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南海トラフ地震に備える

100年前の1923年関東大震災が起きた。死者は十万人と推定されている。当時、地震というものがよく解明されていなかった。そのためどこかの作り話でもあろう淡水魚であるナマズが発生源ではないかという憶測が広がった。ならばナマズを捕ってしまえば地震は起きない。いまではそんなことを考える人はいないだろう。

1995年、20年ほど前に阪神淡路大震災が発生。多くの被害が出た。そして2011年3月。記憶にまだ新しい東日本大震災が発生。12年経過したいまでも行方のわからないひとがいる。わたしの知り合いの話では福島に住む人が夜中を通して逃げまどい知り合いの家についたときには泥まみれになっていたという。

それでも地震に対する知見は進み死者の数が減ってきていることは確かだ。しかも地震対策も多くの施設でほどこされるようになってきた。

あるオンラインイベントで南海トラフ地震について話す機会があった。専門家によると今後30年の間にかなりの確実で地震が発生するという。静岡から大阪、そして九州にかけて南海トラフに接するところでは死者が32万人になるのではないかとの予想もある。東京では家屋の状況から6千人くらいに抑えることができるという。それでもこれだけの予想はちょっと怖い。

ではどうしたらいいか。参加してきた人の話を聞いてみた。イベント内には男性3名。女性2名。中年の女性がまず話をし始めた。

食べ物を確保することが先決であろう。人は食べないと生きていけない。地震が発生したときに買い物にいくことができなくなる。そして飲料水も確保しておく。少なくとも3日分が必要ではないだろうか。そして近くに避難をするところがあればそこにいけるように確保しておく。

たしかにこれらの物理的な備えは必要であろう。特に避難場所を知っておくことは必要だ。わたしの住むマンションには自治会に参加するように勧められている。自治会は近くの小学校を地震が発生したときの避難所として確保してくれる。中には親切にも食べ物や飲料水も用意してくれる。

ところが自治会に参加しようというマンションの住人はかなり少ない。44世帯のうち16世帯しか入っていない。地震のときの避難所という意識も低い。残念なことに自治会の前の会長が自治会予算を横領・着服したという事実がある。そのため第3地区自治会の信頼が低い。

避難訓練をしても参加する住人は少ない。助け合いがない。

年配の男性が次に発言をした。地震対策は経験値がものを言う。経験を積むことが大切だ。確かに経験をしておけば正しい行動に結びつくであろう。例えば都内には地震シミュレーションを体験するところがある。そこにいって震度が高いときにどうなるかを体験しておくのはいいことだ。

有明にはそういった施設が整っており地震シミュレーションを体感できるとも聞いている。しかし小さい子供がいるのならばそういった体験をしようとすることもあろうがそういった子供がいない世帯、あるいは、わたしのところのように子供が成人しておりわざわざ体験会には参加しない。それぞれの職場で訓練を受けている。参加に前向きではない。

無料であっても地震シミュレーションをやってみたいか。おそらくしない。

最後に中年の女性が加わった。心理的な訓練をしておくこと。特にパニックにならないように日頃から訓練をしておくのがいい。わたしは感心した。これは的を得た答えだった。というのは大震災のときには多くの人がパニックになりそのためにけがをしたり、場合によっては命を落としてしまったことが考えられる。このパニックによる人災被害訓練というのがなかなかできない。

ひとは自分のことしか考えない。そこで我先に助かりたいと思い立ち、人を押しのけてでも助かりたいと行動してしまう。そのパニックが暴動になりやがては集団の愚行と化してしまう。一説によると100年前の大震災のあとに日本は権威主義や独裁制へと進み、後に太平洋戦争に至るファシズムを呼び起こしたのではないかといわれる。このファシズムほどやっかいなものはない。

戦争をしてやがては広島に原爆が投下された。その原爆をつくったのはドイツのナチスから逃れたユダヤ人。彼らはアメリカに渡った科学者であったというからやっかいである。いまでもその遺恨は残されている。

わたしはこのような話を聞いているうちに一つの考えにいたった。年1回だけはどこかで訓練を受けておいた方がいい。人はやがて忘れる。12年前の東日本大震災ですら忘れようとしている。パニックを起こさずに冷静に考えること。そしてそれがたとえ運命であっても避けようがなければそうするしかないではないか。

だからといって現実逃避に走るべきではない。ギャンブルやゲームばかりしていても何も生まれはしないであろう。定期的な訓練をして備えをしておく。それだけでも被害を少しだけ抑えることができよう。