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単位のお話・・・イギリス・フランス5年間の赴任生活<第31話>

今回はちょっと専門的なお話になります。

身の回りの長さや重さの単位

私の従事している製造業では、工業製品の規格をそろえるために単位が重要です。これが設備の寸法・運転条件・生産量のすべて関わります。
長さ・・・ m(メートル)、km(キロメートル)
重さ・・・ g(グラム)、kg(キログラム)
容積・・・ L(リットル)
など。

日本でも皆さん馴染んでいると思いますが、これらは国際単位(SI)として決められているもの、およびそれから派生したものです。
物の長さや重さを表す単位は、文明発祥以降 各地域でその生活様式に合わせて独自に定められ使われてきましたが、ヨーロッパでは科学技術の進歩と物流の増加を受けて、統一しようという動きが起こり、約200年前にフランスでSI単位を考案したようです。
ヨーロッパ大陸の国々は、現在ではほとんどこのSI単位を使っています。おそらく隣国と陸地で国境を接しているためでしょう。隣町同士で単位が異なると不便ですからね。

イギリスでは...

一方、イギリスは事情がちょっと異なります。工業製品の製造業では、単位の統一が重要なのでSI単位を使っていますが、日常生活の中では、昔ながらヤード・ポンド法が残っています。
たとえば、
容積・・・パブで飲むビールのグラスの容積は1パイント(約568ml)という単位です。スーパーで売っている牛乳ボトルもこの単位で2パイントボトル、3パイントボトルです。
重さ・・・オンス(約28g)やポンド(454g)。スーパーの野菜・肉はこの単位で売っています。
長さ・・・フィート(約30cm)やマイル(約1.6km)です。私が通勤に使うバイパス道路の制限速度は時速60マイル(約 時速100km)

パブのグラスビール    スーパーの牛乳ボトル

イギリスはヨーロッパ大陸とは海を隔てた島国なので、独自性を保ちたいのでしょう。EUの一部だったときも、通貨にはユーロを導入せず従来ながらのポンドを使い続けていました。

日本では...

日本も昔は尺貫法でしたが、今はほとんどSI単位になっています。ただ、次のようなものは昔ながらの単位が使われていますね。
部屋の広さ・・・畳(四畳半とか)
家の敷地の広さ・・・ 坪(つぼ)
お酒などの量・・・ 合(ごう)や升(しょう)

アメリカでは...

アメリカは生活の中だけでなく工業も含めて完全にヤード・ポンド法が残っています。おまけに温度も摂氏(℃)ではなく華氏(°F)を使っているので、工場の日本人駐在員は大変です。
日本で設定した機械の寸法・運転条件・生産量をアメリカの工場へ展開する際には、一つ一つ換算しなければなりません。
私も時々、アメリカ工場と連絡を取ることがありますが、いちいち電卓で計算するのが面倒なので、私の机の上には簡易換算表を貼り付けています。

自動車のガソリン価格は 日本では1リットル当たり○○円という表示ですが、アメリカでは 1ガロン当たり◇◇ドル なので、高いのか安いのかピンときません。

先進国で今だにSI単位を取り入れていない国は、おそらくアメリカだけです。陸地で国境を接している国がカナダとメキシコの2国だけであり、3億人の人口を抱えて自国内だけでも十分経済を回していけるため、変える必要性がないのでしょう。

アメリカには数多くの日系企業が進出していますが、製造現場を管理している日本人駐在員の皆さんは苦労しているのではないかと想像します。

 

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