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こりゃモテねーな。

僕はいまマレーシアのイポーというところに住んでいて、滞在歴はもう9年目になる。日本の企業から海外赴任していて、いわゆる現地子会社の社長という立場だ。

マレーシアの子会社には現在6名の日本人が駐在していて、そのうち3名は現地固定(日本に帰る予定がない)で、残りの3名が将来を見据えて海外を経験させようという2名の若手と僕で構成されている。

いわゆるZ世代とかいう言い方をされている若者たちはどういうマインドなのかみたいな話を目にすることもあるけれど、僕が若かった頃だって「新人類」という言い方をされていたし、「バブル世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」みたいな言い方でそれぞれの世代の特徴を表現する言葉はいつの時代にもあって、インチキ臭いコンサルタントやマーケターのような連中の金の種になっていたけれど、僕はこういうふうに人をカテゴライズすることは好きではないし、自分がカテゴライズされるのはもっと嫌いでまっぴら御免だ。

人はそれぞれ全然違う食事をして、違う人たちと知り合って、違う環境で生活して、うまくいったり失敗をしたりを繰り返して成長しているわけだから、当然ひとりひとりがみんな違う。年齢によっても変化するのも当然だし、だから人間は面白い。

自分にとって有益だったり一緒にいて楽しいと感じる人とは付き合えばいいし、その逆だったら付き合わないで距離を置けばいいだけだ。

こういう信念でシンプルに生きてきたつもりだったが、マレーシアに赴任して将来を期待される20代の社員を受け入れるようになってから、恐らく自分のこれまでの生き方は間違っていたのではないかと思わざるを得ない出来事がたくさんあった。僕がいままで出会ってきた、たくさんの人たちはみんな言葉が通じるし、人が嫌がることはやらないとか年上の人には敬語を使うとか自分の意志を伝えるとか美味しいものを食べたら美味しいって言うとかそういうことが身についている人ばっかりで、そうじゃない人もたくさんいることを思い知らされたのだ。

あらかじめ断っておくが、20代の連中がみんなこうだと言いたいわけではない。繰り返しになるが人をカテゴライズするのは大嫌いだし、自分にされるのも大嫌いだ。20代でもすごく優秀で自分にはない能力や感性を持っている人や、人間としての魅力にあふれている人たちもたくさんいる。むしろそっちの方が断然多い。
これから僕にどんな事が起こったかを書くつもりだが、共感してくれるのか、それとも僕が年老いていろんな価値観を受け入れられないようになってしまったのかをみなさんに聞いてみたいという気持ちが強い。僕は現在53歳である。

まず最初にやってきたのは27歳の開発部門に属する男性だった。
最初から性欲丸出しの下半身野郎で、日本でも出会い系サイトで遊んでいたとのことで、マレーシアに赴任しても、すぐに現地のそっち系のサイトに登録してトラブルを起こしたりしていた。
マレーシアはイスラム国家で不倫は発覚するとホントにムチ打ちの刑になったりするからやんわりと注意したら「僕はセックスがしたいんです」と真顔で返答してきた。
次に歯科矯正をしたいから許可してくれ、って言ってきた。2~3年かかるし、そんなのは日本でやってくればいいものの、海外赴任者特権で一定額以下であれば医療費は会社から出るので、それを狙っていたようだ。
次に筋肉をつけたいとのことで、ジム通いを始めた。その後は美白に興味が向かって高い化粧品なんかを買いまくり始めた。吸わなかったタバコもVapeを吸うようになって、住まいであるコンドミニアムの中を歩きながら吸うから住人たちの間でも話題になって、ちょうど気持ち悪く人相が変わってきたぐらいで髪の毛を青く染め上げてきた。
注意をしても「とにかくモテたいんです」と言い続けるばかりだ。
しばらく経ったあと突然「僕はyoutuberになります」って言い出して、会社から補助を受けている宿舎は簡易スタジオと化し、夜な夜なライブ放送をやっていたようだ。
仕事はほとんど指示待ちで、放っておくといつまでもパソコン見てるし、遅刻の常習犯で朝から出社することも出来ずに、どうやって給与をあげればいいのかわからないレベルだった。
会社主催のディナーなんかも平気でその日の昼にドタキャンするし、トドメは飲酒が禁止されているイスラム国家のマレーシアで金を出して従業員にビールを買ってこさせて、従業員といっしょになって会社で飲んでいたのが僕にバレたことだ。
これには厳重に注意をした。反応はただただすいません、申し訳ありませんと繰り返すばかりで、自分でも悪いことだと全く思わなかったそうだ。悪いと思っていながら敢えてやったわけじゃないって言い張るし、まるで小さな子供が親に少しずつ怒られながら、やっていいこととやっちゃいけないことを覚えていくみたいで、手応えもないし、こりゃ早めに帰国させようと思っていたら、自分から「僕のやりたい仕事と違うので、帰国させてください」と言ってきた。

その後に来たのが28歳の機械開発関連の男性だった。
マレーシアに来るなり「マレーシアで結婚したいんです」と言ってきた変わり者で、日本では結婚できないけど、東南アジアのマレーシアなら結婚できるだろうと思いこんでいる昭和の勘違いタイプだった。
年齢と彼女いない歴が同じで、マレーシアの風俗で童貞を卒業してベトナム系の風俗嬢に入れあげて通い詰め、一時帰国をしたときにお土産を買って渡しに行ったらその女性がお店を移動して行方がわからなくなってしまってひどく落ち込んでいた。連絡先を保存してあった携帯は、飲めないお酒を飲んで無くしてしまったようで、こちらとしても手のつけようがない。
食事のマナーが全然ダメで、youtubeでみるような大食い系の人たちにも引けをとらないぐらいの量を、ものすごいスピードで食べる。プライベートで食べているときは自分の勝手だし好きに食べればいいけれど、お客さんとの会食も同じで、中華のコース料理も出てきた順番から片っ端に猛スピードで食べてしまう。お客さんと会話するとか食事を楽しむとかそういうマインドがゼロで、自分が食べ終わってしまうと、お客さんに「どうぞどうぞ、遠慮せずに(早く食べちゃってください)」みたいな話をする。
女性を食事に誘う機会があったら、同じようなタイプの女性を探すのは至難の業なんじゃないかと、勝手に心配してしまう。
仕事はすごく真面目にやるんだけど、とにかくひとつのことしか出来ない。1日で終わりそうなことを3日も4日もかける真面目にクソが付くタイプで、長所と短所が表裏一体という感じだ。
5時に帰ることに命をかけていて、休日は風俗と暴食以外には外出しない素人童貞だ。

ここまで書いてきて、この二人の長所が見えていなかったような感じもして、自分でも反省する部分があるが、前者はホントにどうしようもなかったけれど、なんとか海外のマレーシアに馴染もうとしてはいたし、後者はまだ現役でマレーシアにいるけれど、仕事のやり方によっては伸びしろもありそうだ。少人数で海外で生活していると、日本にいるよりも関係性が深くなるし、見えなくてもいい部分まで見えてしまうということもあるだろう。

でもね、全くの偏見だとはわかっているし、個人的な意見だとも思うんだけど、男性においては、やっぱり女性にモテるのと仕事が出来るのは絶対に比例する。
これだけはZだのゆとりだのどんな世代だと言われたとしても、昔から変わらないんじゃないかな。


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