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中国の党国家資本主義 Pearson, Current History, Sept.2021

Pearson, Rithmire, and Tsai, Party-State Capitalism in China, Current History 
, Vol.120, Issue 827, Sept.2021, 207-213

(解題) Pearsonら3人の女性学者による連名論文。冒頭部分だけ訳出。国家資本主義に換えて党国家資本主義という概念を提起している。以下の本文では、党国家資本主義とは、党の存続がすべてに優先する体制であること。この体制の成立が輸出依存体制からの脱却という中国の経済体制の転換と結びついていたことを明らかにし、この体制の成立が、習近平体制の登場と重なることも指摘されている。

(要約)中国の経済の経済モデルは、通常「国家資本主義state capitalist」と描かれるが、今や「党国家資本主義party-state capitalism」としてより良く特徴付けられる。そこでは共産党の生き残りが、発展の諸目標より上に置かれる。中国共産党の経済を管理する道具には、国家所有権だけでなく市場介入が含まれるが、民間資本を罰するdiscipline党国家権力の使用がますます増えている。今や中国の起業家たちは、党の路線に忠実であることが期待されているが、それは中国で営業している外国の会社も同様である。その傾向は、中国における国と民間の融合が、自身の国民にとり脅威である外国政府からの反応を強めている。

「党国家資本主義体制における、政治目標としての国家の私物化は、民間資本との妥協の余地を劇的に狭めている。」
 中国経済の構造は、中国の地球規模の経済的足跡が増えることに伴い、世界的な緊張と不安が高まる中間段階に達した。習近平の指導のもと、保守的に展開する中国モデルは、国家のためさらに強力な役割を固めるものに進化した。
   数十年間、中国は国家資本主義ーそれは混合経済を説明する広い概念で、そこでは国家は、市場と私企業が存在する中で支配的な役割を保持しているーの例として選ばれてきた。国家資本主義体制には、中国やロシアのような権威主義国家から、ノルウェイ、ブラジル、インドのような民主主義国家までの幅がある様々な支配体制がある。これらの体制は、経済発展の諸目標、とくに国際化された部門における成長と競争を実現することを目的とする、国家所有権その他の政府介入の道具により特徴づけられる。
 しかし最近の中国モデルにおける変化は、国家資本主義体制との比較をますます不可能にした。というのは国家介入の道具そしてその背後にある論理が異なっている。中国共産党による支配は、本年(2019年)その一世紀を祝っており、現代中国は、党国家の政治的生き残りが、経済発展の諸目標に優先する独自の種(sui generis)の形態としてより良く理解される。この我々が「党国家資本主義」と呼ぶもののの振る舞いは、中国の国内政治そして他の諸政府との関係に周知のprofound結果をもたらしたのである。 
(中略)
 2000年代後半(訳注 2006-2010年を指す)までに中国はその改革のプロセスにおいて、決定的な転換点に直面した。その外に出るところに党国家資本主義が現れた。2008-2009年の世界金融危機は、中国ですでに広がっていた輸出への経済依存の懸念を増幅した。北京(政府)は(金融)恐慌に大量の信用駆動経済刺激をもって対応した。その多くはインフラや土地開発に向けられた。数年のうちに地方政府と企業の債務上昇は、これらの部門の供給過剰の恐怖を引き起こした。<党国家の政治的生き残りが、発展の諸目標より優先する。>これらの経済傾向は、社会の不安定性を増やし、広汎な腐敗を伴い、政治の反応を求めた。
(以下略)
 


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