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iPhoneでアフリカを救済できるのか
さあ、これから唯一の楽しみである夕食の時間だ。40年くらい前のわたしの毎日の楽しみは夕食であった。ミシガン大学の東側にある寮。そこには食堂があってミールカード(食事券)を使って入る。お決まりの順序で夕食時間を過ごしていた。そこにくる学生はいつも同じ時間に同じところで食べているため席が隣り合わせになる。すると不思議と会話がはじまった。今日はどうだった。何を勉強しているのか。
わたしはこういった光景は日本の大学ではいっさいなかったため羨ましい思いをしながら過ごしていた。そんなとき常連でアフリカ出身の留学生がいた。彼と交わした会話はそれほど多くはないがひとつだけ思い出すことがある。彼がわたしにいった。何を勉強しているのか。わたしは政治学と経済学を勉強している。とても苦労ている。よく授業がわからない。ところで君はなにを勉強しているのか。
アフリカ出身の彼は答えた。文学を学んでいる。文学。なんでそんなものを学んでいるのか。もっと生活の向上に役立つ経済学のようなことを学べばいいのではないか。せっかくアフリカから来たのに実用的なことを学ばなければ役に立たないだろう。彼はいった。文学が好きなんだ。
あるオンラインイベントでアフリカの貧困格差について話す機会があった。これまでアフリカで貧困の調査するにはしっかりとしたデータがなかった。不確かな予測や憶測でしか探ることができなかった。ところが実際の調査をきっかけに大学の専門家が統計手法を用いることにした。それで実態が少しづつ明らかになってきたという。もしこのデータと調査法が正しければアフリカ大陸における貧困格差は最悪だという。
実に10%の富裕層が54%の富を独占している。人口ピラミッドの下半分にあたる貧困層は9%程度しか富がないという。これはどういうことの基づくのか。この80年くらいの変遷があるという。1950年代からアフリカは奴隷の輸出大陸として登場した。続いて欧州による植民地化が進み大規模農園化(プランテーション)に移行していった。現在にいたるも富裕層による腐敗が絶えないという。
経済開発を専門とする経済学者は貧困撲滅に焦点を当ててきた。ところが新しい調査により富の分配の方が貧困格差を是正するには必要ではないかという仮説を出してきたという。
それを聞いたときわたしはひょっとしたら次のことがいえるのではないかという結論にいたった。アフリカの貧富の格差是正にはiPhoneを使ったらいいのではないか。富の分配がうまくいかないというのは商業銀行がうまく機能していないためだろう。欧米の銀行のような預金、貸付、そして決済をする基本的な機能をもった銀行いわゆる商業銀行がいまだに未発達ではないのか。
であれば銀行はいままでのような銀行でなくてもよい。スマホひとつで銀行業務に必要なことはできる。
日本でも異業種の企業が商業銀行の分野に進出してきている。流通系であればセブン銀行やイオン銀行がある。インターネット系では楽天銀行がある。そして中国ではアリペイがある。このアリペイというのはアフリカにおける決済の役割を担うには強力な企業であろう。なにもいままでのような三菱UFJ、みずほ、SMBCといったメガバンクでなくてもよい。決済がまずうまくいけば銀行業がはじめられるであろう。
わたしは富の分配がアフリカの経済課題の大きな部分を占めるという説には賛成する。その問題を解決できるのはスマートフォンではないのかと本気で考えている。格差是正にはもちろん優先順位があろう。しかしいずれは従来の銀行の形ではなくテクノロジーが銀行の役割を果たしていくのではないかという期待を持っている。その象徴がスマホだ。
ミシガン大学でいっしょに食事をしたアフリカ人はどこかの国に帰った。40年前にはこういうことは全く考えられなかった。彼といま食事をしたらどう答えるだろうか。ひょっとしたらスマホが銀行の役割を果たしアフリカをよくするのではないか。
彼に答えを聞いてみたいものだ。やはり好きな文学を読みたいというだろうか。しかもスマホで読みたいといったのならばちょっと頭をかかえてしまう。そこまでアフリカは絶望的ではないだろう。