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キャンプ in ベイサイドビーチ坂!(坂町)【スタートアップ共同調達事業】

ベイサイドビーチ坂の魅力向上を中心に、The Meetでは3件の取り組みを進めている坂町。その活用の仕方がユニークだ。20~30代の有望な若手職員3人がそれぞれ1案件ずつ担当。そこにはスタートアップとの協業の矢面に立つことで社会人として一回り成長してほしいという願いが見て取れる。The Meetは役場の人材育成にも活用されているのだ。


ベイサイドビーチ坂を
通年型のスポットに


今回取り上げる案件は「ベイサイドビーチ坂の美しい自然を満喫するキャンプ場を構築し、地元企業と連携したアクティビティや食を楽しめる新レジャースポットの形成」。基本的に坂町の今回のテーマは「ベイサイドビーチ坂をどう活用するか?」に集約されるが、ここではキャンプを絡めるという提案を検討する。

取材にはプロジェクトを担当する総務部総務課総務係主事の熊本雄太(くまもと・ゆうた)さんと、情報政策監である鳴川雅彦(なるかわ・まさひこ)さんが対応してくれた。

まず、現在日本が直面している人口減少が坂町でも課題としてあります。坂町にあるベイサイドビーチ坂は広島湾エリア唯一の砂浜。西日本有数の全長1.2kmの長さを誇る海浜公園です。ただ、これまでは夏場の海水浴客を中心に釣り客や海岸ドライブがてら寄る人など、季節限定または限られた固定ファンの来場が大部分を占めていました

熊本さん

ベイサイドビーチ坂は広島と呉を結ぶ国道31号に面し、JR呉線水尻駅からもごく近い。非常に目立つスポットだが、確かに夏場限定・海水浴客中心というイメージがある。

幹線道路からもJR駅からも近いベイサイドビーチ坂

ただ、これまで公園の管理は広島県が行っていたが、2023年4月から坂町が管理業務を受託。同時にアウトドアショップの「モンベル」やカフェがオープンするなど、昨今急速にリニューアルが進んでいる。

私たちが目指してるのはベイサイドビーチ坂を通年型のスポットにすることなんです。瀬戸内海の島々に面したビーチってどんな自治体にもある資源ではないので、何か魅力的なものと組み合わせればさらに多くの観光客が来てくれると思うんです。今回はここに来てもらえるきっかけや入口を用意できればと考えました

熊本さん
現在は来場者の多くが海水浴客。夏以外にも人を呼び込みたい

身近に自然と触れ合えるビーチに何かをプラスすることで、さらに多くの人を呼び込めないか? そこで今回は「キャンプ」を加えてみようというわけである。

アクティビティも
楽しめる海キャンプ


坂町が協業相手に選んだ「forent株式会社」は2018年創業。日本全国のキャンプ場を検索・予約できるサイト「ExCAMP」の開発から実際のキャンプ場の運営まで行う、キャンプのプロである。

キャンプに関してはグランピングトレーラーを設置する提案などもいただいたんですけど、普通にテントを立てて行うforentさんの案を採用しました。forentさんの案の方が初期投資も少なく、比較的簡単にスタートできるし、幅広い層の方に楽しんでもらえると思ったからです

熊本さん 

まずはシンプルなキャンプからトライ。基本はベイサイドビーチ坂の一部区画にキャンプサイトを設置するという内容だ。

キャンプって通常は山の中でやるイメージですけど、目の前に広がる海を見ながらゆっくりするのも貴重な経験だと思うんです

さらに敷地内のモンベルさんがアウトドア用品を販売されてるので、それを使ったアクティビティも体験できます。将来的には食材提供できる町内の事業者さんと連携して、幅広いプランを提示できればと思います

熊本さん
敷地内にあるモンベルではさまざまなアクティビティが体験できる

近年のキャンプブームで、キャンプ人口は多い。家族、カップル、ソロキャン……瀬戸内海に沈む夕陽を眺めながらキャンプだなんて、確かにこれは魅力的なレジャーじゃないか!

