じられたことなど、さまざまな思いが交錯しました。

ここで、ビジネスの話(というほどでもないですが)を少しだけ。
5,000人上限の試合では、試合開催に関する費用と入場料収入のバランスをどう取るのかが大きなポイントとなります。一歩間違えると、本来稼ぐべき興行にも関わらず費用の方が上回り、試合を行えば行うほど赤字になるという構図になりかねません。5,000人上限においては、おおよその売上予測は立てられるので、費用をどこにいくら使うのかが頭の悩ませどころでした。本来であれば掛けたい費用を苦渋の決断で削減したことも一度や二度ではなく、苦い思いを味わいました。運営チームの表に出てこない、しかし非常に重要なタスクでした。                       クラブとしては2019シーズンより全面的にダイナミックプライシングを導入しています。AIが推奨する価格は、過去の販売データから非常に大きな影響を受けます。再開直後は5,000人上限や販売期間が一週間しかないという条件下もあり、AIの算出する推奨値がなかなか合理的にならず、価格算出のロジックをチューニングしてもらうということもありました。チケットに関する各取引先企業の方々にも、前例のない事態を前に相当なご協力を頂きました。

脱線ついでに。中断期間中に企画を走らせた「オリジナルナンバーユニフォーム」も印象深かったです。もともとチーム強化サイドからのアイディアだったこともあり、チーム側の全面協力のもとで進められました。小倉勉スポーティングダイレクター(SD)との入団会見はリモートでやらざるを得なかったのですが、逆にチリやアメリカなど海外在住の方も参加できるようになって良かったです。参加していただいた方々の情報をメモを取りながら準備をする小倉SDの姿を隣で見させてもらいながら、クラブに対する色々なリクエストや背番号の由来を聞けて本当に面白く、また多くの方々に応援していただいていることを感じ、背筋がピンとなりました。

10月からはお迎えできる人数もスタジアム収容人数の50%まで引き上げられ、太鼓も解禁となり、ビジターチームのファン・サポーターの方々にも横浜に来ていただけるようになりました。11月の鹿島アントラーズ戦では久しぶりに20,000人を超える方々にご来場いただきました。自分としての体感では40,000人を超える入場者ではないかと感じたほど、バタバタして反省点の多いホームゲームになってしまいました。それでも多くの方にお越しいただき、少しずつではありますが、ホームゲームの雰囲気が戻ってきた実感が湧きました。

ACLの関係で11月中にホームゲームを終えた我々は、ACL関係のイベントに携わりながら、2021シーズンに向けた準備を本格的にスタートさせました。見通しが立て辛いシーズンになることは間違いないので、「予測」と「準備」がいつも以上に大事になると考えています。夏前から議論を重ねた年間チケットの発売を12月に発表するなど、これまで水面下で進めていた案件が徐々に日の目を見ることになります。

ざっと書き殴ってみましたが、本当に長かったような短かったような、非常に不思議な感覚の一年でした。大変な一年だったことには疑いがありませんが、多くの方々に支えられて生きていることを実感できた一年でもありました。

スポーツは、衣食住と比べると、重要度は下がる分野かも知れません。それでも、この不安いっぱいな世の中を明るくする、元気にする力がスポーツにはあると自分は信じています。そのような仕事に携われていることに改めて感謝をし、21シーズンもドンドン挑戦をしていきたいと思います。

改めまして、今シーズンも様々な形で支えて頂き、ありがとうございました。本当に心強く、励まされました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

来年こそ、よい一年になりますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?