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Risk,Uncertaity and Profit フランク・ハイネマン・ナイトの「リスク、不確実性そして利潤」1921

フランク・ハイネマン・ナイト 1882-1972 By David R. Henderson
Cited from Econlib.org

 Frank H. Knightは、ミルトン・フリードマンそしてジョージ・ステイグラーが1950年代から1980年代にかけて指導的教授だった、いわゆるシカゴ学派の創建者の一人である。ナイトは、その学位論文に基づく著書『リスク、不確実性と利潤』により評価された。同書においてナイトは、なぜ完全競争は必然的に利潤を除かないのかを説明しようとした。彼の説明は、不確実性uncertaintyとリスクとを区別した。ナイトによれば「リスク」は結果の蓋然性(確率)probabilityが決定されうる状況を表している。それゆえその結果は保険されている(insured against)。「不確実性」はこれに対して、蓋然性を知ることが出来ない出来事を表している。ナイトは、長期的な均衡においてすら、企業家は不確実性を選択するput up報酬として利潤を稼ぐだろう、と論じた。ナイトによるリスクと不確実性の間の区別は、今日の経済学の教室においても、依然教えられている。
 ナイトは経済学にこのほか三つの重要な貢献を行った。一つはもともとは1933年に出版された一組の講義録『経済組織』である。その中で彼は、経済の循環フローモデルを描いて、投資はそれぞれの投資への収益が必要な限界収益(margin)に等しくなるところまで行われるであろうことを強調した。これらの要素は、今日の教科書に依然残っている。
 Arthur Pigouの道路の混雑は道路への課税を正当化するという見解について論じた、ナイトの有名な論文「社会的費用の説明における幾つかの誤り」(訳注 "Some Fallacies in the Interpretation of Social Cost"(1924))は、経済学への彼のもう一つの貢献である。ナイトはもし道路が私有されているなら、道路所有者は料金tollsを設定することで混雑を減らすであろうことを示した。それゆえ、いかなる政府の介入も必要ではないと。
 ナイトの最後の貢献は、1930年代の資本理論についてのものである。ナイトはEugen Von Boehm-bawerkの資本は生産の時間で測定されうるという見解を批判した。そしてオーストリー(学派)の資本概念についての論争に勝利したと広く考えられている(オーストリー経済学学派を見よ)。
 しかしナイトは、経済学(者)以上の存在だった。彼はまた社会哲学者であり、彼の著述の多くは技術的経済学というより社会哲学の領域のものである。自由への強い信念を持ち、また社会工学の強力な批判者として、ナイトは、独占と社会の不平等との増加により、自由が損なわれることを危惧した。ジョージ・スティグラーは、ミルトン・フリードマンがナイトの不平等が増加するだろうという見解に挑戦していたこと、そしてナイトは言葉を弱めながらもつぎのランチで同じ議論を繰り返したことを語っている。
 ナイトは、一般大衆がごく単純な経済的真実すら理解しないことを、しばしば諦めていた。1950年のアメリカ経済学会の代表演説で彼は述べた。
 「最近私は、恣意的な価格固定政策についての大衆の経済的思考について、あらたながっかりする例を得た。もし説明が必要だとしても、自由市場での水準以下に価格を固定することが、不足あるいは余剰のいずれをもたらすか、説明の必要があるだろうか。しかし住宅の不足と卵とジャガイモの余剰についての大衆の反応は、まるでぬかるみを靴を汚さないように歩く人のようにたどたどしい。」
 しかるに興味深いのは、ナイトは二次大戦中の価格統制継続を求めた1946年の書簡の署名者の一人だったことだ。ナイトは1927年から1955年までシカゴ大学の経済学教授であり、その後亡くなるまで名誉教授だった。

 以下はBritanicaのbibliography

 1885年11月7日White Oaktownship, Mclean county , Illinois, U.S.生まれ
 1972年4月15日Chicago, Illinoisで亡くなる
 アメリカの経済学者。経済学シカゴ学派の主たる創建者とみなされている。
 ナイトはテネシー大学とコーネル大学で教育を受け、1916年にPh.D.を得た。それからアイオワ大学で教え(1919-27年)、シカゴ大学でも教えた(1927-52)。1952年に名誉教授になった。彼の最も有名な経済学の学生には、のちにノーベル賞を受賞するMilton Friedman, George Stigler, James Buchananがいた。
 1921年に出版されたナイトの著書『危険、不確実性そして利潤』は彼の経済学への最も重要な貢献の一つである。その中で、保険できるリスクと保険できないリスクの間の重要な区別を行っている。ナイトによれば、不確実な環境のもとで企業家が稼ぐ利潤は、保険できないリスクに耐えることについての、企業家への報酬である。 
 ナイトはまた、ミクロ経済理論の古典的表明となった『経済組織』と題した専門書を出版した。同書における理論的差異を認識する明晰さは、ナイトにとり哲学者としての初期の訓練となり、経済理論の多くに懐疑的にさせた。


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