海外に行くとビルや建物のあちこちに大胆な絵が描いてある風景に出会う。いわゆるウォールアート(壁画)だが、そこにはまちの風土や文化が描かれていることが多く、それが芸術を愛する開放的なムードと共に伝わってくる。日本ではまだマイナーなアートを起点にした地域振興。その第一歩を坂町が踏み出そうとしている。
移住促進を進めるため
坂町の魅力を知ってほしい
今回の坂町の採択案は「海外アーティストとのコラボにより坂町ならではの風土や文化を壁画に表現し、アートを起点とした地域交流の創出と魅力あるまちづくりの推進」。
取材には総務部企画財政課主事の藤猪健太郎(ふじい・けんたろう)さんと情報政策監の鳴川雅彦(なるかわ・まさひこ)さんが答えてくれたが、もともとこの案は坂町がThe Meetで掲げた「ベイサイドビーチ坂を拠点とした、さらなる賑わい創出へ」という課題に対して寄せられたものだ。
まちを盛り上げたいという想いの裏には、坂町ならではの危機感がある。
正直「熊野町=筆」「府中町=マツダ」に比べると坂町のキャラクターは若干薄い。いわば今回は自治体ブランディングのシンボルであり発信源としてベイサイドビーチ坂を選出したというわけだ。
この人たちとなら一緒に
まちを盛り上げられる
そんな坂町がパートナーに選んだのは「よかpaint」。オーストラリアのメルボルンを拠点に活動し、現在は福岡にオフィスを構えてスプレーアート制作を請け負っているアートチームだ。
よかpaintはオーストラリアを中心にウォールアートを制作し、来日後は福岡県田川市や富山県高岡市などでも共同事業を展開。すでに数々の作品がまちを飾っている。
海外で培ったフリーマインドと人懐っこさで早くも坂町職員の心をつかんだ、よかpaint。そして両者のコラボレーションがスタートした。
初回は地元の文化や
伝統芸能を発信したい
その実証実験だが、現在は「どこに描くか?」「何を描くか?」に関する協議を行っているところだ。
ウォールアート制作に向けてモチーフが固まりつつある一方、課題もある。
課題はあるが、これはバージョンアップという方向性。坂町初のウォールアート制作は熱い情熱を保ちながら進んでいる。
将来「アートのまち」に
なったら面白いね
まだ最終的な作品の完成時期は未定だが、現在の感想や将来への展望について聞いてみた。
広島市と呉市の間の「通り過ぎるまち」から「アートのまち」として存在感をアピールする。まず大事なのは一発目。一体町内のどこの壁面に、どんなデザインでウォールアートが完成するか、乞う御期待だ。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
確かに海外ってウォールアートがすごく多いんです。日本は木造住宅という伝統もあって、まちをアートで飾る文化はあまり一般的じゃない様子。私たちにはただの壁に見えても、ウォールペインターの目には絶好のキャンバスとして映るんでしょう。
よかpaintさんの作品を見ると、そんな海外の香りがプンプンします。ベイサイドビーチ坂のシーサイド感と相まって、坂町が広島のウエストコーストみたいになったら(実際は東海岸ですが)……うーん夢が広がります。(文・清水浩司)