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Kenneth Arrow 1921-2017

ケネス・アロー By David R. Henderson
Cited from Econlib.org

 1972年にアメリカの経済学者Kenneth Arrowは、Sir John Hicksとともに、一般均衡理論と厚生理論に対する開拓者的貢献に対してノーベル(経済学)賞を受賞した。アローはPh.D学位論文(それに彼の本Social Choice and Individual Valuesは基づいている)により最も良く知られている。そこで彼は有名な「不可能性定理」を証明した。彼は選択についての人々の選好に一定の仮定を置くと、一つの選択が最も好ましいようになる投票ルールを見つけることは常に不可能になることを示した。この単純な例が、18世紀のフランスの数学者にちなんで名づけられたCondorcet’s Paradoxコンドルセのパラドックスである。
(訳注 このパラドックスについてのHendersonの説明はわかりにくかったので、別の説明(Condorcet's Paradox : Georgetown University)に差替える。
 仮定 ある人の選好(順)はA-B-C(の順)とする
    別の人の選好はB-C-Aとする。
    最後の人の選好はC-A-Bとする。
 この3人でA-B-Cの選択を決める投票を行う。
 3人の票はA-B-Cに分かれて決着しない。そこで
 A-B だけで投票すると 2対1 でA
   B-C だけで投票すると 2対1     でB
   C-A だけで投票すると 2対1  でC  
   常に2対1となり決着しない。しかし
 A-B だけで投票すると 2対1 でA
   B-C だけで投票すると 2対1     でB のあと
 A-Bで決戦すると           2対1     でA   が多数に見える。
 ところが 組み合わせの順番を変えて
 B-C だけで投票して  2対1 でB
 C-A だけで投票して  2対1   でC
   B-Cで決戦すると    2対1   でB 今度はBが多数に見える。
 これがCondorcetのパラドックスであるが、ある仮定を置くと、集合的な意思決定が困難になったり、結論の間に矛盾が生ずることが分かる。
    ところでアローの不可能性定理の含意はどこにあるのだろうか。一定の制約のもとでは「個人の選好を集計して社会全体の選好を形成すること」が困難であることを理論的に証明したものと理解できる。)
 アローはまた共著者のGerald Debreauとともに、一定の条件のもとで経済は一般均衡ーすなわち、すべての市場が均衡状態にある均衡ーに達することを示した。新たな数学的技術を使って、アローとDereauは、一般均衡のための条件の一つは、すべての財貨に先物市場が存在せねばならないということであることを示した。もちろん我々はこの条件が支持holdされないことを知っている―例えば、多くの労働サービスについて将来の配達(供給)契約を買うことはできない。
 アローはまた学習曲線の存在に注意した最初の経済学者の一人だった。その基礎的アイデアは、生産者は生産物の産出を増加させるとともに、経験を得て次第に効率的になる、というものである。「生産性を増加する上での経験の役割は、無視されていたわけではない」と彼は書いている。「しかしその関係は、経済理論の主軸main corpusになお吸収されるべきである」。アローの論文から40年以上経ったが、学習曲線の考察はなお、主流の経済分析に完全には含まれていない。
 アローはまた不確実性の経済学についても、優れた仕事をした。この領域での彼の仕事は、経済学者にとってなお標準的な情報源である。
 アローはその職業人生のほとんどをスタンフォード大学(1949-1968そして1980年以降)とハーバード大学の経済学部(1968-1979)で過ごした。彼は学士号をCity College of New Yorkで社会科学で、また修士号とPh.Dをコロンビア大学で経済学で得ている。


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