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銀行破綻後も規制強化せず

2007年くらいから始まった金融危機。ニューヨークにあったリーマン・ブラザーズの経営破綻はだれもが記憶していることだろう。当時は金融機関による無謀な貸付や住宅ローンの崩壊がとりだたされていた。リーマンという投資銀行の中でも優秀な人材を集めていたところで金融派生商品(ディリばてぃぶ)を扱っていた。ほとんどだれでも豪邸が買えるようなうそっぽい話がささやかれた。うまくいくはずはない。

大銀行の倒産により連邦準備銀行(中央銀行)は税金を投入して救済しなければならなかった。銀行の不祥事を税金を使って助けるなんてばからしいとだれもが考えたろう。しばらくしてその怒りと恐怖は東京にも襲ってきた。わたしは丸の内にある財閥系商社の出向でうまくいかず豊洲にあるIT専門の商社に転職せざるをえなかった。もう金融発端による難とは関わりたくない。経済学者は予見できなかったのか。何をやっているんだろう。

週末のオンラインイベントでシリコンバレー銀行の経営破綻について話をする機会があった。それは経営破綻は確かにあり一日で5兆円以上の預金が引き出された。そして銀行株が30兆円下落したとある。では規制を強化したほうがいいのだろうか。その中のほんの一部であったけれどもとても参考になる意見があった。私の意見では強化する必要はないだろうというものです。

その理由を期間、銀行の数、銀行業といった観点から述べてみます。

まずリーマン・ショックからすでに14年経過していること。それでも銀行の損失を防ぐ規制はそれほど強化されてこなかった。ほとんどの銀行で政府発行の連邦債を保有しています。連邦債は満期まで保有することが前提で貸借対照表に計上する。今回のように利上げで債券の実質価格が下がっても目減りすることを義務付けていない。つまり資産が減っているのに減っていないというような安易な資産計上が会計上できてしまう。これを14年間そのままにしていたのはそれなりの理由があるのでしょう。

そしてメガバンクを除く中小の銀行は4700行あるといいます。ということはアメリカは50州ですから州ごとに約100近い銀行が存在するということです。これだけの数を規制してこなかった。それは銀行業そのものにかかわる理由があると考えざるを得ないのです。それは今回のシリコンバレー銀行破綻で規制を強化すると銀行は稼ぐ方法をさらに失ってしまう。そうすると営利企業としてはやっていけなくなる可能性が出てきてしまう。

というのは銀行が稼ぐのは債権の利息。あるいは住宅ローンを貸し付ける。あるいは証券会社やPEのように荒れ狂う株式(エクイティ)に投資をする。株式はリスクが大きく商業銀行は嫌います。それよりは安全で確実な債券や住宅ローンで確実に収益を上げたい。それ以外に安全な金融商品がないといえます。この債券や住宅ローンまで規制の対象に入ってくると銀行業としてはかなり苦しくなってしまう。商業銀行は稼ぐ方法がない。

破綻を受けてアメリカ合衆国財務省が規制を強化したほうがいいのではないか。二度とシリコンバレー銀行のような破綻を起こさせたくない。そういった意見もあることでしょう。しかしここで強化してしまうと銀行はさらに苦しくなるといえます。財務省は強化には走らない。ビジネスにはリスクはつきものでリスクがないところに収益はうまれない。

2023年になっても税金で銀行を救済しなければいけないのか。預金の安全を確保するために血税を補填する。そういうのはけしからん。この意見ももっともでしょう。しかし規制強化はできない。しようとしないでしょう。

わたしはリーマン・ショック以来、メガ・バンクをはじめ銀行といわれるところにつぎからつぎへと口座を開設しました。それは破綻により預金引き出しができなくなることを回避するため。いまでは従来の銀行だけでなくセブンやイオンといった流通系の銀行もあります。ソニーも銀行業務を扱っている。そういったところに預けておく。それでも将来心配かもしれない。

そうなるとバブル崩壊後にある著名な経営コンサルタントがいったことを実行するしかない。それは分散預金。日本円だけでなくアメリカとヨーロッパの銀行に通貨を分散させる。日本、アメリカ、ヨーロッパで同時に銀行が破綻することはまずないだろうという前提です。その方は大前研一さんといって経営コンサルティングをしているひとならおそらく聞いたことのある方です。

冷静に状況を見据えており連銀や財務省も規制強化には動かないでしょう。