健康×DX×スポーツ=きたひろモデル(北広島町)【スタートアップ共同調達事業】
文字通り広島市の北にある北広島町。芸北、大朝、千代田、豊平の旧4町からなる山あいのまちは御多分に漏れず過疎化が進み、住民の高齢化に直面している。町は町民の健康維持のため2018年から広島大学と組んで継続的に実証実験を行ってきたが、「The Meet」ではそれをさらに前進。姿を見せはじめた「きたひろモデル」の現在地を追った。
健康長寿社会の実現に
スポーツとDXを活用
今回の「The Meet」では3案を採択するなど参加自治体の中でも積極的な北広島町。採択案のひとつは「PHR活用プラットフォーム『みらい健康手帳』・スマートウォッチ・体組成計を活用したこころとからだの健康づくりと運動を通じたつながりの創出」で、これは多くの自治体で関心の高い「健康×DX」のトライアルになる。
町の総務課DX推進係主任の小川康貴(おがわ・やすたか)さんと係長の大本賢一郎(おおもと・けんいちろう)さんが取材に応えてくれた。
長年続いてきた生活習慣を変えるのは並大抵ではない。そんな現状に対し、北広島町が掲げたキーワードが「きたひろスポーツ(きたスポ)」である。
「きたひろスポーツ」というキーワードで健康社会を追求してきた北広島町がデジタルを用いて挑戦する次なる一手。「いかにして健康に気を遣うマインドに変容してもらうか?」という課題に対して選ばれたのが今回の採択案というわけである。
2018年にはじまった
広島大学との実証実験
今回の協業相手は「国立大学法人広島大学」……って、あの広島大学。その広大が開発・監修を務めた健康アプリ「みらい健康手帳」の活用が今回のテーマになるのだが、これについては説明が必要だろう。
実は北広島町と広島大学は以前から共同で「健康×DX」の実証実験を行ってきた。まず2018年、「ひろしまサンドボックス」の枠組みで、みらい健康手帳の前身となる「みらい健幸アプリ」の実証実験の舞台となった。2022年にはメンタルヘルスのDXを考える「こころの健康DXプロジェクト」に参加。ここですでにみらい健康手帳の実証実験をはじめていて、今回はいわばその延長戦、さらなる普及を目指した取り組みとなる。
そもそも、みらい健幸アプリから地続きのみらい健康手帳とは一体どういうものなのだろう? 天下の広島大学がここまで熱を入れて構築しようとしているシステムとはどんなものなのだろう?
それを読み解くキーワードが「PHR」になる。PHRというのはパーソナル・ヘルス・レコードの略で、つまり個人の健康・医療・介護にまつわる情報を指す。このアプリを使えばスマートウォッチや体組成計と連動させることによって、体温・血圧・心拍数・血中酸素・歩数・食事・睡眠時間……といった健康情報が簡単に収集・管理・視覚化できるようになるのだ。
常時このアプリで健康状態がチェックできれば、住民の健康意識も向上するのではないか? DXによって健康に関する気付きを与え、行動変容を促せるのではないか?――それが北広島町で行われている実証実験の中身である。
アプリの導入によって
行動変容を促せるか?
では現在の実証実験はどのような状況にあるのだろう?
今回の実証実験は3~4月の2ヶ月間を予定。昨年高齢者を対象に実証実験を行っているため、比較的メドは立ちやすいという。
ちなみに北広島町役場の職員も実証実験に参加することになっている。
なんとそんなところまで健康にこだわっていようとは! 北広島町の健康への取り組みは筋金入りのようである。
健康に取り組むこと自体
広義の意味でスポーツ
もうひとつ面白いのは、今回の企画と冒頭に挙げた「きたひろスポーツ」がリンクしていくシナリオである。
こうなるとまさに「スポーツの町」の面目躍如だ。
健康×DX×スポーツ――これまで見たことがないシアワセのカタチが北広島町で生まれつつある。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
文中で紹介した「ひろしまサンドボックス」での「みらい健幸アプリ」の公式レポート、実は私が書いてるんです。当時実証実験の舞台となった北広島町を訪れ、役場の担当者の方や実際アプリを使用した住民の方に話を聞きました。あれから3年の歳月を経て、みらい健幸アプリはみらい健康手帳に変わったものの、今も北広島町と連携しながら実装への模索が続いている……「アイツもまだ頑張ってるんだな」。その諦めない姿勢に勇気をもらった「久しぶりの再会」になりました。(文・清水浩司)
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