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ハッカソンで起業家招致(安芸高田市)【スタートアップ共同調達事業】
昨今はリモートワークやワーケーションの定着によって、エンジニアなど一部の職種では「都心以外でも働ける」という考えが広がってきた。しかしいざ移住となるとなかなか難しいのが現実だ。そんな中、安芸高田市が目を付けたのはハッカソンやワークショップといった取り組み。こうした場を創ることでまちに関係するデジタル人口を増やすというが……そもそもハッカソンって何ですか?
スタートアップを誘致して3年
市内に13のサテライトオフィス
2023年度の「The Meet」では、自治体最多となる4つの案件を採択した安芸高田市。今回紹介するのは「ハッカソンやアイデアソンを通じた住民のデジタル化意識向上及びエンジニアやアイデアとの出会い創出による関係人口の拡大促進」という、なじみのないプロジェクトだ。
取材に対応してくださったのは、市の産業部商工観光課商工係で商工業支援・企業誘致を担当している課長補佐・小野光基(おの・こうき)さん。まず現在の状況について教えてもらった。
安芸高田市はここ3年くらいスタートアップなど新鋭企業とのコンタクトを継続的に取るようにしてて。彼らが持つプロダクトが地域課題の解決に結びつく提案も増えてるんです。今はその流れを加速させ、プロダクトを実装していくため、市役所が間に入って東京のスタートアップと地元の企業を繋げていく橋渡しをしようとしてます
安芸高田市の積極的なスタートアップ誘致は2017年頃スタートした。小野さん自ら都心に出向き、数々の企業に声を掛けた。その成果として、現在13の企業が安芸高田市内にサテライトオフィスを置いている。実は着々とデジタル人材などの引き込みは進んでおり、今回はそれをさらにブーストさせていこうとしている状態だ。
「地方、いいですね」と言ってくれるスタートアップ企業さんは結構たくさんいるんです。ただ、実装するとなると当然マネタイズが必要で、プロダクトをマネタイズできる状態まで持って行かなければならない。ハッカソンやアイデアソンを開催することで、そうした安芸高田に興味を持ってくれる企業さんに集まってもらい、市役所としての方向性を示しつつビジネスの形を構築していく――そういう場が創れればと思ったんです
簡単に言えば、安芸高田市とスタートアップ企業が交流でき、課題や要望を交換しながらプロダクトをマネタイズできるところまでブラッシュアップする場の創出を計るということである。
DXやテック技術を使った
アイデアを募るハッカソン
その安芸高田市が今回協業相手に選んだのは、こちらも東京のスタートアップである「株式会社AilaB(アイラブ)」。2020年創業で、同社の強みはエンジニアが開発したプロダクトを売却したり、エンジニア同士が交流できるプラットフォームを運営するなど、多くのエンジニアとのネットワークを抱えている点である。小野さんが着目したのは、AilaBがすでに他の自治体でハッカソンを開催してきた実績があることだ。
ハッカソンを開催するには、賞金を用意するなどある程度の資金の調達が必要で、さらに審査や評価をしてくれる方とのコネクションを持っていることも必要。エントリーしてくれるエンジニアも集めなければならない。今回はAilaBさんのそうした能力に期待してるところはあります
実際AilaBは2023年、大阪でChatGPTを活用したアプリケーション開発のハッカソン『Monsters×Eggs For Engineer』を成功させ(参加者のべ100人)、長野でもAI技術を活用したソリューション開発のハッカソン『信州ハッカソンin長野』を成功させた(参加者のべ30人)。今回求められているのは、こうした動きの「安芸高田版」だ。
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と、ここで今更ながら「ハッカソンって何?」という疑問が湧いてくる。いや、ハッカソンって名前は聞いたことあるけど、実際どんなものか正確には知らなくて……。
ここでのハッカソンというのは「DXやテック技術、ITなどを伴うスキルをウチに導入したら、どういう化学変化が起きるか?」というアイデアを提案する企業を審査するイベントのこと。ハッカソンと似たものにアイデアソンというのもあって、ウチはアイデアソンも同時にやってるんですが、アイデアソンは既存のプロジェクトをどうブラッシュアップさせるかというアイデアを募集するもの
私の中では0を1にする案を出し合うのがハッカソンで、1を2や10にする案を出し合うのがアイデアソンというイメージです
なるほど、つまりハッカソンとはゼロイチに挑戦する実験場であり、より不透明感も高ければ実現性も計算できない冒険的な集まりと言っていいかもしれない。
6月予定のハッカソンを前に
プレイベントで交流を図る
さて、このプロジェクトの進展であるが、実は去る1月26日、プレイベント的なものとして「第1回 StartUp企業カンファレンス」を開催した。
10社ほどの企業が安芸高田に集まったんです。大半は東京の企業で、会場には地元の方もお呼びしたので、そこで交流やセッションが行われて新たな出会いや関係人口の拡大につながりました。イベントにはAilaBさんが推薦する2社も来られました
イベントには石丸伸二市長も参加し、各社の取り組みや課題感の共有が行われた。市はこうしたイベントを足掛かりに、さらにその先のビジョンまで描いている。
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今後の流れとしてはまずハッカソンを実現して、その中で選ばれた計画に対して実装するまでの手伝いを含め一緒に取り組んでいきます。あと、今は市役所の中で私が窓口となってスタートアップ側と地元のプレイヤー、役所内の担当者を繋いでる状態ですが、そうしたメンター的な役割もAilaBさんに手助けしてもらえればと思います
協業相手に望むのは、市とスタートアップ企業が交流する場の運営と、その後の継続的サポート。現在はAilaBの代表である佐藤律希さんが安芸高田に3度足を運ぶなど、6月開催予定の第1回ハッカソンに向けて精力的に打ち合わせを続けている。
お金の切れ目は縁の切れ目
きちんとした形態を作りたい
実際のハッカソン開催はまだこれからだが、現状の課題について小野さんはこう話す。
実際どれだけの企業が集まって、どれくらい盛り上がるかまだわかりません。あと、この事業を継続するには原資が必要なわけで。それをどのような形で調達するのか、そのあたりも決めていかなければと思ってます
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このプロジェクトは試み自体が冒険的なので結果が出るまで時間がかかり、調整も難しい。それでもやるべき価値があると小野さんは言う。
プロジェクトありきで進めた方が確かにわかりやすいのですが、それだとせっかく関わってくれた企業が「お金の切れ目が縁の切れ目」で「ハイ、サヨウナラ」になりがちというか……それはやりたくないんです。だったら時間がかかるかもしれないけど、きちん企業と関わり続けることができる形態を作ることが大事なのかな、と
望むのはインスタントな付き合いではなく、コンスタントに続けられる関係だ。安芸高田市がやろうとしているのは、山あいのまちと都心のスタートアップをつなぐ持続可能なホットラインを作ることなのだろう。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
安芸高田の場所や風景を知ってる者として、あの土地に都会のスタートアップがサテライトオフィスを置いているという事実には驚かされた。それはもちろん安芸高田市の営業の成果だが、リモートで仕事をする上で場所はどこでも関係ないという「スタートアップの常識」のなせる技でもある。これってむしろ過疎地のポテンシャルを逆手にとって、課題解決の最先端の実験場になれる可能性を秘めているのでは……いやはや、今後安芸高田を見る目が変わりそうだ。(文・清水浩司)
・共同事業者:株式会社AilaB
・活用ソリューション:ハッカソンの開催
・概要:スタートアップが集う場としてハッカソンやワークショップを開催することで、デジタル人材の関係人口拡大を図る
・必要経費:200万円(※イベント制作費、審査員謝礼など)
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