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話題になっても達成困難なESG

2015年国連でSDGsが採択された。SDGsといえば大学生の誰もが聞いたことがある。すでに週末のボランティア活動を通してなにかしらの経験をしているのかもしれない。活動をしているなかでESGというのを新たに聞くようになってきた。

ESGというのはアメリカの資金運用会社が中心となってE(環境)S(社会)G(ガバナンス)を利かせる活動のことをいう。BlackRock、Vangard、 State Streetといった運用会社は議決権行使助言会社(Proxy advisor)を通じて上場企業の取締役会で助言をする。議題の中に社会課題を盛り込み解決をするように圧力をかける。

わたしはこの話題に大変興味を持っており2020年10月からの2年間さまざまオンラインイベントに参加した。あるイベントでは10回出席をしたうち6割にあたる6回がESGに関わるものだった。他のイベントでも4割を超した。いまでもこの話題はいろいろなところでとりあげられる。

先日新たにESGというテーマをとりあげたオンラインイベントに出席した。そこでは日本企業を事例にとりあげて説明があった。そうなるといよいよESG投資の機運が盛り上がる。そんな話題づくりでもあった。この文章ではなにかしらの関心の的になるESGではある。ただ目標達成は長い道のりであり困難である。これほど深刻度の高い問題に関わることをしなくてもいいのではないか。そのような文章を書いてみます。

まずは気候変動。二酸化炭素の排出により温暖化が進むというもの。これだけでなく熱帯雨林の破壊。環境にやさしい活動。身近では長く暑い夏。熱中症が多発することも含まれよう。

早ければ4月下旬くらいから急に暖かくなる。わたしが7年くらい前に柏市にあるテニスコートで見かけた光景。熱中症により倒れたお年寄りがいた。その方は痙攣が止まらず芝生広場に倒れてしまった。近くにあった車に運ぶことすらできず。むやみに動かしてはいけないので救急車で運ばれた。点滴を柏市慈恵医大で受けて翌日退院したという。

これも気候変動の影響のひとつであろう。気候変動をデータで見るとこうなる。

Our World in Data CO2 emissions - Our World in Data

過去200年間の炭素排出量が国別に載っている。1950年からはじまる2020年までの70年間で排出量が50億トンから350億トンへ。排出は7倍に増加している。近年では欧州が削減に取り組んでいるのに対しアメリカと中国の排出量が高い。2国だけで5割以上に達しているのではないか。

さて問題はここまで排出量が増加してしまい温暖化が進んでしまうと抑制をして目標値に達成するには何年どころか数十年。場合によっては数百年かかるのではないか。

これまで海洋上での取り決めで海洋法も話題になった。海洋法はあらゆる分野の識者が集まり取り決めを行う。多国間の自由貿易により奴隷貿易が廃止され海賊行為が少なくなった。それはほんとうであろう。

ただこれを大気圏まで広げて気候温暖化への取り組みをしはじめると気が遠くなる。コロナ過やウクライナ情勢でたいへんなときにこのような難題に何十年も取り組み格闘するのか。現在の情勢ではESG投資をしていっても気候変動の解決を見るのがかなり先になろう。絶望をする必要はないけれども奇跡は起きないだろう。すぐには70年前の比較的ゆるやかな変動にはならない。

次にジェンダー・ギャップの是正。男女間格差という問題について内閣府による共同参画の発表がある。

「共同参画」2020年3・4月号 | 内閣府男女共同参画局

これを見ると傾向がわかる。上位には欧州の国がたくさんいること。北米が中位でありアジア圏は下位に位置する。その中にあって日本はランキングで121位とかなり低い。それだけ男女間格差が開いており是正されていないという結果が出ている。

WEF(World Economic Forum)通称ダボス会議の報告によると日本での是正には135年かかるという記述がある。この先135年となると到底わたしは生きてはいないだろう。おそらくいま生きている人のほとんどは是正された状態を見ないだろう。やり続けても結果が出ない可能性がある。

もちろん135年という数字をうのみにする必要はない。

ただ男女平等というのはわたしが大学に入学した40年前にはすでに話題になっていた。ということはこの40年何をやってきたのだろう。取り組んだ結果がいまだに121位というのであればこの先何十年かかるのか。

これほど気が遠くなるような課題に取り組んでいくのだろうか。ESGのなかのG(ガバナンス)として取締役会で取り上げる。上場企業は女性の課長職を増やす。現在の15%から半分近くにする。役員の比率を11%から大幅に上げる。その日が来るのか。

2015年からすでに7年が経過した。SDGs・ESGというのはよく聞くようになった。大学生はこの社会問題についてはディフォルト(初期設定)として埋め込まれている。ただし解決の日はまだまだ先だろう。

大学生の読者の皆さんはどこまで関わるのがよいか。わたしは週末を利用して3時間ほど学ぶのがいいと考えている。就職先を決めるためには必要だろうがそこまでだろう。ボランティアで活動するのもいいだろうが話題性の高いESGにのめり込むことはない。