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ソシャゲの始まりと今。「ソシャゲ」の定義とは?基本無料プレイ時代の始まり

ゲーム業界に興味がある方、入りたい方、入ったばかりの若手に向けて、私の知見で何かしら良いキッカケができたらいいな、という気持ちを元に現役ゲームクリエイターの私が書いたさくっと読める入門書シリーズです。

「さくっと読める」がコンセプトなので「時間なかったから読めません!」という言い訳をなくすためにあえてシンプルに書いてる部分もあります。
質問が多ければ補足記事等でフォローしていこうと思います。

より多くの方にしていただきたく思うので、最近業界で流行っているnoteに綴っていくことにしました。

以下は私が所属している同人サークル「GoBeats Works」でコミケで過去頒布した『初めてのソーシャルゲームプランニング(2018)』をベースにしつつ、現状を考慮し大幅加筆修正を行ったものになります。なのでnoteの内容が一番新しいです。
※電子書籍版(BOOTH): https://gobeats-works.booth.pm/

そもそもソーシャルゲームとは何か?

既に社会にも浸透している「ソーシャルゲーム(ソシャゲ)」と呼ばれるゲーム。「ソーシャル(社会的)」という文字通り本来はSNSサービス上で提供されるオンライン・ブラウザゲームを指していました。

しかし、今はPCブラウザ、スマートフォン(Android & iPhone)で遊べるゲーム全般が「ソシャゲ」と呼ばれています。
ブラウザで遊べても、ブラウザを介さなくても仕組み的に同一であればソシャゲではあるのですが、業界内では区別するためブラウザを介さずスマホOS上で動いているもの(『パズドラ』『モンスト』等)を「ネイティブアプリ」「ネイティブゲーム」、PCやスマートフォンのブラウザ上で動くもの(『怪盗ロワイヤル』『釣り★スタ』『グランブルーファンタジー』等)を「ウェブアプリ」「ブラウザゲーム」と呼んでいます。

基本プレイ無料(F2P)という仕組み

ゲームのマネタイズ手法として「F2P 」と呼ばれるものがあります。
「F2P」とは「Free-to-Play」の略称で、「無料」でプレイ可能のビジネスモデルのことを指します。昨今だと「基本プレイ無料、ただし一部アイテム課金」と書かれることが多いです。
F2P形式のゲームは、過去主流だったコンシューマーゲームのパッケージ販売手法とは異なり、プレイヤーは高い金額を払わず、無料でプレイを開始することができます。

ただし、F2P形式のゲームはスタミナ制など一定頻度でプレイ制約が入り、なんらかの待ち時間が発生します。他にも強いキャラクターがすぐには手に入らない等の制約が様々なシーンで発生します。それらの制約をうまく活用し、ゲーム内で小さいストレス発生させ課金を促し、収益を得るのがF2Pのマネタイズの仕組みです。

もちろん、成功しなかった場合は売り上げがほぼ出ず、開発費用の回収すらできません。大ヒットした場合、売り上げは青天井となり企業規模が変わるほどのハイリターンの可能性を秘めています。

F2Pの歴史

基本プレイ無料の仕組みは2001年辺りから中国・韓国で使われ始め、『マビノギ』『スカッとゴルフ パンヤ』がヒットしたことにより、日中韓で一般的なビジネスモデルとして広まりました。アジア以外では『League of Legends』が代表的なタイトルです。

F2Pモデルという仕組み、ソーシャルゲームでは当然のように採用されていますが、実はコンシューマー機(PS4, Nintendo Switch, PS Vita, 3DS, etc…)でも一部採用 されています。ただ、現状コンシューマー機ではパッケージ版のダウンロード販売もしくは追加DLCが目立つようなUIになっており、自然と見つけるのは難しい印象を感じます。

ガチャというシステム、国ごとの違い

皆さまご存知の「ガチャ」というシステム。意外なことに日本版『メイプルストーリー』で2004年に実装されたのが初めて(のはず)。中国・韓国ではランダム型アイテム提供(要はガチャ)が法的に規制 されていたため、初期は日本のみに実装されました。

日本はガチャが売り上げの割合をほぼ締めているのが特徴です。この特徴は国ごとに異なります。例として、韓国では「確定ガチャ 」、中国では「VIPシステム 」が主に使われています。

一見、グローバルに展開しやすいように見えますが、国によってはガチャが法的に使えないという制約があります。また、法的に問題ないとしても、言語を変えるだけのローカライズ では失敗する事例が散見されています。

そのため、昨今は展開する国の国民性や文化によってゲームシステムやマネタイズ、データバランスまで調整する大規模のローカライズが行われるようになりました。例えば『陰陽師』や『アズールレーン』は中国産のアプリですが、日本人向けに数多くの調整がされていたりします。

ガチャとは異なりますが、ヨーロッパでは「EU一般データ保護規則(GDPR)」があるため、ヨーロッパリリースの際はGDPR対応という法的ローカライズの必要が発生します。

