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IMFで働くという選択肢

38年前の夏にアメリカから帰国。東京で仕事を探していた。何かをしなければならない。アメリカでのいろいろな経験を活かして何かできないか。そのくらいぼんやりとした考えであった。留学を振り返ってやはり授業でやったことに近い仕事。それは国際連合で働くことだった。なんかかっこよさそうに聞こえるけど東京での筆記試験はそれほど簡単ではなかった。

どこが試験会場だったかは忘れた。ただ試験問題はなんとなく覚えている。国連が果たす3つの使命。平和、経済開発、人権。それらの目標に向けて自分は何ができるのか。それを英語で書くという試験だった。わたしは試験の準備のために霞が関にある役所の図書館にいって書籍を読むことくらいしかできなかった。国連の中でどんな仕事に就きたいのか。そんなことは考えなかった。そういうわけでIMF(国際通貨基金)のことは頭になかった。

あるオンラインイベントでIMFについて話をする機会がある。IMFは80年の歴史を持つ国連の専門機関のひとつ。そこでは国際金融と為替相場の安定化を目的として設立された。これまで150ヵ国に対し$700bnを支援。日本円にして94兆円(対ドルレート134円)という。

ただしこのIMFが本来の使命を果たしていないのではないか。また財政支援をするのにお金がそれほど集まってこない。そして支援対象国が経済的発展を遂げるために協力的でないなどの問題が上がってきているという。

この疑念は3つの視点にまとめられるという。ひとつはこの20年間で中国が台頭してきたこと。G20のメンバーとしてIMFに加入しているにもかかわらずIMFのこれまでの支援策に応じないという。次に支援を受ける国が援助を受け続けるだけで返済をせず、内国の財政整備をしないためにおんぶにだっこの状態だという。そしてIMF自体が他の国際機関である世界銀行とのすみわけができず気候変動や健康・衛生といったところまではいってきていることだという。

これらはこの記事でまとめられている内容をそのまま抜き出したものである。

まず中国が独自に支援をすることにより現在65ヶ国の対象に対して10%以上の債務国になっている。これまでのIMFのやり方では債務国が財政的破綻をして財政再建をする場合債務者はその債務額を減免してきた。つまり借金をした額面どおりの返済をしなくてよかった。ところが中国は債務額の減免には応じないという。どんなに苦境が続いてもいつまで経っても返すまでは債務が残る。エチオピアやザンビアは破綻しているという。

次に支援対象国にも責任がある。その中でもアルゼンチンはIMFの支援を2022年だけで6兆円ほど受けているという。これはどうもタダ乗りに近い支援という。(返済できない)またパキスタンは直近の23年で14年間支援を受けている。しかし国内での税制改正をしていない。そのため財源がないという状態である。エジプトの同様のようだ。

そしてIMF自体にも問題はありそうだ。2010年から支援の中に気候変動、健康・医療、そして男女平等という項目が出てきた。それにより本来の財政赤字の解消に向かわず通貨の安定ができないという。IMFは短期の緊急財政支援を目的とする。世銀のように長期の支援ではない。そこにSDGsのような長期で解決をする財政支援を盛り込んでしまっているらしい。

もともと西側諸国の発想とルールで続けてきた緊急支援が形としてなさなっくなっているという。しかしそれでもIMFで働くエコノミストの報酬はいいという。平均年収は$104000であり日本円で1300万円。またシニア・エコノミストになれば$157000と年収2100万円にものぼる。

アメリカの大学院にいけばMBAよりは安く学位がとれる。MBAは2年間で2千万と高額であるのに対して経済学博士号は3年間で1千万程度だという。そして万が一IMFで働く機会がなくても大学に残って研究する機会は残る。

1980年代に就職するときにはここまで考えてはいなかった。経済学部でアメリカに留学をしたいと考えている大学生の皆さんはどうだろうか。IMFに就職をする。それも将来の就職先として候補に挙げてみてはどうだろうか。