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【中編】 レプリコンワクチン(自己増殖型mRNAワクチン)が危険な理由

前編に引き続きレプリコンワクチンが危険な理由についてお話ししていこうと思います。



レプリコンワクチン


図1

図1は私が描いたものです。自己増殖型mRNAワクチンであるレプリコンワクチンは、抗原遺伝子に加えてRNA複製酵素を持っています。明治製菓ファルマ社のレプリコンワクチン「コスタイベ筋注用」に使われているのはアルファウイルス属のベネズエラウマ脳炎ウイルスのゲノムです。元のウイルスゲノムにはRNA依存性RNAレプリカーゼとウイルスの殻の遺伝子が含まれますが、その殻の部分を抗原遺伝子に置き換えて作られたのがこのレプリコンワクチンです。

レプリコンワクチンはRNA複製遺伝子を積んでいるため細胞内で自己増殖します。これは「ワクチン」と名前がついていますが、いわば「簡易型人工ウイルス」とも呼べるようなものです。そしてRNA複製の機序として、複製の際のエラーのために配列が変化する事があるのです。

RNAウイルスの複製と変異

ヒトを含め動植物のゲノムの遺伝情報はDNAでできています。ヒトゲノムの情報はグアニン、アデニン、チミン、シトシンの4種類の物質で構成されており、DNAの配列はこれらの頭文字を取り、G、A、T、Cの文字で表記されるデジタルな情報です。そしてこれらのヌクレオチドはいわば極微小な部品であり、たった一分子の活性酸素がぶつかっても変化してしまうような繊細な素材なのです。これは「デジタル的な情報をアナログで作っている」事がDNA複製の根本的な問題とも言えます。

実際、DNA情報を高速で書き写している際にはミスがしばしば発生します。例えばTaqポリメラーゼを用いた標準的なPCRのプロトコルで60サイクルほどDNAを増幅すると、ある程度の数の変異が溜まるのが確認できます。このように変異というものは本来それほど特別な現象ではありません。これは例えるならば、オリジナルの画像をアナログのコピー機でコピーし続けると画像にノイズが溜まっていくようなもので、遺伝子が複製されるたびに蓄積されるその「ノイズ」が突然変異の原因ともなります。

遺伝子の複製とはまさにオリジナルの遺伝情報を高速で書き写す作業です。そして、書き写しに間違いがあった場合には消しゴムで消して書き直すような修復の仕組みがDNAには備わっています。このような生物の持つ精巧なDNA修復機構はゲノムを安定に維持するために進化してきたものです。

一方、DNAと違いRNAには基本的に修復機構がありません。それはRNAは細胞にとっては使い捨ての遺伝情報に過ぎないからです。ところが例外として一部のRNAウイルスにはRNAの校正機能を持つものがいます (ここでの校正機能とは、間違えた塩基を取り込んだ場合、その塩基を除去してから複製を再開する機能を意味します)。そしてアルファウイルスのレプリカーゼにはその校正機能がありません。RNA複製の問題は複製を繰り返すうちに変化していく事であり、アルファウイルスは変異率が高いのです。

レプリコンワクチンの本質的な問題は「増える」という性質に加え、増えながら「変わっていく」という性質を持つ事です。これはまさにウイルスそのものです。

また、ラゲブリオ (モルヌピラビル) は日本ではコロナに対して風邪薬のような気軽さで処方されていますが、その作用機序には潜在的なリスクを含みます。2023年2月には欧州医薬品庁 (EMA) はラゲブリオに対して「治療現場における有用性が証明されていない」として販売承認の取り消しを勧告し、その後販売会社は承認を取り下げました。欧州ではその効果の低さからも販売自体されなくなり、使用されていません。事実上、他国で使われなくなった余剰ラゲブリオの処理場として日本が使われており、日本人が製薬会社の良い「カモ」になっている状況なのです。

ラゲブリオの作用機序とは変異率を上げる事によりウイルスを不活化する事です。つまりラゲブリオは「ウイルス変異剤」です。不活化し損なったウイルスは変異を蓄積しますが、ラゲブリオはまさに人体におけるウイルスの「人工進化」を促進させます。レプリコンワクチン接種者がラゲブリオを服用すると、レプリコンワクチンの変異率はさらに上昇するでしょう。


RNAウイルスの遺伝子組換え

さて、パソコンや車などに対して俗語として使われる「ニコイチ」の語源は「2個から1個を作る」事で 、同型機種のジャンク品が複数あってそれぞれ違う場所が壊れている際に、それらの部品を組み合わせて機械を再生する事です。

アルファウイルスはその変異率の高さのために、しばしば変異体が生まれますが、その際に変異した失敗ウイルスを自分でつなぎ合わせて「正しい」ウイルスを作り直そうとします。例えばウイルスの複製の際に、片側に1つ変異を持つウイルスゲノムと反対側に1つ変異を持つウイルスゲノムを組み合わせて正しいゲノムを再生するような現象も起こります。これはウイルスゲノムの組換えであり、まさに「ウイルスのニコイチ」です。

そしてその副産物として、失敗ウイルスの部品同士の組換え産物が生まれる事もあります。本来アルファウイルスは変異率自体が高いのですが、その変異率の高さを補うために組換え率も高いのです。こうした変化しやすい性質は機能獲得実験による人工進化に向いているのですが、逆に言うと遺伝子製剤の素材としては「最悪」であるとも言えるでしょう。 


レプリコンワクチンの機能獲得実験

進化における自然選択の本質は「増えやすいものは増えやすい」という単純な同語反復です。自然選択では変化していく中で増えやすいものが競争に勝ち残り、増えやすさがより強化されていきます。そのため、接種者の体内でレプリコンワクチンの増殖しやすさ、免疫から逃れやすさ、感染しやすさが増していく事が容易に想定されます。このように、レプリコンワクチンが人体内で進化するとバイオハザードによるアウトブレイクが起こりかねません。そして、一旦野に放たれて野生化してしまったウイルスはもはや人間には制御不可能なのです。

