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趙紫陽 マルクスの限界 1993/04/03

宗鳳鳴《趙紫陽軟禁中的談話》開放出版社,2007年,85
1993年4月3日 趙紫陽は言う。「マルクスは19世紀に生活して、資本主義生産の社会化と私有制(私人佔)とを資本主義社会の基本矛盾だと認識して、資本主義の発展とともに(社会の)両極分化が激しくなり資本主義の晩鐘が鳴らされるとした。しかし20世紀の事実は、資本主義社会では物質製品の欠乏は全く生じないどころか、物質製品は極端に豊富だったこと。また労働者階級が日増しに貧困化したり絶対貧困化することがなかったばかりか、人民の生活水準はあまねく向上し、広大な中間階層が出現し、ブルーワーカーは減少し、ホワイトカラーが増加したことである。歴史事実の発展はマルクスの分析と一致していない。このゆえに、このことは、私有制が物質製品を豊富にできること、人民の生活水準を高められることを説明している。このことは、私有制が生産力を発展させられること、社会進歩を推し進め、社会文明を実現し、かつ資本主義各国と一定程度協調して、ともに発展し繁栄に向かうことを可能にすることを、説明している。欧州連盟が間もなく成立することや、地域的な自由貿易ゾーンが相次いで出現していることは、このことの実証となるだろう。」
 「私有制もまた社会の繁栄をもたらすことができるというのは、マルクスが予見できなかったところだが、しかしそれでも資本主義の実践が証明した事実だ。また東欧の大きな変化、ソ連の瓦解は、実際また公有制の失敗である(失敗を証明している)。それゆえに「公有」「私有」のいずれであるか(劃分)は、(もはや)社会主義形態と資本主義形態の標識とはできないが、このことは現在、議論してはいけない領域(禁区)となっている。」

なお杜導正日記の1993年4月14日(水曜)に、趙紫陽の発言としてマルクスが分析したのは19世紀の資本主義社会でその結論の多くは当時正しくても現在は適当でなくなった(適用しないようになった)という記述がある。また趙紫陽は、ソ連が崩壊したあと、ソ連の人民の多くはソ連制度をなつかしんだり、戻りたいと思っていない。これは深く考えるに値するとしている。
杜導正《杜導正日記 趙紫陽還説過什麽》天地,2010年,44-45

#趙紫陽    #マルクス #私有制 #資本主義 #公有制 #社会主義


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