アウトドアスポーツ×脳内革命=「ハダシランド」【RING HIROSHIMA】
RINGの取材をやっていると、個人的な琴線にビビッと触れる挑戦者に出会うことがある。今回のチャレンジャーはまさにそれ。ボルダリングやスラックライン(いわゆる綱渡り)のプロということで、アスリートのスポーツ推進プロジェクトと思っていたが……。マインドの在り方自体を変革する大胆不敵なゲームチェンジャーの登場だ。
CHALLENGER「ポーザー株式会社」三由 野さん
とにかく挑戦者の三由 野(みよし・なお)さんのキャリアがすごい。まず三由家は代々ロッククライミングの家系。80年代当時は遊び方が確立していなかったボルダリングのルールを父や仲間たちと共に作り上げ、その黎明期を支えてきた。そして三由さん自身もボルダリング、自転車のダートジャンプ、マウンテンバイク、スキーのビッグエア、激流下りのSUPなど7つの競技でプロ契約を交わしている。
三由さんが代表を務める「ポーザー株式会社」が打ち出す「アウトドアスポーツ×脳科学」というコンセプト。最初は「?」と思ったが話を聞くうちに惹き込まれた。
三由さんの改革はエクストリームスポーツが持つ本能の覚醒と、自分自身との対峙(=他者との競争の放棄)に根付いている。「落ちたら死ぬかも」という極限の疑似体験の中で生身の自分と向き合い、それを乗り越えるスキルを身に付けることで自己肯定感を獲得する。ここでは「ハダシ=本来の自分自身」であり、そこに立ち返ることで生きるチカラを取り戻すのだ。
静かな語り口ながら、その口からは次々と確信的な言葉が流れ出す。ふと思い出したのは、スケートボードが初めて正式種目となった東京オリンピックの場面。選手同士が互いにリスペクトしながら競技を楽しむ姿は、新世代のスポーツマンシップとして脚光を浴びた。人と人が相手を蹴落とし合う「競争」ではなく、それぞれの道を各自が極める「共創」こそが今の時代に必要なのかもしれない。
SECOND①「株式会社ナッカサン」仲 正人さん
1人目のセコンドである仲 正人(なか・まさと)さんは前回に引き続き参加。産官学をつなぐコーディネーターとして活動している。
ただ、セコンドに付いてみて驚いた。
そう、三由さんとハダシランドの活動はものすごい速さで拡大を続けているのだ。
SECOND② 島本栄光さん
拡大の様子を説明する前にもう1人のセコンドを紹介しよう。島本栄光(しまもと・さかみつ)さんは銀行のITガバナンスが専業。これまでRINGは皆勤で参加だが、その島本さんもハダシランドのパラダイムシフトには舌を巻いた。
そして島本さんはある試みに動く。
セコンドを媒介に繋がり合うチャレンジャー。それで一体どんな化学反応が起こったのだろう?
「爆速」で進展する広島事業
次々と新たな契約を締結!
改めて説明すると、ハダシランドは三由さん在住の山口県を中心に行われている子供向けアウトドアスポーツイベント(三由さんは東京都葛飾区出身。縁もゆかりもない中国地方で起業した)。それを広島でも展開するのが今回の目的である。
ハダシランドは12月に行われた未来のパブリックを示すプロジェクトを発掘・応援するアワード「NEXT PUBLIC AWARD」公園・道路部門で優秀賞を受賞するなど、まさに全国的な注目を集めている最中だ。
その広島での活動について、三由さんは「爆速で進んでいる」という。7月に広島事務所を設立。わずか2ヶ月で某大企業と共同でプロダクトを開発をすることが決定した。さらに12月にはハダシランド広島版を開催。その会場には先述した島本さんがセコンドを務める挑戦者の「革新的モビリティ」も参加。それ以外の契約も次々と内定中……いやはや、確かにこれは「爆速」の拡散力である。
現状は2人のセコンドの社会性を火薬として、ハダシランド哲学のビッグバンが広島で起こっていると言っていい。
ハダシランドはプラットフォーム
化学反応を起こしていければ
スケボーなどのエクストリームスポーツにおいて、個々でプレイしていた人たちがぶつかり合って技術を向上させることを「ミックスアップ」と呼ぶ。まさに今、RINGはミックスアップ状態。このハダシランドの大波は今後多くの既存の価値観をひっくり返していくはずだ。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
三由さんの話が面白すぎて大幅に超過してしまったインタビュー。上の原稿に入れられなかったことで興味深かったのが「大人こそハダシで遊んでほしい」という発言。「今のこの状態を当たり前にするには、まず大人が遊ばなきゃいけないんです。大人が自由に遊ぶところを見て、子供がやりたいと言ったら仕方なく順番を譲ってやる(笑)――それが理想だと思いますね」。この人の哲学はまだまだ深い。今後も個人的に追いかけたいと思います!
(Text by 清水浩司)