そもそもレプリコンワクチンはいわば「殻のないウイルス」です。そして、アルファウイルスのRNAゲノムは組換え率が高いため、RNA同士の間で組換えも起こります。そのためレプリコンワクチン接種者がRNAウイルスに感染するとレプリコンワクチンとウイルスの間で組換えが起こり、「殻」をもう一度手に入れるかもしれません。もしそうなると「完全体」の新ウイルスが誕生する恐れすらあります。

また、レプリコンワクチンはヒト細胞の遺伝子を取り込む可能性もあります。もともと癌遺伝子はレトロウイルスから発見されたのですが、レトロウイルスもRNAゲノムを持つウイルスです。癌遺伝子は細胞増殖に関わる遺伝子ですが、レトロウイルスは増えやすさを進化させる過程で、動物細胞から癌遺伝子を盗んで自分の増殖に利己的に利用し始めました。癌が遺伝子の病気だという事は、歴史的にレトロウイルスという癌ウイルスの研究から分かってきたものです。

自己拡散型ワクチン

図2
Eroding norms over release of self-spreading viruses. Lentzos et al. (Science 2022) より

自己拡散型ワクチン自体は新しいコンセプトではありません。すでに1980年代後半には、オーストラリアの研究者達により野生動物 (キツネ、ネズミ、ウサギ) を駆除する目的へのアプローチとして自己拡散型ワクチンが応用され始めました。この「ワクチン」とは人工的に改変された自己拡散型ウイルスです。さらにその10年後には、スペインの研究者達により、今度は在来種の野ウサギを保護するという真逆の目的で、自己拡散型人工ウイルスをワクチンとして用いるフィールドテストが行われました。これは、一匹一匹を捕まえてワクチンを打つ事などが難しい野生動物に対して、ワクチンを接種していない個体にも抗体を伝播させて接種した状態にする事を目的として行われた実験です。

この研究では、野生のウサギにワクチン (自己拡散型人工ウイルス) を接種し、目印としてマイクロチップを埋め込んで捕獲地点の近くに放ちました。その後回収されたウサギの中にはマイクロチップが無い、つまり未接種にも関わらずワクチンに対する抗体を持った個体が見つかりました。これはすなわち、その未接種のウサギが「ワクチンに感染した」事を意味します。このような自己拡散型ワクチンの野生動物に対する実験は、生態系に対する影響などへの懸念から今までは無人島のような隔離された土地で行われてきました。この場合の自己拡散型ワクチンは「ワクチン」という名目にはなっていますが 実際には「人工ウイルス」です。そして従来のワクチンでは接種した個体の体内で免疫が作られるのみですが、 自己拡散型ワクチン (ウイルス型ワクチン) の場合は未接種の個体にも伝播して広がっていくのです (図2)。「ウサギにワクチンを接種して野に放つと、周りの未接種個体にもワクチンに対する抗体ができました。」こうした現象がレプリコンワクチン接種によって人間でも起こる恐れがあるのです。

ウイルス進化と軍拡競争

進化の過程では環境により適した個体が生き残ります。そして生き物にとって最も関わりのある環境とは自分の周りの生物、とりわけ寄生体や感染源です。寄生生物と宿主の免疫系は軍拡競争の関係にあります。免疫系の遺伝子組換えも元々はウイルスやトランスポゾンの組換えの仕組みを盗んだものだという説もあります。

赤の女王仮説。「同じところにとどまるためには走り続けないといけない。」

レプリコンワクチンは自然の仕組みを生命工学で模倣したものです。実際、
現代科学をもっても人間が理解し利用できるのは自然現象のほんの一部なのです。人体はまだまだ未知な事だらけの宇宙のようなものであり、人間も自然の一部に過ぎません。たとえ人間が作ったものであってもその中に返せば、自然の仕組みに取り込まれます。また、人体は個人差も非常に大きいのです。増殖し変化するという性質を持つ「レプリコンワクチン」を放ち、野生化すると実際何が起きるか分かりません。そうなった時にはもはや人間にはコントロールしようがないのです。

前回の記事でも書きましたが、レプリコンワクチンは増殖のためのエンジンは搭載していますが、「ブレーキ」を搭載していません。増殖を抑制し、ストップさせるのはワクチンそのものではなく人体の持つ免疫系の働きです。しかし、免疫系とは本来非常に個人差が大きいものですので、実際に増殖抑制がどの程度かかるか、またかからないかも個人差が大きいでしょう。それどころか、例えばその増殖を止めるバリケードであるはずの免疫が正常に働かない状態にある免疫低下や免疫不全などの方においては、その体内で増殖を止める仕組みも作動しない恐れがあるのです。

また、基本的には接種者の免疫系はレプリコンワクチンの増殖を止めるようなバリケードを張ろうとするでしょうが、ではもしそれを突破するような「レプリコンワクチン変異株」が誕生するとどうなるでしょうか?そうなった時、免疫との競争に勝って生き残ったその人工レプリコンウイルスを人体からも社会からも駆逐する方法は現時点では存在しません。私はそういった事態が起きる事を強く危惧しています。

私は決してこうした事態がレプリコンワクチン接種者の全員で起こるなどという話をしているわけではありません。しかしながら、運悪く条件が揃い、誰かの体内で感染能、増殖能、あるいは毒性の高いレプリコンワクチン変異株が誕生してしまった場合、では人類は一体どうするのか? というリスク管理の話をしているのです。





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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


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