祝!世界遺産登録!百舌鳥・古市古墳群の「本当の魅力」とは?

・「世界文化遺産」としての価値

7月6日、アゼルバイジャン、バクーでの世界遺産委員会で、大阪の『百舌鳥・古市古墳群』が正式に世界文化遺産として登録されました。

登録基準は(ⅲ)と(ⅳ)、古代日本の祭祀の歴史と、当時の建築技術の証明として「顕著な普遍的価値」があるということで。

代表的な構成資産、「仁徳天皇陵古墳」は、エジプト、ギザの大ピラミッド、中国の始皇帝陵と並び「世界三大墳墓」とされ、面積で言えば世界最大の墳墓とされています。

「世界遺産リストに記載され、将来に向けて保護・保全されるべきもの」としての価値は、十分にあったし、そこに関して疑いようは無いでしょう。

・「見に行く価値のある世界遺産」なのか

5月にICOMOS(文化遺産の登録に際して、事前に調査して評価する機関)から「登録」の勧告を受けて、登録されることはほぼ確実となっていました。

しかし、『百舌鳥・古市古墳群』に関して、とりわけ「仁徳天皇陵」に関しては、「大きすぎて全体が見えない」とか、「でかい森にしか見えない」とか、【行ってもがっかりする】みたいな評価が以前から散見されていました。

「守るべき価値のある世界遺産」としての価値と、「見に行く価値のある世界遺産」としての価値は別。

そこで、実際どんなもんなのか確かめてみようと、勧告の出た5月のうちに大阪へ行き、構成資産となる予定の古墳45件を全て見て回ることにしました。

・百舌鳥・古市の古墳全部歩いて回る!ルートの図解


お絵描きソフト的なのを使う才能がまじでないので小学生が描いた図みたいなのしか描けなかったんですが、二日かけて、上の図の百舌鳥駅から、下の図の古市駅に至る道順で巡りました。

全部見終わった後にiPhoneのヘルスケアのアプリで歩行距離を見たら、二日間で50㎞以上歩いていました。

しかし、その道程は決して徒労ではなく、間違いなく「やってよかった」「見に来てよかった」と思えたものです。

断言します! 『百舌鳥・古市古墳群』は「見に行く価値のある世界遺産」です。

なぜそう言えてしまうのか、その理由をここから説明します。

・神聖さ、荘厳さ、パワースポット感がものすごい「拝所」とは

仁徳天皇陵古墳に限らず、『百舌鳥・古市古墳群』の大きめの前方後円墳には、「前方」のところの中心に「拝所」(はいじょ)と呼ばれる、読んで字のごとく「拝むための場所」があります。

埋葬されている、かつての天皇やその后などに対して祈りを捧げる、お墓参りをするための場所です。

もう、何よりもその拝所に漂う雰囲気が、ほかの寺社仏閣、世界遺産に登録されているどの寺院や神社、教会とも違う、独特な神聖さ、荘厳さをまとっているんです。

とりあえず、仁徳天皇陵古墳の拝所の画像をどうぞ。

これを撮影したのは二日目の夕方、全ての古墳を回り終わった後に、最後にここに来ようと決めて来たもの。

手前の柵までは近づけるけど、そこから先はみだりに立ち入ってはいけない神域。きれいに整えられた白砂からもわかりますね。

仁徳天皇陵古墳の拝所だけ少し豪華なんですが、他の前方後円墳にも、ほぼこれと同じ拝所が備えられています。

これは古市古墳群の「白鳥陵古墳」、日本武尊(やまとたけるのみこと)のお墓とされている古墳、の拝所。

この拝所にお参りする感覚、なんというか「自分がものすごくデカいものに相対している感覚」がします。

物理的にデカいもの(古墳、森、お濠、全部デカい)に相対していることと、古代の天皇という、日本の歴史を遡った先に居た存在に相対しているというスケールの大きさの相乗効果からなる感覚と思われますが、本当に、お参りしているだけで何か力をもらえるような気がします。パワースポットって言葉を乱用するのはあんまり好きじゃないんですが、この拝所というものに関してはそう呼ぶのが適している気がします。

仁徳天皇陵古墳をはじめ、大きめの前方後円墳を巡って、各古墳の拝所をお参りして回るだけでも、相当な満足感が得られるかと思います。本当におすすめ。

・ダンジョン感覚が楽しめる?拝所探索の面白さ

そんな、お参りするのがおすすめの拝所なんですが、それを訪ねて探す行為自体もかなり楽しいのです。

『百舌鳥・古市古墳群』は、堺市、羽曳野市、藤井寺市という街の中に存在する古墳群なので、古墳の周りはほとんど普通の住宅街だったりします。家々の間の狭い道をたどった先に、上の画像にあるような荘厳な拝所に出会うこともしばしば。

なので僕は全部の古墳を歩いて回る旅の中で、拝所のことを「セーブポイント」と呼んでいました。

拝所は見た目も全部似ているので、RPGのダンジョンで迷った先で見慣れた光を見つけて「ああ、またここにあったか、セーブポイント」と思うのと似た感覚を覚えるのです。

とくにダンジョンとして難解だったのが、上の写真でも紹介した「白鳥陵古墳」の拝所探し。

地図を見ながら拝所が有るであろう辺り(前方部の中心)を目指して住宅街を歩いていると、行く先を水路に阻まれたりします。


目の前の柵、二重になっているところの間は水路になっています。

柵に近づいてみると……

なんということでしょう、水路の向こう側の道の先に、目指す拝所が見えるではないですか。

これなんです。

ドラクエとかFFとかやってて、行きたい場所は見えてるのに、目の前の通路からは行けない。見えてるのに。

この後、近くの住民の女性が自転車で颯爽と通ったところに抜け道があることを発見します。

この狭い道を通ると、さっきの「水路の向こう側の道」に行けました。


狭い道を通ると、画像の右側の暗いところに出ます。

こんなトリッキーな道を通らなくても、車道から直接拝所に行ける入り口も後から見たのですが、これもこれでわかりづらい……

画像の右側が、その拝所へ直接行ける通路の入り口。

ね、わかりづらいでしょ?

さすがにこれだけだと難易度高すぎるので、このちょっとした駐車場みたいなところには、立て札が置いてあります。

これで大丈夫かは甚だ疑問ではありますが、羽曳野市の方々のやさしさということで。


・まとめ

とにかく、今日の『百舌鳥・古市古墳群』の世界文化遺産登録を受けて僕が言いたかったのは、

「めっちゃ楽しいよ、百舌鳥・古市古墳群!」ということです。

その楽しさの根拠として最大なのが、拝所の存在。

お参りすること自体もさることながら、そこへ辿り着く道筋も楽しい。

これは京都・奈良・法隆寺にも真似できない、『百舌鳥・古市古墳群』独特の素晴らしさ、面白さだと思います。

大阪の中心部からのアクセスもそう悪くないので、登録記念のタイミングでちょっと足を伸ばしてみて頂きたい。

※正確には、この記事を書いた時点ではまだ世界遺産委員会での審議は済んでいないけど、待っているとタイミング逃して書けなくなるので先走った形で記事を書いています

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