『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の俳句鑑賞
こんにちは!
アニメ俳句部部長の広瀬康です。
先日、アニメ俳句部で『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の俳句を募集したところ、計36句の俳句が集まりました。
みなさまが詠んでくださった句の中から広瀬が個人的にいいなと思った句をピックアップし、鑑賞文を書きました。
句のあとに作者名を敬称略で記させていただきます。
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狐火や鋏の音が近づいて 雨野理多
善逸の精神世界での出来事を詠んだ一句でしょうか。暗い闇の中で狐火が揺らめいています。だんだん鋏の音が近づいてくるという静かな恐怖。聴覚が研ぎ澄まされるような一句ですね。
汽車止まる腐草蛍となりにけり イサク
この句ではじめて「腐草蛍となる」という時候の季語を知りました。勉強になります。魘夢を倒し、止まった汽車。「汽車止まる」という映像のあとに、時候の季語ながらも映像も想起させる「腐草蛍となる」という季語を持ってきて、切字を使って響かせる技術。お見事です。
獣めく友の怪力花嵐 三尺玉子
「獣めく友」これは伊之助のことですね。獣のような友の怪力に対し、「花嵐」という桜の花を散らす力強い季語を取り合わせた一句。下五の「花嵐」で一気に詩的な世界が広がりました。
強さとは守りぬくこと花綾目 水蜜桃
煉獄さんや鬼殺隊を体現したかのような一句。季語は「花綾目」。最後まで人々を守り抜く覚悟の上五中七を受けて、煉獄さんたちが守り抜いた世界に「花綾目」が咲きます。
「全集中・常中」会得雪しまく たーとるQ
「全集中・常中」という鬼滅の技をうまく一句に仕上げていただきました。故郷の雪まじりの強風のなか、炭治郎は呼吸しています。蝶屋敷で会得した全集中の呼吸を常に行うという技術は、少年の成長と平和ではない日々を読者に思わせます。「雪しまく」という季語が現況の厳しさを物語っているかのようです。
煉獄の刀燃ゆるや波の花 鳥田政宗
煉獄さんの炎刀と季語「波の花」を取り合わせた一句。「刀燃ゆる」とは正反対の「波の花」という波の白い泡の塊を取り合わせているところが良いです。「燃ゆる」を切字「や」で強調することで、煉獄さんの技のすごさも表現できていると思います。
宿命を全うしあけぼのさやか 猫髭かほり
誰も死なせないという宿命を全うした煉獄さん。夜が明けたときの感慨を「さやか」という秋の季語に託しました。やり遂げたあとの清々しさと大気の清々しさが心地よく重なります。
天狼や君は夢まで澄みたるか ノセミコ
「天狼」はおおいぬ座の1等星「シリウス」のことを言うのですね。勉強になります。中七下五の措辞は、炭治郎の精神世界のことだと思いました。夢の中まで澄んでいるのかという感動と季語「天狼」の青白い輝きが響き合います。
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謝辞
みなさま、素敵なアニメ俳句をありがとうございました。
今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の俳句36句は一覧画像にしてアニメ俳句部のアカウントからツイートする予定です。でき次第、後日、ツイートします。
今後もアニメ俳句部はアニメと俳句をかけあわせたイベントを開いていきます。
【アニメ俳句部今後の予定】
1月6日~ 『ハウルの動く城』の俳句募集
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ではまた。
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