余談ですが、日本人には「村社会」という社会構造が根付いています。「みんながやっているから、やってみる」というやつです。そもそも集団心理は世界共通であるのですが、島国として発展してきた日本はより強くこの心理が働きます。

一時期社会現象となった『ポケモンGO』。今でも世界中で大人気のコンテンツですが、最初に熱中していた層は熱しやすく、冷めやすく、という形で落ち着きました。
今のメイン層は元々ポケモンをあまり知らなかった健康に気を使っている年配層だったりします。年配層はいろんなアプリを触るということはせず、健康的であり、子や孫とのコミュニケーションツールになるので定着した印象があります。

もちろん日本に限らず、国民性というのは色々な所に影響しています。

ウェブアプリとネイティブアプリ

「ウェブアプリ」と「ネイティブアプリ」という名称、普段はこのように呼ばれていません。
一般的にウェブアプリ型のゲームは「ブラウザゲーム」と表記されます。意味は同じですので、今後はブラウザゲームという呼称を使っていきます。

代表的なソシャゲゲームサイクルの始まり

携帯型ブラウザゲームと言えば、GREE・Mobageというブラウザプラットフォーム全盛期時代(2010〜2012年前半)辺りが想起されます。当時の有名タイトルとして『ドリランド』『釣り★スタ』『怪盗ロワイヤル』があります。
その後、様子を伺っていた大手ゲームメーカーもソーシャルゲーム参画を表明し始めます。コナミの『ドラゴンコレクション(ドラコレ)』大ヒットを期に、図1のような日本でのガチャマネタイズサイクルが確立。大手ゲームメーカーはより積極的にソーシャルゲームを作り始めました。

図1. ドラコレ型ゲームサイクルスクリーンショット 2020-01-14 2.45.03

PCブラウザゲームの流行

同時期、モバイルブラウザゲームだけでなく、「PCブラウザゲーム」も注目を集めていました。

今の若者は知らないかもしれない、あの「mixi」が本業のSNSで元気な頃、『サンシャイン牧場 』『ブラウザ三国志』という2大タイトルのヒットがありました。今になってみれば、この2タイトルは今なお続く「PCブラウザゲーム」の火種役だったのだと思います。

海外ではFacebookがブラウザゲームのプラットフォームの定番でした。国内だとFacebookはそれほど影響力は強くなく、LINEが最も使われているSNSです。LINEで最も定番なゲームは『ディズニー ツムツム』と想像する方は多いのではないでしょうか。ただ、LINEで提供されているゲームはブラウザゲームではなく、ネイティブゲームです。

では、日本のブラウザゲームはどこにあるのでしょうか?
日本では主に以下のプラットフォームでブラウザゲームが配信されています。

・mixiゲーム
・ハンゲーム
・Yahoo!ゲーム
・Yahoo!モバゲー
・ゲソてんbyGMO
・ニコニコアプリ
・DMMゲームズ
・にじよめ

※他にもありますが、昨今は少しずつ減少してきています。

直近で世間に影響を与えるほどヒットしたPCブラウザゲームは、やはり『艦隊これくしょん』『刀剣乱舞』です。両作品ともにDMMゲームズで提供されているサービスになります。

特に『艦隊これくしょん(艦これ) 』は角川ゲームズとDMMの共同開発であり、まだ知名度のないDMMゲームズというプラットフォームの宣伝、規模拡大的な要素を含んでいました。
『艦これ』のヒットはソーシャルゲームが落ち込み始めたタイミングで、直接的な課金要素がほぼ存在しないゲームを仕掛けたことが功を奏した、という一例になります。

Flashが廃止され、ブラウザ版の移植or終了。ハイブリッド化が進む

『艦これ』をはじめとしてFlashで動いているPCブラウザゲームは多かったのですが、Adobeが2020年末にFlash提供を終了する告知が出ました。そのため、各ブラウザゲームのHTML5対応化が徐々に進んでいます。

事実『艦隊これくしょん』は2018年08月17日に、『刀剣乱舞』は2019年7月30日にHTML5化を実施しました。長期メンテナンスと段階を踏んだアップデートで無事移植が完了しました。

HTML5化は表示側はほぼ全部作り直しになってしまい、開発費用が大きく発生します。そのため、採算が取れないゲームはサービス終了になっていくという二極化が発生しています。

HTML5化のメリットはもちろんiPhone、iPadでもブラウザでアクセスするだけでプレイが可能になります。既存のプレイヤーはどこでもアクセスできる安心感は嬉しいはずです。

UnityやUnreal Engineのミドルウェアの普及により、ブラウザ上での動作にこだわらないゲームも出てきたため、今後は『Hearth Stone』のようにスマートフォン、PC(Steam)同時展開など、スマホとのハイブリッド化がより進むかもしれません。


つづく

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