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#創作大賞2024
色とりどりのメシの種【最終話】 #創作大賞2024
月曜日を憂鬱に思わない人なんていない。
そう思って生きてきたけど、目の前にいる男は月曜日が好きらしい。道理で話が合わないと思った。
「さて、サトシ君、いよいよだよ」
「何がですか?」
「最終決戦だ」
「は?」
月曜日の朝早くからやってきたと思ったら、マツダはよく分からないことを言い出した。
「マツダさん、ごめんなさい。何を言ってるか分かりません」
「そうだろうとも!僕もそうだった。あ
色とりどりのメシの種【第八話】 #創作大賞2024
紫陽花を見ると、あの日の事を思い出す。
動かなくなったサトシを抱っこ紐で背負い、泣き叫ぶユイを抱き抱えながら、森を抜けてタクシーを拾った。行き先を告げた覚えはないが、タクシーは実家に着いた。
玄関に青い紫陽花が飾ってあったことだけは覚えている。たぶん母さんに色々聞かれたと思うが、放心して何も言わなかったに違いない。気づいた時は朝ごはんの納豆をかき混ぜていた。
「母さん、サトシは?」
一番気に
色とりどりのメシの種【第七話】 #創作大賞2024
雨を聴く余裕もなく、とある神社の裏の森を僕達は歩いている。
僕がひとりで行くと言ったら君は嫌だと言った。
危険なところにひとりで行って勝手にいなくなるのは許せない。あなたがやろうとしていることを私は最後まで見届けたいの。この子も知っておくべきよ。だから私達も一緒に行く。
君はそう言って譲らなかった。
「この子はまだ二歳だよ?」とか言って反論することもできたけど、君を知る僕はそんな事を言っても
色とりどりのメシの種【第六話】 #創作大賞2024
「赤い傘じゃないと嫌だ」と君が言うので、僕たちは傘が売っている店を何軒もはしごした。
急な雨だった。コンビニのビニール傘でいいじゃないかと思ったけど、黙って付き合う。
「この赤じゃない」とか言いながら真剣に悩む君を見るのが好きだ。ようやくお気に入りの赤い傘を見つけて外に出ると、やっぱり雨は上がっていた。
君のワガママは嫌いじゃない。
全部叶えてあげたい。
今すぐにできないことでも、僕は必ず叶え
色とりどりのメシの種【第五話】 #創作大賞2024
金魚鉢に金魚が二匹、まだ仲良く泳いでいる。
去年の縁日であの人と金魚すくいをした。
私は失敗したけれど、あの人は二匹取れた。
「金魚すくい取れたの、俺、初めてだ!」
あの人は大はしゃぎで金魚鉢を買ってきて、毎日、甲斐甲斐しく金魚の世話をしていた。
「そんなに金魚好きなの?」と、私が思わず聞くと、あの人は「だってアケミと取った金魚だし」と言って笑った。
そのくせ今は、私のそばにいない。
私
色とりどりのメシの種【第四話】#創作大賞2024
白い靴を履いて、サトシがヨチヨチ歩きをできるようになった日。嬉しくて私はあなたに電話した。
あなたはいつも忙しくて、私からかける電話には出てくれないけど。
……やっぱり出てくれない。
諦めて電話を切った。
ヨチヨチ歩きをするサトシの笑顔。
早くお父さんにも見てもらいたいよね。
数時間後、思いがけずあなたは帰ってきてくれた。
でも、帰ってきてくれない方がよかったのかもしれない。そしてあなたが考
色とりどりのメシの種【第三話】 #創作大賞2024
「風薫る、いい季節になったね」
買い出しの帰り道、ユイが言った。
「そうだねって、兄ちゃんは言えないよ。ユイ、お前いくつなんだよ」
「知らないの?十二歳。小学六年生です」
「いや、知ってるけど。発言が風流過ぎるんだよ」
「いろいろあったもの。経験が人を作るのよ」
「そうですか」
束の間の、穏やかな時間。
生活が落ち着いたら祖父母の家を出て、ユイと二人、穏やかに暮らしたい。
今の望みは
色とりどりのメシの種【第二話】 #創作大賞2024
子供の日って子供が働く日だったっけ。
むなしい自問自答。
俺は一緒に行きたいというユイに留守番を命じて、ひとりで放火魔の両親の家に向かった。
少し緊張してインターフォンを押す。
「はーい」
「あ、すみません、『何でもヘルプ屋マツダ』です」
「あ、はーい」
優しそうな女の人の声で安心した。
玄関のドアが開いて60代くらいの女性が出てきた。
マツダに言われた通り、挨拶をする。
「こんにちは
色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024
【第一話】メシの種との出会い
腹が減ったら飯を食べる。至極当然のことだ。
その飯は誰が用意してくれるか。
未成年の子供の場合は、お母さん。お父さんが用意してくれる家も多いだろう。
でも、これは当たり前のことではないと知っている。
ウチの場合、ばあちゃんが飯を用意してくれていた。
俺達には両親がいない。生きているか死んでいるかも分からない。ある日、目の前からいなくなってしまったのだ。
だから、じ