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1.4 土地改革の歴史的意義を解読する

(『杜潤生自述』人民出版社2005から)(写真は占春園)

土地改革:今日の農村の基礎を固める
p.17 (解放)新区の土地改革の過程については、前編ですでに語ったところだが、土地改革の意義については、現在、誤解が多いあるいは理解が少ないところである。それゆえ解読を重ねて改め加えることは必要であり、その回答は中国内外の学者の関心問題のいくつかに答えることにもなる。
 一部の人たちは現在、土地改革をすでに過ぎ去った過去の歴史事件で、もはや現実の価値をもっていないと考えている。実際は、中国共産党が行った土地改革は、農村に全面的大革命が入った最初の一戦であり、その意義はすこぶる重大といえる。当初の「合作化」から今日の「包産到戸」まで影響は及んでおり、歴史的出来事(歷史陳跡)と簡単に片づけることはできない。中国において、土地改革は半封建、半植民地社会が現代社会に転化するのに必ず経ねばならない革命的歩みであった。

封建を取り除く(ことで)党は農民を得た
 農民は民主革命の主力軍であり、農業生産力の担い手である。土地改革により農民は土地を獲得したが、土地改革は共産党だけの主張ではなく、孫中山もまた「働くものが田を所有すること」を提唱した。彼が創立した国民党はのちに封建主義、帝国主義妥協、反動に向かったため、農民を指導してこの民主革命を完成できなかった。共産党は反帝反封建を指導し、「農民が土地を取得し、党は農民を取得する」ようにした。農村が都市を包囲する戦略を実現し、数百万の国民党の軍隊を打ち破った。

白石さんたちの訳 農村漁村文化協会p.56 最近になって、何人かの学者は中華民国以降の各種の長沙結果についてあらためて整理した結果、地主が占有していた土地は全体でも40%に達せず、その人口比はおよそ5%であったという。土地改革の結果、農民が得たのはわずかな地代に過ぎなかったのである。

白石さんたちの訳 農村漁村文化協会p.56-57 当初、孫文は土地の権利を平均化するために、地主から有償で買い取ることを提案していたが、のちに「耕す者に農地を与えよ」すなわち耕作者に無償で分与せよと主張するようになった。後年のことだが、台湾地区や日本では、みな政府が土地を買い取り、公債を発行して土地代金に当てた。1946年下半期に党中央は地主の土地を買い取ることを検討し、さらに少数の反動的人物を除いてすべての地主に対して寛容な態度をとるべきであると主張したこともある。

白石さんたちの訳 農村漁村文化協会p.57 建国後、土地改革に関して我々は二つの選択肢があった。一つは有償買い取りであり、もう一つは無償没収である。最終的に没収の政策が採用されたが、それは中国共産党の土地改革は経済制度改革であり、同時に政治改革を推進する階級闘争でもあったからである。

白石さんたちの訳 農村漁村文化協会p.57  ここで忘れてはならない一つの要因がある。それは、当時置かれていた戦争という環境である。劉少奇は1950年6月に土地改革に関する報告の中で次のように述べている。・・・まさにこうした時期だったから、我々は農民が富農の余った土地や財産を取り上げ、地主に対しては少量の土地以外の財産は没収することを許したのである。そうすることで、困窮している農民の欲求を満足させ、農民の高度の革命的熱情を引き出し、人民革命戦争に参加、支援するようにさせたのである。・・・劉少奇選集下巻pp.38-39

白石さんたちの訳 農村漁村文化協会p.58 我々は、当時の土地改革のいくつかのやり方に欠陥があったことを認めるべきである。もし、今日においても中国が社会主義の初級段階にあり、まだ資本主義経済を利用する必要があるとするならば、土地改革で富農を消滅させた政策は評価し直す必要がある

白石さんたちの訳 農村漁村文化協会p.58-59  さらに我々は、労働者の財産、利益に対する保護の面で、当時の土地改革が厳格に法に基づいて行われず、悪影響をもたらしたことを認めなければならない。中国では長期にわたって皇帝権力が統治し、「土地はすべて皇帝のもの」とされており、個人財産を保護し、それが侵されないように保護することは考慮されてこなかった。その影響は今日にまで及んでおり、市場経済を実行しているのに取引上の信用が確立していない状況がある。土地改革の中で、地主が違法に独占している権利をはく奪したのは合法的であったが、「すべてご破算にして平等に分配し直す」やり方はマイナスの影響を残したし、中農の利益を侵害してしまった。・・・今日、農業請負制を実行しているなかでも、農民の土地使用権に対する法的な保護が欠如しているため(農民的土地使用權缺乏法律保障)、村の幹部が勝手に農民の土地の利用権を調整してしまう(村幹部任意調整地権 勝手に元の状態を変更してしまうこと)事件が次々に発生しているが、これは党中央が定めた土地使用権30年間不変の政策に反したものである。今後も法治を軌道に乗せられなければ、社会主義市場経済体制を確立することはできない。

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