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【ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023】挑戦者の紹介VOL.15⦅株式会社Forema⦆

「広島から、ユニコーン企業に匹敵するような、企業価値が高く急成長する企業を10年間で10社創出する」ことを目標に掲げた「ひろしまユニコーン10」プロジェクト。このプロジェクトの一環であり、事業の急成長を伴走支援する「ひろしまユニコーン10  STARTUP ACCELERATION 2023」に挑戦中の16社に、改めて事業の概要や今後の展望などをインタビューしました。

■株式会社Forema CEO    小泉 靖宜さん
「自然界と共存できる社会を目指す」

CEO 小泉 靖宜さん

プロフィール
広島修道大学商学部を卒業後、2007年IT企業に入社し、ウェブデザイナーを経験した。2011年の震災をきっかけに東京からUターンし、ウェブデザイナーとして創業。2016年にジビエ(野生鳥獣)関連商品を販売するForemaサービスを始めた。2017年に株式会社Foremaを設立。2021年から腸内細菌(マイクロバイオーム)の解析事業「byOm(バイオーム)」を始め、力を入れている。


― 事業内容は ―

腸内細菌の解析事業「byOm」及び、データに基づいたフードやサプリの設計、販売を行っています。腸内細菌は心身の健康状態に深く関わる領域です。近年では腸内細菌バランスの崩壊によって、人間のみならず犬や猫でも健康トラブルが急増しています。
腸内細菌の解析はスマートフォンから申し込みを受け、検便キットの発送と採取後の返送を経て、当社で1カ月前後かけて行います。腸内細菌の分布状況、平均的な健康個体との比較、改善案などをレポートとして提出。当社はペットフードだけでなく各種サプリもそろえており、生きた乳酸菌をはじめ、オリゴ糖やフルーツ酵母を配合したもの、酪酸菌を育成するタイプなど、その解析結果に応じたものを提案します。定期的な解析を通じて、食事やサプリの種類と量を微調整しながら改善に役立ててもらう仕組みです。


腸内細菌解析


― 創業のきっかけは ―

私は子どもの頃から動物が好きで、自然や環境をテーマにしたテレビ番組をよく見ていました。そうした情報を見聞きすれば、多くの人が「自然破壊をやめるべき」だと思うでしょう。しかし、現実を見ると「仕方がない」と流されてしまいがちです。私が人と違うのは、割り切れなかったことです。IT企業に就職してからも、その思いは消えず、自分でやるしかないと決意。2011年の震災をきっかけに東京からUターンし、社会起業家の道を歩み始めました。以来、「自然界との共存」という理念を大切にしています。
当初はウェブデザイナーとして活動しながら、ビジネスを通じた環境問題の軽減を模索していました。その一環として、野生の鹿や猪を食材として活用する仕組みづくりに着手しました。人間の都合によって〝害獣〟という名目で駆除された野生動物たちは販路不足などの事情で多くが埋蔵処分されてきました。殺さなくてもよい社会が一番ですが、どうしても仕留めなければならなかったのであれば、せめて〝食〟として活用することで、自然界の循環の中に組み込んであげたいという思いが原点にあります。
また、化学物質過敏症の人が鹿肉では症状が出ないといった話や、ペットの間で食物アレルギーが急増しているという実情をユーザーの方々から聞き、何とか改善させたいと調査や研究を重ねました。2016年に現在の大元となるECサービス「Forema」を本格的にスタート。2021年には自社ラボを設置し、腸内細菌の解析事業「byOm」を始めました。

安芸太田町の廃校を本社・ラボに活用


― 他社との違い、強みは ―

ペットの消化器トラブルでは抗生物質を投与する例も多いのですが、抗生物質は腸内細菌全体に大きなダメージを与えるため、逆に新たな疾患リスクにつながる例が少なくありません。新たに生じた不具合に対して、さらに抗生物質を投与するというのが現在の獣医療現場で起きている大きな問題の一つです。そしてこの時、腸内で何が起きているのかは、これまで確認する手段がありませんでした。当社は先端技術を活用し、この部分を可視化することで、改善のために本当に必要なものは何なのかを精査しています。そこで得られたデータを基に、乳酸菌などの有用菌を直接摂取する「プロバイオティクス」や、有用菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維といった「プレバイオティクス」をサプリとして設計し、製品化しています。製品設計の根拠として、自社で解析した1000頭以上の腸内細菌データを活用しています。

プロバイオティクスやプレバイオティクスをサプリとして設計し、製品化


― プログラム参加のきっかけは ―

これまでに広島県主催のイノベーションサミットのピッチや、セミナーの事業計画発表会などに参加させていただいたことがあり、ベンチャーキャピタルからの出資につながりました。「ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023」プログラムのことも教えてもらい、伴走型支援を受けながらプレゼンスの向上や取引先の開拓、中堅企業との協業などを図りたいと参加しました。


― 事業拡大により世の中にどのようなインパクトを残したいか ―

現在の商品ラインアップはペット向けが多いのですが、人間の健康増進にも積極的に関わりたいと考えています。食物アレルギーや自己免疫疾患など、近年急増するトラブルの回避策として、農薬をはじめとする化学物質や不必要な食品添加物、また過剰に肥育された一部の畜産物などとは一定の距離を置く必要があります。当社は自然界の摂理を大切にする価値観をベースに、製品を通じて心身の健康維持、そして生態系保全にも貢献できればと考えています。
また、近年の研究によって、健康における口腔(こうくう)細菌の重要性がより深く解明され始めています。例えば歯周病菌は口腔以外のさまざまな疾患にも影響しているほか、アルツハイマー病の発症や進行にも関与している可能性があります。今後、腸内と口腔の双方の改善に役立つ製品の開発を目指し、大学や歯科医との連携を積極的に進めていく方針です。腸内細菌は加齢と共に多様性が低下していく傾向が強いため、整腸によるアンチエイジングサプリの開発も進めています。皆が健康で長生きし、安らかに寿命を全うできる社会の実現に貢献したいと考えています。


― 編集後記 ―
ペットを家族と同義に感じる人が増えて関連市場が伸び続ける中、根本的な健康増進につながる〝食〟を提供する株式会社Forema。近年は生活習慣などを見直して腸内環境のバランスを整える〝腸活〟という言葉が注目されており、人を対象にした腸内解析にもビジネスチャンスがありそうです。小泉CEOが語った、「自然界との共存のためには、人工的に低コストで大量生産されたものを選択してしまう消費者の意識を変える必要がある」という言葉が印象に残りました。
将来の消費行動の中核を担っていくZ世代は、特に環境問題への意識が高いとされます。同社に限らず、事業の成長を考える上で「エシカル」(環境保全や社会貢献を含む倫理観)がキーポイントとなるかもしれませんね。
 
★☆ 株式会社Foremaについての参照サイト ★
https://www.forema.jp/


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