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本「アプレンティスシップ・パターン」を読んだ

この本のタイトルについて

「アプレンティスシップ・パターン ― 徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技と心得」
原題は「Apprenticeship Patterns - Guidance for the Aspiring Software Craftsman」。
訳すと「徒弟の型 ― ソフトウェア職人志望者へのガイダンス」みたいな感じでしょうか。
邦題は意訳しているはずなのに、分かりにくいと思う…

この本について

2023年2月現在、すでに書籍では絶版で、PDFでの販売のみとなっています。
私は図書館で借りました…

ソフトウェア職人を目指す人に役立つ心構えが、35のパターンとして挙げられています。
文体が少し読みづらいし、これからソフトウェア開発を始める人、始めて間もない人にとってはハードルが高いんじゃないかと思います。
だけど、後からジワジワ効いてくると思うので、そんな事もあるのかと理解はいったん置いておいて記憶にとどめておくのがいいかもしれません。

すでにある程度の経験を積んでいる人は、それぞれのテーマで、自分は今までどうだっただろう、今はどうだろうと振り返ると、これからどうしたらよいか目標がみつかり、励みになるのではないかと思います。

出てくる単語がエンジニアでないとイメージしづらいものですが、よりよい方法を探して学び続けるというのは、他の職種にも共通して役に立つ姿勢だと思います。

「アプレンティスシップ」について

「徒弟」とか「徒弟制度」と訳されている言葉で、別の言い方だと「丁稚奉公」。
職人の世界で、親方の下で一人前になるまでは住込みで無給で働き、「技は見て盗め!」と突き放されるイメージ。偏見。

最近では寿司職人の丁稚奉公が無駄という論調がありました。技術さえあればサービスは提供できるので、そちらの方が修業期間が短く効率もよく、確かに一理ありそうです。
しかし、徒弟制度には技術だけでなく、意識(職人気質)の醸成の役割もあるのでやはり無駄ではないと思います。
やり方を現代的にアップデートする必要はあるかもしれませんが。

2022年のIT系ニュースでは、LinkedInのReachなど、徒弟制度が紹介されていました。
ぱっと見の効率では測れないトータルの利益がそこにあるのかもしれません。

ソフトウェア開発の現場で

入社後、1か月から3カ月くらいの新人研修を経て、現場に配属になることが多いのではないでしょうか。
しかし、研修内容と現場の要求レベルとのギャップは大きく、学ばないといけないことが山積みのはずです。
そんな場面で手取り足取り教えてもらえる余裕があるはずもなく、OJTという名の丁稚奉公に入ります。

教育のないOJTはまさに「見て盗め」の世界です。
研修の多い会社もあると思いますが、すべてを教えてもらえるわけではないです。なので、この本を親方代わりに能動的に学び続けることで、いろんな課題を解決していけると思います。

ですが、独学にはやっぱり限界があると思っていて、本書に書いてある以下の4点を強調したいと思います。

  • 良き指導者を見つける(Find Mentors)

  • 気の合ったもの同士(Kindred Spirits)

  • 同席する(Rubbing Elbows)

  • フィードバック・ループを構築する(Create Feedback Loops)

社内に限らず、社外のコミュニティでも、これがあった方がいいと思います。

キャリアパス

本書の「長い道のり(The Long Road)」にも書かれていて、アメリカも同じなんだと思ったこと。
プログラマを卒業して管理職になったほうが給料が上がる。
プログラミングが好きな人、向いている人は職人を目指し、管理職が向いている人がそちらを目指せばいいと思います。
管理職が上でプログラマが下なんてことはないので、自信をもって職人を目指してもいいと思います。この本で勇気づけられます。(私は職人ではないですけど。)

自分のキャリアを振り返って

20代後半でプログラマの仕事を始めて、管理職や別業界の仕事も少しやっていますが、25年近くプログラマを続けています。
いろんな現場で知り合った同僚たちはほとんど違う職種に転職しています。彼らの活躍を見て嫉妬したり、自分に劣等感を感じていました。
ですが、この本を読んで自分のキャリアを振り返った時に、義務ではなく興味を持って勉強してきたんだな、自分に向いていたんだなということに気づきました。
それから、自分が約5年間、徒弟時代を過ごした会社に巡り合えたことがすごくラッキーだったなと思います。この本に書いてあるいくつかのパターンを実践させてもらっていました。

今後、たとえ職業としてプログラミングはしなくても、何かしら勉強はしてしまうんだろうと思います。だって興味を惹かれるから。
職人といえるほどのスキルはないけど、すでに渡り歩いているからジャーニーマンは名乗れるかな。

書籍の購入

Amazonでは少しプレミアをつけて売っていますね…


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