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一つ年上の女の子

小学校時代の年齢差はたとえ一つ違いであってもとてつもなく大きい。同じ年齢であってもクラスが隣であったりしたらその存在は遠いものになる。ましてや相手が女の子となると、、、

小学校時代のある時期、たぶん1年生か2年生のとき、あるいは1年生から2年生のとき、住んでいる父の会社の社宅の同じ階段の1年上の女の子と毎朝一緒に通学していたことがある。二人きりで、である。自分からそんなことを望むことも頼むことも、そもそも発想することもなかったからきっとお互いの親同士が話し合って決めたことだと思う。相手が年上であることを考えるとひょっとしたら母が一人での通学を心配して女の子のお母さんに一緒に学校へ、とお願いしたのかも知れない。いやきっとそうだろう。

朝家を出てどちらから誘ったかは今となっては覚えていない。5階建てのアパートだったが自分の住む1階からその女の子の住む2階に上がった記憶がないから家の玄関先には行ってはいない。時間を決めて階段を降りたアパートの前で待ち合わせをしていたのだろう。その頃の自分は普段はおしゃべりで活発な子供だったと記憶しているがそれは学校に着いて教室に入ってからのこと。相手が年上でしかも異性であったので比較的大人しく黙って少し後ろを学校までついて行った様な気がする。ひょっとしたら連れて行って貰っているという自覚がそれなりにあったのかもしれない。

あるとき放課後、その女の子ともう一人、女の子の同じクラスのこれまた同じ女の子、その2人と一緒に遊んだことがある。3人でだ。どういう経緯で3人で遊ぶことになったかは覚えていない。ただ、その2人は同じクラスで親しかった様だった。いきなり自分たち2人は宇宙から来たのだ、と自分に言い始めた。最初はからかわれていると思った。しかし、真剣だった。というより今思えば一つ年下の目の前の男の子をからかうことに真剣だったというべきだろうか。同じ年代の男の子なら決して信じなかっただろう。これが相手が女の子となるとなぜか事情は異なる。常識(?)では決してあり得ないことでもあの年代の女の子が「ウソだと思うでしょ。でもホントウのことなのよ!」と言われると反論出来なくなった。実際、その場ではこの2人は宇宙から来たのだと本気で信じたのである。

翌朝、いつもの様に2人で学校へ向かった。早速自分は昨日のことを聞いた。意外にもクスッと笑って「あれはウソよ。」と一言。「2人で相談してウソを言ってからかうことにしたの。」話はそれきりだった。2人とも黙ったまま学校に着きそれぞれの教室に散った。
決して朝のその言葉に納得した訳ではない。昨日のことが一瞬で否定され戸惑うばかりだった。いっそさらに話を膨らましてくれた方が何か夢があった。1つ年上の女の子の捉えどころのない不思議な、謎の魅力に彷徨って見たかったのだろうか。騙されたかったというより、あのときの自分は本当に目の前の2人の女の子が宇宙から来た得体の知れない存在に思えたのだ。

あるとき、50歳を目前にした頃、10歳の女の子が話す言葉にある種妖艶な香りを感じることがあった。同じ年代の男の子には決して感じることのない、触れることの出来ない、届くことのない感覚である。その感覚はあの小学校時代の不思議な放課後のひとときを想起した。似た様な経験をしたな、と。ロリータとはある種その様なものに対する抗い難い魅力を知る男の憧れなのかも知れない。あの年代の少女が持つ特有の透明感は普段の生活では見出せない感覚でありそんな得体の知れないものはやはり地球上のものではない。少なくとも男の自分にとっては。

それにしても10歳頃の女の子特有のあの透明感はいつどの様にして消えていくのだろう。それともあの独特の雰囲気を持ち続けて大人に成長する女性っているのだろうか。

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