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通関で10ドル出せといわれたら

あと一ヶ月もすればコロナ過から解き放たれる。5月8日からはコロナは季節性の感染症と同じような扱いとして分類されていく。いわばインフルエンザと同じ。それにより国内での移動や活動がこれまでのように増える。人によっては海外に行く人も増えていくであろう。特にいままでビジネスで海外に行っていない人たちは本格的に出張を増やしていく。

今回は比較的海外に行くことに慣れていない人に向けて文章を書きます。その中でもビジネスでアジアの新興国に行く人たちを対象にします。わたし自身この話を聞いたのはいまから6年前。神奈川県の小さな私立大学で国際経営の授業を担当していた頃のこと。大学生に向けてなにか海外で仕事をするときに役に立ちそうな話のネタを探していました。

そこでいろいろ調べていくうちに創造的腐敗(Creative Corruption)という考えにたまたま出くわしました。それを紹介したビデオはYou Tubeにも公開されています。

あるオンラインイベントで創造的腐敗という考えを紹介しました。そこで参加者が5人いてそれぞれに当事者としてどうするか。質問してみたのです。状況はこういうことです。

大学生のうちから海外に興味を持ち卒業後海外にいく仕事をするようになった。仕事はアジアの新興国に向けての仕事で出張も比較的多い。あるとき新興国の一つインドに出張したときのことを例に出しました。成田空港から出発して長い飛行時間のあとようやく空港に到着した。ドアが開き出口に向かう。途中通関でスーツケースをとりだして通過しようとした瞬間。検査官から声がかかった。

現金10ドルを出しなさい。そうすればここを通ることができる。渡さなければ通れない。あなたならどうしますか。

ある参加者はこう言いました。これはチケット代に含まれている。しかもチケットを手配してくれた旅行代理店からはそんな説明はなかった。払う必要はない。検査官と議論をして払わずにそのまま通る。10ドルを出す必要はない。このような意見がありました。

一方で10ドルというのは安い。そんなことは新興国では当たり前に近いことだ。さっさと払って通関でバックを引き取り出口に向かう。時間を無駄にすることはビジネスに影響する。こういう意見もありました。意見は概ねこの二つに分かれていました。払うか払わないか。

創造的腐敗という考えを提唱した人はこういう回答をしたのです。払うかどうかでは払うである。払わなければおそらく通ることはできないであろうしそれが新興国でよく行われていること。ビジネスとしていったからにはよく理解しておかなければならない。ただし通関で10ドルよこせという腐敗行為にはもうひとつ違うやり方があるといいます。

現金10ドルでなく20ドル渡たす。腐敗をさらに腐敗させることにより相手に面を食らわせる。これでアジアの新興国とのビジネス関係をつくっていくというものでした。これを創造的腐敗というそうです。

さてあなたはどうしますか。手元に10ドルだけでなく20ドルあったとします。そうであれば選択肢は10ドルか20ドル。どちらかを選ぶでしょう。新興国ではこのようなビジネスは当たり前。そこでビジネスをしようと乗り込んだわけですから乗り切らないといけない。

わたしはこの話の展開を聞いたときにあるイメージを描いたものです。どちらかというと世の中は腐敗の方向に向かっているのではないか。クリーンには向かっていない。そこで世界腐敗指数というものを大学生に向けて紹介しました。

Corruption Perception Index, Wikipedia

このチャートはウィキペディアで紹介されています。ですのでそれほど現実とはかけ離れていない。世界はこのくらい腐敗しているということです。緑色はどちらかというとクリーンであって人々が腐敗していない。ところがそれが黄色、オレンジ色、そして赤色と濃くなるにつれて腐敗度が増してくるというのです。赤い色の国というのは数字を使って客観性をもって物事の尺度にしません。それだけ取引が腐敗してくるというのです。

さて日本は緑色(グリーン)です。でも東京というのは日々暮らしていて腐敗しておらずクリーンでしょうか。正義がとおりそして人々が汚職や腐敗に染まらずにお金が正しく分配されている。どう見てもそのように見えないのです。東京でさえ緑を獲得できてしまう。であればアジアの新興国であるオレンジや赤というのはどういう国でしょう。

通関で10ドル出せというのは日常茶飯事なのです。

GWに向けて大学生の読者の皆さんは少しだけ友人と話してみてはどうでしょうか。もしアジア出身の知り合いがいたのであればそのひとたちを仲間にいれて話をしてみてください。6年前に大学の授業でとりあげました。そこにはアジアからの留学生もいたのです。おそらく同じような回答が来るはずです。