「ぜひここでビジネスを
やりたい」という高評価


さて現状だが、forentスタッフが視察に訪れ協議した結果、まずはキャンプ体験会のような形で実証実験を行うことに決まった。

とりあえず、いろんなコンセプトでイベントを実施します。たとえば地元の事業者さんに飲食を提供いただいたり、家族で楽しめるバーベキューをやってみたり。そうしたイベントと絡めることで、キャンプに対してどんなニーズがあるか知ることができると思うんです。海水浴シーズンがはじまる夏までには体験会を開く予定です

熊本さん
まずはキャンプを交えた体験イベントで参加者のニーズを探る

いきなりキャンプ場をオープンするのではなく、単発のイベントで様子を見る。これに関してはベイサイドビーチ坂の事情も関わっている。

実はベイサイドビーチ坂は火気厳禁で、バーベキューや花火が禁止されてるんです。これまでもキャンプやバーベキューがしたいという声は多かったのですが、県の管理下にあったのでなかなか調整が難しくて……

しかし先程申し上げたように、昨年から坂町が管理委託を受けました。なのでこれまでできなかったことを実現できるようしていきたいと考えてます

鳴川さん

管理主が坂町に変わったことで施設活用の自由度も向上する。キャンプ場の開設と共にバーベキューも解禁するのか、まずは単発イベントで様子を見るのか、やるとしたら運営主体はどこになるのか……実際規則を変更するとなると多くの障壁が出てくるが、その一方で明るい光も見えている。

forentさんが視察された時、ここはキャンプ場として魅力があるという評価をいただいたんです。ビーチもいいし交通のアクセスもいいので、手ぶらで来て楽しむことができる。全国のキャンプ場を見てきた方に「ぜひここでビジネスをやりたい」と言ってもらえたのは自信になりました

熊本さん
都市から近く、手ぶらで来てマリンスポーツを楽しめるのは他にない魅力だ

乗り越えなければならない壁は多いが、キャンプ専門家からもらったお墨付きがあれば頑張れる――今の坂町はそういう状況にあるのだろう。

元々DXというもの自体
答えがない分野


今回のThe Meetに関して、情報政策監の鳴川さんにはひとつの狙いがある。

実は今回は職員育成という側面もあるんです。若い職員さんに参画いただいて、これまでの役場仕事とは違うチャレンジングな企画をスタートアップさんと一緒に考え、答えがないところから答えを編み出していく楽しさを知ってほしいんです

元々DXというもの自体、答えがない分野だし、庁内横断的に他の部署を巻き込みながらやっていかなければならないもの。その一方でアウトプットもある程度求められます。今後は行政もアンテナを高くして、世の中のニーズや住民から求められてることをキャッチしていかないといけませんからね

鳴川さん
この広いスペースが坂町職員にとって成長のフィールドとなる

考えてみればDXとスタートアップは未知へのトライアルという点で一致する。答えがない問いに立ち向かい、ゼロイチを実現できるかどうか。鳴川さんの想いに若手の熊本さんは何を感じただろう?

これまで業者さんとは決まったことをやってもらうという形でしか関わったことがなかったんですけど、今回はゴールも含めて手探りで進んでいく感じで、そこが面白いところでもあるし、難しいところでもあると思います

今回の件で成長したか?……それはまだわからないですけど、新しいものに触れたことで、これまでの総務の仕事とは異なる知識などいろんなものを吸収できた気はします

熊本さん

熊本さんの答えにかぶせるように、即座に「相当成長してると思うよ」と返す鳴川さん。若手を見守る上司のまなざし。The Meetが引き出したちょっとイイ場面に立ち会えた瞬間だった。


●EDITOR’S VOICE 取材を終えて


ハラスメントやZ世代で昨今なにかと胃が痛い管理職のみなさん。成長してほしいけど昭和のやり方だと不適切にもほどがあるし、じゃあどうすりゃいいんだよ!……という中で出会ったのが今回の坂町のケース。

確かにこれはDXやスタートアップとのかかわりの中で自然と対応力や自発性が磨かれる実践型ワークショップ。費用ゼロで現場の最前線が体験できるなんて、こんな機会ないのでは? 今後は若手研修ツールとしてのThe Meetにも注目していきたいと思います。(文・清水浩司)

 

・共同事業者:forent株式会社
・活用ソリューション:キャンプサイトの設営
・概要:キャンプ場の構築でベイサイドビーチ坂を通年型のレジャースポットに刷新する
・必要経費:100万円(※土地整備費、備品購入費など)


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