LEDイルミ in ベイサイドビーチ坂!(坂町)【スタートアップ共同調達事業】
今回の坂町の採択案は基本的にすべて「ベイサイドビーチ坂の魅力向上」がテーマだが、アート、キャンプに続く3つめの案はイルミネーション(注:アートはその後、別エリアに変更)。さまざまな手法で課題を解決しようとする姿が印象的だ。一方で実証実験に臨む職員たちの間にも、それぞれの想いが去来していた。
坂町の職員にとっては
復興のシンボル
今回取材した坂町の採択案は「写真や映像をリアルに映し出し、人の動きに反応して変化する最先端のLEDイルミネーション技術を活用し、今までにない驚きや楽しさを提供」。全3件の採択がアート、キャンプ、イルミネーションであることを考えると、これらをまとめて「ベイサイドビーチ坂・魅力向上3部作」とでも呼びたくなる。
今回取材に応えてくれたのは総務部総務課総務係主事の角戸涼太(かどと・りょうた)さんと、情報政策監の鳴川雅彦(なるかわ・まさひこ)さんだ。
ベイサイドビーチ坂の駐車場利用時間は午前9時~午後10時。かなり遅くまで開いているだけに、日没後の夜の時間帯をいかに活用するかがポイントになる。
ちなみにこの案件を担当する角戸さんは、ベイサイドビーチ坂に強い思い入れがあるという。
今はおだやかなレジャースポットに戻ったが、6年前の記憶はまだ生々しく地元に残る。そんな思い出の場所を明るく照らし出すためのプロジェクトを角戸さんは担当することになった。
SNS映えスポットとして
夜も楽しんでほしい
今回坂町が協業相手に選んだのは「ZIGENライティングソリューション株式会社(以下、ZIGEN)」。ZIGENは東広島市のスタートアップで、LED光源の開発からイルミネーションの設計まで手掛けている。最先端のイルミネーション事業「Twinkly」も展開し、大阪や名古屋などでの実績もある。
方角的に西を向くベイサイドビーチ坂は夕陽の絶景ポイントとして有名だ。瀬戸の日暮れを堪能した後、そのまま夜のイルミネーションに流れるというのは来園者のすごし方として齟齬はないように思われる。
ZIGENが得意とするのは、イルミネーションといってもアトラクション感のあるタイプ。はたしてこの技術の投入でビーチはどう変化するのだろうか?
現状の魅力を損なわず
付加価値を付ける
さて、現在の進行具合だが本格的実証実験に先立ち、まずはテストを行ったという。仮にイルミネーションを導入したとしても、それが夜の海の風情を壊すものでは本末転倒になる。そもそもベイサイドビーチ坂とイルミネーションは共存できるのか?――一番最初に確認したのは、その部分だった。
ビーチとイルミの相性はバッチリ。それを踏まえて、今はどんなターゲットに向けてどんなコンテンツを提供するか協議を重ねている。
ZIGENのイルミを体験した角戸さんは「大人でもすごくわくわくするし、子供は大喜びだと思います」と自信をのぞかせる。今後は春のうちにシステムを構築、海水浴シーズンまでイルミネーションを設置して来場者の反応を確かめる予定だ。
定型業務はデジタルに任せ
人間は本質的業務を担う
では、The Meetという取り組みを通して何を感じただろう?
未来の仕事の在り方を見つめる若手がいる一方、The Meetの窓口となった鳴川さんは別の感慨にふけっていた。
「隣はどんなチャレンジをする人ぞ?」であり「小さくてもできる」。The Meetはイノベーション推進の枠を超え、予想もつかない刺激と気付きを広島の各自治体に与えているようだ。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
角戸さんにベイサイドビーチ坂の思い出を聞いた時、平成30年7月豪雨の話が出て、すぐにアッ!と思いました。確かにベイサイドビーチ坂の駐車場は、土砂で通行不能になった国道31号の迂回路として使われた場所。あの時、私も駐車場を通って被災地に行ったのに、6年が経ってすっかり忘れていたのです。
その「復興のシンボル」にイルミネーションが灯る、闇が光で飾られる……そこに特別な意味はないかもしれませんが、見方によってはひとつの弔意と希望のようにも感じられるのでした。(文・清水浩司)