見出し画像

「日本の年金制度崩壊」はフェイクニュースだ!

サラリーマンのための投資戦略(25)】
このマガジンでは、サラリーマンが「信用資産=お金を借りる信用力」を活用して「年収の10倍以上の資産」を作るための方法を解説しています。

マガジンに記事をまとめています。➡【サラリーマンのための投資戦略】

今回は、サラリーマン投資家にとって、とても大事な「厚生年金」という資産について考えたいと思います。

1、日本の年金制度は崩壊しない。

最近、これから社会に出てゆこうとする世代に「日本の年金制度は将来崩壊するから年金には加入しない」というフェイクニュースが蔓延していて、かなり心配です。

結論から言えば、『日本の年金制度は、掛け金の半分を税金と企業が支払っているので、今二十歳の人が定年を迎えるころでも、現役世代の50%程度の年金は受け取れる』と考えて良く『年金崩壊はフェイクニュース』です。

その理由を説明したいと思います。

(1)「積立方式」と「賦課方式」の違い。

年金がもらえなくなると話している人の半分くらいは、何も知識がないのに、SNSで読んだことをリ・ツイートしているだけの「思考停止している人たち」です。

厚生年金に加入できていないうえに、国民年金も滞納していることが多いため、そうした現状を肯定化したくて「年金制度は崩壊するのでは?」という記事が出ると喜んで拡散します。まったくの思考停止です。

残りの半分の人たちは「年金に加入している人が減っているので、自分がまじめに保険料をはらっても、将来、払った掛け金より少ない年金しかもらえない」と思い込んでいる「誤解している人たち」です。

日本の年金制度が「積立方式」と呼ばれる「保険金の支払いを保険料で賄っている方式」だと思っているのです。

でも、これは大きな誤解です。

日本の年金制度は「賦課方式」といって、高齢者の年金支払いを、国民年金では国と世代が半分ずつ負担し、厚生年金では企業と就業員が半分ずつ負担しています。

国民年金の場合は、国はこの負担の一部を消費税でまかなっていますから、将来お金が足りなくなれば、消費税を10%から引き上げて必要なお金を確保します。

つまり、「国民年金の保険料を払っていない人」は、確かに毎月に保険料は支払っていませんが、それよりずっと多くのお金を「消費税」という形で納めているのです。

毎日の買い物で「消費税」を支払っているということは、誰かの年金のために税金を納めているということです。

それにもかかわらず、自身の国民年金の保険料を払っていないので、将来、保険金をもらえないということですから、冷静に考えてみれば、大損です。

”「年金崩壊」という根拠のないフェイクニュース”を、自分で検証もせず、真に受けていけません。

(2)「所得代替率」は50%くらいまで下がるかもしれません。

2019年8月に「財政検証」が行われました。「財政検証」は年金財政の健全性を5年に一度検証するものです。

その内容について、メディアは「将来、所得代替率が50%になる」と報道しました。

この「所得代替率」とは何でしょうか?

「所得代替率」とは、「年金を受け取る65歳における年金額」が「現役男子の平均手取り収入額(ボーナス込み)」と比べてどのくらいの金額になるのかという割合です。

所得代替率50%という場合は、現役世代の手取り収入の50%の額を、年金として受け取れるということになります。

2019年度の検証では、「現役男子の平均手取り収入額」が月額35.7万円、「モデル年金額」は月額22万円(国年6.5万円×夫婦+夫の厚年9万円)
でしたので、所得代替率は約62%(=22万円÷35.7万円)でした。

これに加えて、21年後のモデル世帯の所得代替率は7~10ポイント程度の低下が見込まれるという悲観的な試算結果があったので、「将来、所得代替率が50%くらいになってしまうのではないか」と報道されたのです。

では、この所得代替率は、将来、50%からさらに削減されてしまうのでしょうか?

これについては、2つのことが言えるでしょう。

1つ目は、悲観的なシナリオでは、所得代替率が減ってゆくシナリオとなるが、将来、「物価の上昇」や「賃金の上昇」が起これば、所得代替率が増加するシナリオもあるということです。

2つ目は、年金の保険料は国と企業が半分負担していますので、所得代替率が50%以下になるような事態が起これば、足りないお金は保険料負担を増やしてでも50%は維持するだろうということが予想されます。

ですので、

これから社会に出てゆく人たちが、将来年金を受け取るときには、現役世代の給与の60%はもらえないかもしれないが、50%くらいは維持される可能性が高いと考えられます。

(3)所得代替率50%では少ないのか?

人によって感じ方は違うと思いますが、現役世代のボーナス込み金額の半分くらいの年金がもらえれば、贅沢をしなければ、老後の生活は何とかなるだろうと思います。

2019年のモデルケースで所得代替率が50%だと、毎月18万円が支給されます。贅沢ができる金額ではありませんが、この水準の厚生年金をもらえるサラリーマンなら、貯金がある程度あって、住宅ローンがない状態なら、何とか生活して行けるのではないかと思います。

個人事業主やフリーターの場合、国民年金だけとなりますから、もともと所得代替率60%でも毎月13万円で苦しい感じですね。

所得代替率50%なら毎月11万円くらいになってしまうので、所得代替率がいずれの水準だったとしても、生涯現役ではたらくことを視野に入れる必要があります。

「不動産投資でサラリーマン卒業」を考えている人は、「毎月の給与手取額」と「不動産収入からのキャッシュフロー」を比べるだけでなく、厚生年金がなくなることを含めた損得計算が必要だと思います。

また、「年金崩壊」というフェイクニュースを真に受けて、保険料を滞納している人は、この国民年金すらもらえませんので、相当苦しい老後生活が待ち構えているといえます。

2、サラーリーマンにとって、厚生年金は最強の保険制度だ!

(1)保険料は会社が半分負担している。

厚生年金の保険料には、国民年金の保険料が含まれています。夫婦の場で、配偶者の所得が少ない場合には、「夫婦2人分の国民年金の保険料が含まれている」のです。

しかも、半分は会社が支払ってくれているのですから、私たち従業員の負担はかなり軽減されています。

先に見た2019年のモデルケースでは、国民年金だけでは毎月13万円、厚生年金を加えると22万円となりますので、年金額にかなりの差が生まれることがわかります。

(2)もしもの時には、配偶者に遺族厚生年金が出る。

もう一つ重要なことは、例えば、夫が厚生年金に加入していて、妻が30歳以上の専業主婦の場合、夫が死亡した際には妻に遺族年金が支払われるということです。

国民年金にも遺族年金がありますが、子供に対する年金なので、子供が18歳以上になってしまうと、それ以降は年金がもらえません。

2019年のモデルケースで、夫が退職して厚生年金をもらっていたときにしボイスるとどうなるでしょうか?

妻には、自分の国民年金6.5万円と夫の厚生年金の3分の2にあたる6万円が支払われますので、毎月12.5万円が生涯支払われることになります。

年金制度には、事故や病気で障害を負ってしまったときに補償もふくまれています。年金制度には、老後の備え以外にも、もしもの時の保険としての役割があることをきちんと理解しておくことが必要です。

もちろん、「年金崩壊」というフェイクニュースを信じて、保険料を払わなかった人には、このような補償もありません。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

山海弘