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ウォールアートで坂町の魅力を表現(坂町)【スタートアップ共同調達事業】
海外に行くとビルや建物のあちこちに大胆な絵が描いてある風景に出会う。いわゆるウォールアート(壁画)だが、そこにはまちの風土や文化が描かれていることが多く、それが芸術を愛する開放的なムードと共に伝わってくる。日本ではまだマイナーなアートを起点にした地域振興。その第一歩を坂町が踏み出そうとしている。
移住促進を進めるため
坂町の魅力を知ってほしい
今回の坂町の採択案は「海外アーティストとのコラボにより坂町ならではの風土や文化を壁画に表現し、アートを起点とした地域交流の創出と魅力あるまちづくりの推進」。
取材には総務部企画財政課主事の藤猪健太郎(ふじい・けんたろう)さんと情報政策監の鳴川雅彦(なるかわ・まさひこ)さんが答えてくれたが、もともとこの案は坂町がThe Meetで掲げた「ベイサイドビーチ坂を拠点とした、さらなる賑わい創出へ」という課題に対して寄せられたものだ。
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まず、現在日本が直面している人口減少が坂町でも課題としてあります。坂町は広島市と呉市の間にあるまちで、ベイサイドビーチ坂は両市を結ぶ国道31号沿いにある海水浴場。これまでは広島県が管理してましたが、2023年4月に緑地部分の管理を坂町が受託しました。同時にアウトドアショップの「モンベル」やレストランもオープン。これを機にベイサイドビーチ坂を中心に坂町全体を盛り上げていきたいと思ったんです
まちを盛り上げたいという想いの裏には、坂町ならではの危機感がある。
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坂町はいま大きな流れとして人口減少問題を抱えてます。その対策として移住促進も進めてますが、移住してもらうにはまず坂町のことを知ってもらわなければなりません。坂町がどんなまちで、どんな魅力があるか知ってもらうために今回の事業を活用できたらと思ったんです
坂町は安芸郡に属しており、熊野町は筆のまち、府中町はマツダといったイメージがある中、坂町にはベイサイドビーチ坂があります。そのスポットを中心にまちの魅力や伝統文化を伝えられればと思いました
正直「熊野町=筆」「府中町=マツダ」に比べると坂町のキャラクターは若干薄い。いわば今回は自治体ブランディングのシンボルであり発信源としてベイサイドビーチ坂を選出したというわけだ。
この人たちとなら一緒に
まちを盛り上げられる
そんな坂町がパートナーに選んだのは「よかpaint」。オーストラリアのメルボルンを拠点に活動し、現在は福岡にオフィスを構えてスプレーアート制作を請け負っているアートチームだ。
よかpaintさんにお願いしようと思ったのは、まずこれまでアートを通して地域振興や地域貢献をやってきた実績があるところ。初期投資を抑えたスモールスタートでの実証実験になるため、低リスクで効果検証が可能という点にも惹かれました
よかpaintはオーストラリアを中心にウォールアートを制作し、来日後は福岡県田川市や富山県高岡市などでも共同事業を展開。すでに数々の作品がまちを飾っている。
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あとは坂町に魅力を感じて、「ぜひ一緒にやりたい!」と言ってくれる強い意欲が感じられた点です。言われたものをただ描くのではなく、デザインに関してもどんなものがいいか一緒に考えてくれて、「この人たちとなら一緒にまちを盛り上げられる」と感じました
そもそも坂町自体それほど大きなまちではなく、みんなが知り合いくらいの地元感の強い地域。そういったところに入り込んでくれる姿勢は本当にありがたいと感じます
海外で培ったフリーマインドと人懐っこさで早くも坂町職員の心をつかんだ、よかpaint。そして両者のコラボレーションがスタートした。
初回は地元の文化や
伝統芸能を発信したい
その実証実験だが、現在は「どこに描くか?」「何を描くか?」に関する協議を行っているところだ。
何を描いてもらうかに関してですが、やはり坂町として一発目のウォールアートになるので地元の文化や伝統芸能を発信できればという想いがあります。先日よかpaintさんが来られて町内の寺社仏閣を案内したんですけど、すごく興味を持たれて。アーティストとして「まちの雰囲気を感じて、地域に溶け込む絵を描きたい」とおっしゃってるんで、いいものができるんじゃないかという期待感があります
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坂町は2つの秋祭りが有名で、八幡神社の秋祭りは各地区から頂戴や曳舟、獅子舞など豪華絢爛な寄進物が出るんです。僕は転職1年目で今年初めて体験したんですけど、すごい迫力でびっくりしました
あと小屋浦新宮社の秋祭りはマッカという赤鬼が出てみんなを叩いたり、けんか神輿みたいな要素もあって。これも面白い祭りなので、そうした部分を多くの人に伝えられたらと思うんです
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ウォールアート制作に向けてモチーフが固まりつつある一方、課題もある。
話を進めていくうちに「せっかくやるのならベイサイドビーチ坂にこだわらず、PR効果の高い場所でやった方がいいんじゃないか?」ということになってきたんです。そうなると壁面も大きくなるし、足場も組まなければいけない。当初の予算では収まらなくなってきたので、町予算での追加計上も考えているところです
課題はあるが、これはバージョンアップという方向性。坂町初のウォールアート制作は熱い情熱を保ちながら進んでいる。
将来「アートのまち」に
なったら面白いね
まだ最終的な作品の完成時期は未定だが、現在の感想や将来への展望について聞いてみた。
今回は初めて壁画でまちを盛り上げるプロジェクトに関われて、とてもわくわくしています。これが新しい坂町のシンボルになって、坂町のことをもっと知ってもらえれば嬉しいです
あと将来的にはアーティストの方々が移住して、地域住民と活発に交流する「アートのまち」になれば面白いねと、よかpaintさんと話してます
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こうした活動をきっかけに芸術家の卵の方や学生さんが根付くようになればいいなという想いはありますけど、まずは一発目を成功させて、町民の方に郷土を愛する心を醸成してもらい、坂町を知らない方には坂町のことを知ってもらいたいと思います
今回のようなアートでまちを発信する試みはこれまでやったことがなかったし、近くでやってるところもあまりないと思うんです。これをきっかけに広島県内に拡がっていっても面白いと思いますね
広島市と呉市の間の「通り過ぎるまち」から「アートのまち」として存在感をアピールする。まず大事なのは一発目。一体町内のどこの壁面に、どんなデザインでウォールアートが完成するか、乞う御期待だ。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
確かに海外ってウォールアートがすごく多いんです。日本は木造住宅という伝統もあって、まちをアートで飾る文化はあまり一般的じゃない様子。私たちにはただの壁に見えても、ウォールペインターの目には絶好のキャンバスとして映るんでしょう。
よかpaintさんの作品を見ると、そんな海外の香りがプンプンします。ベイサイドビーチ坂のシーサイド感と相まって、坂町が広島のウエストコーストみたいになったら(実際は東海岸ですが)……うーん夢が広がります。(文・清水浩司)
・共同事業者:よかpaint
・活用ソリューション:海外アーティストがまちの壁面に描くスプレーアート
・概要:まちの風土や文化を表現したウォールアートを制作することで地元の魅力をアピールする
・必要経費:100万円(※アート制作費、塗料・足場組立費など)
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