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中国思想・短編小説・歌曲選

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https://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/7cc5e1ad373775c11668b88a748c64a6 中国的な考え方を知る手がかりを探しています。
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#成城大学

過士行「説吧」『花城』2015年第4期

著者の过士行は1952年北京生まれの劇作家である。そのせいか、本作は演劇の台本のようにも思える。読み手に考えさせることが多く、全てを説明していない。多くの小説が一生懸命に、舞台を説明するのだが、そうではなくとところどころに何でそうなるのか?という疑問が残る部分をあえて残して、読み手に想像させようとしている。過士行《説吧》は『花城』2015年第4期に掲載、その後《2015中國短篇小説年選》花城出版社2016年,pp.64-71などに転載された。 「説吧」は「話しなさい」「話して

朱山坡「天色已晚」『朔方』2014年第2期

 2014中國短篇小説排行榜 百花洲文藝出版社 2015,pp.104-110(『朔方』2014年第2期原載) 著者の朱山坡チュー・シャンポー 1973- は南京大学中文系卒 広西省玉林市在住の作家である。食糧難の時代に肉を買ったことにまつわる思い出は、多くの中国人にとって強烈だったようで例えば以下の記述を参照。  「肉を買う」趙平『私の宝物 泣き虫少年のあの日の中国』連合出版2017年1月pp.56-76 この短編は「僕は3ケ月17日肉を食べていない。僕の3人

春蠶到死絲方盡-畢飛宇「虛擬」『鐘山』2014年第1期

2014中國短篇小説排行榜 百花洲文藝出版社 2015,pp.1-13(『鐘山』2014年第1期原載) 著者の毕飞宇ビー・フェイユウ は1964年生まれ。出生は江蘇省興化市。揚州師範学院卒。現在は南京大学教授とのこと。  今年の冬は特に寒く、昨年直腸がんの手術をした祖父が春節まで持たないのではないかと、父は言っている。この小説は、中学(日本の高校)の物理の教師であり、長く校長を務めた祖父と孫である私、そして父の、その冬に祖父が亡くなるまでの物語である。祖父は朝早くから夜遅

阿成「草根飯店」『作家』2013年第5期

 著者は阿成アー・チェン 1948-。『中國當代文學經典必讀 2013短篇小説卷』 百花洲文藝出版社 2014,pp.15-18(『作家』2013年第5期原載)より採録。本当に短い小品である。輕風拂面(軽く風が顔を吹き抜けた)と題したエッセイの中の一つ。  草根はgrass rootsの訳語だろうか、私とこの店の老主人(老闆)と息子である若主人(小老闆)との関係を語っている。いつの時代のことか。私は老父母の家と通りを挟んで向こう側にある、飯店の老主人に、老父母に毎週日曜に二皿

林白「某年的槍聲」『作家』2013年第3期

中國當代文學經典必讀 2013短篇小説卷 百花洲文藝出版社 2014,pp.124-129 (原載『作家』2013年第3期)。 著者の林白リン・パイは1958年生まれ。 1982年に武漢大学図書館系卒業。女性で在学中から詩作を始めた。女性の視点を生かした、女流文学者として知られるが、この短編では女性的な視点はあまり感じられない。  主人公道良は長年故郷に帰らなかったが、久しぶりに故郷に帰りこの1年ほどは住んでいる。2010年の今繁華街(大街)を歩いていると,1945年、唐

畢飛宇「大雨如注」『人民文学』2013年第1期

《2013中國短篇小説排行榜》百花洲文藝出版社,2014,pp.1-17(原載『人民文学』2013年第1期) 著者の毕飞宇ビー・フェイユウ は1964年生まれ。出生は江蘇省興化市。揚州師範学院卒。現在は南京大学教授とのこと。この小説は登場人物一人一人の心の動きをよく描ききっている。  師範大学の菅道工の大姚(ダーヤオ)には、不釣り合いな娘がいる。大姚は娘のことをお前の子じゃないだろう、とからかわれると、怒りもしないで突然変異(轉基因)じゃないの、と答える。中国将棋がで