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中国経済学史

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#習近平

中国の党国家資本主義 Pearson, Current History, Sept.2021

Pearson, Rithmire, and Tsai, Party-State Capitalism in China, Current History , Vol.120, Issue 827, Sept.2021, 207-213 (解題) Pearsonら3人の女性学者による連名論文。冒頭部分だけ訳出。国家資本主義に換えて党国家資本主義という概念を提起している。以下の本文では、党国家資本主義とは、党の存続がすべてに優先する体制であること。この体制の成立が輸出依存体

ミンシン・ペイ 中国を覆う全体主義の長い影 April 2021

Minxin Pei, China: Totalitarianism's Long Shadow, Journal of Democracy, 32-2, April 2021, 5-21 冒頭部分抄訳 用語 経済発展 民主主義 リプセット ミンシン・ペイ 中国共産党    中国経済 中国政治 全体主義 習近平 資源の呪い 民主化 (要約)過去40年間以上の中国の急速な経済成長は、(中国に)民主化をもたらさなかった。漸次的に自由化を進める代わりに、レーニン主義者の党国家

八項規定2012年12月4日ー反腐敗運動

ここでは手元にある 孟慶海 游以民《十八大以來反腐熱詞》中國方正出版社,2016年3月の記載を使って、習近平政権下の反腐敗運動で問題にされる腐敗とはそもそも何かを考えておきたい。(写真は成城大学3号館)  まず八項規定が登場している。2012年12月4日 中央政治局会議で、工作作風を改善するなどのための八項規定が議決された(小稿末の年表が示すようにそのタイミングは習近平が総書記に就任した直後であった。)。これは政治局同志への注意である。①真実の情況を把握したうえで、

張占娬《中国経済新棋局》2017

 張占娬《中国経済新棋局》人民出版社2017年11月。張占娬は国家行政学院経済学教研部主任。国家行政学院は国の役人、党官僚を教育する組織であるので、この書物はそうした教育の教材だと考えられる(写真は2021年9月2日。コロナ下での習近平総書記を迎えた学習風景。出席者をコロナ前の半数に抑え開催したことが伺える。)。 p.1 習近平同志は指摘している。「私は中国共産党成立百周年のとき(補語 2021年のこと)、小康社会を全面建設(建成)する目標は必ず実現できると確信している。私

国家行政学院 中国経済新常態 2015

これは以下からの採録。大変分かりやすいが、要するに社会人向けの学習教材からである。 国家行政学院経済学教研部編著『中国経済新常態』人民出版社2015年。(写真はコロナ前の2019年9月3日、習近平総書記を迎えた学習風景。) p.3 一、中国経済成長の新段階は経済の新常態を促している  中国は過去三十余年年平均成長率は10%近く、世界経済史で「中国の奇跡」を作った。現在、経済発展を内側で支える条件と外部の需要環境には深刻な変化が生まれ、経済成長速度の切り替え(換擋)

徐偉新 等《中國新常態》2015

 新常態new normalについては2014年5月以降の習近平の発言により、中国は新たな経済状態に対応せねばならない、という経済面での文脈で使われることが多い。  しかし新常態には、政治・思想面に重点を置いた説明が今一つある。以下は徐偉新 等著《中國新常態》人民出版社,2015年, pp.1-125からの抄訳。徐偉新は中央党校副校長で全体の調整を行ったとのこと。10人の実際の執筆者の名前が巻末にある。参照 p.124 本書は党員向けの教材だと思われる。 p.1 はじめに:

胡鞍鋼 鄢一龍 等《中國新發展理念》,2017

  手元にある胡鞍鋼,鄢一龍,唐嘯等《中國新發展理念》浙江人民出版社,2017年3月によれば、2015年10月、中国共産党十八届五中全会は、新たな発展理念として「創新発展,協調発展、緑色発展、開放発展、共享発展」を「五大発展理念」として掲げた(p.2)。同書によれば、2020年にも第十三次五か年計画(2016-2020)が終わり、2020年に全面的小康社会の建設(全面建成小康社會)という、党の100年かけた目標が実現されることをにらみ、また新常態という新たな経済環境の変化を