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「もうなにがなんだか意味がわからないのに超絶興奮する」#TENET テネット


高3の途中まで理系だった。

物理と化学が好きで、数学が苦手だった。

数学を決定的にもう無理だと思ったのは、高3で微分積分の難しいバージョンに突入したからだ。(Tangentの微分とか、指数関数の積分とか)

そもそも微分の概念は難しい。正確な定義なんて覚えていないけれど、「ある変化する値の、ある一点の変化率の、そのまた変化率の~」みたいな、「森から林からどんぐりへ」みたいな、「物事のある一点の極小を探る」みたいな(と書くと、推理小説みたいでちょっと面白そう)。

積分はその逆で、「塵も積もれば山となる」みたいな概念。



映画『テネット』を1回見ただけで理解できるのはクリストファー・ノーラン監督だけなので、なにも理解できない私は悪くない。

ちなみに私は1回しか見ていないけれど、さっきの微積分の授業を受けたあとみたいに、頭が沸騰していて、けっきょくなんの映画だったのか、まったくわからない。

でも、興奮した。


では、「なにが難しいの?」と、「けっきょく、なにが面白いの?」を簡単にまとめてみたい。よく晴れた日曜日の気持ちの良い朝なので。

(本当のネタバレはしませんのでご安心ください。そしてこの映画はきっと、ネタバレしても、実際に見てみないと意味がわからないと思います)



「未来からタイムマシンで過去に戻ったら、時間が逆再生になる」

ドラえもんのタイムマシンで過去に戻っても、のび太とドラえもんは普通だ。

普通だ、というのは、普通に歩けるし、普通にしゃべれるし、なんなら過去の自分達と会話できる。

『テネット』が難解なのは、ただ過去に戻るだけじゃなくて、戻った人たちの行動が「逆再生」になるからだ。

たぶん「逆再生」にならなければ、ただ単に戻るだけならば、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart4』になっていた。



「逆再生ってなんですか?」

時間が逆行する。

通常、時間は過去から未来へと流れている。
10:52の次は、10:53だ。

でも『テネット』の場合、タイムマシンで未来から来た人たちは、未来から過去に時間が流れていく

つまり、10:52の次は、「10:51」になる。

通常の世界にいる私達にとって、未来人の行動は、全部逆に見える。言葉で表現しようとするとえらい難しいけれど、動画を逆再生した状態がそれだ。


「割れた窓ガラスが復活して、銃を撃った犯人が現れる」

未来人の場合。

まず、窓ガラスが割れている。次に、窓ガラスに弾があたる。窓ガラスのヒビがなくなり、銃が発射される。そして、銃を発射した人物が現れて、消える。なんのこっちゃ?

まとめると下のようになる。

<A:通常の世界> 
銃で発射 → 弾が飛ぶ → 窓ガラスに当たる → 窓ガラスが割れる

<B:未来人の場合> 
※Aの逆
窓ガラスが割れている → 窓ガラスに弾が当たる → 弾が飛ぶ → 銃で発射する

このAとBのパターンが、同一世界で混在している。だから超絶難しくて、でも映像表現で見たら超絶面白い。

未来人、みんな後ろ向きに走ってるんだよ? 



「もうなにがなんだか意味がわからない」

原因と結果が逆なのだ。

まず「車がひっくり返っている」という結果がある。なんでだろう?と思ったら、車が起き上がる。そこに至るまでの流れが、どんどん種明かしされていく。逆再生で。

その逆再生が、順再生と同時に流れていくから、もうなにがなんだか分からなすぎて興奮する。

中盤の高速道路のシーンもやばいし(未来人の車はずっとバックで走行している)、

後半の未来人と現在人が一緒に戦ってるシーンも、なにがなんだかわからなすぎてやばい。


そしてこの映画の一番のポイントは、「けっきょくみんな何のために戦ってるのかよくわからない」ということだ。

映画の始まりも終わりも、意味不明なまま終了。女優さんがきれいなことだけ覚えている。(あとでネタバレ読んでやっと理解しました)



「クリストファー・ノーランは現代のゴダール」

見終わって、こんなにちんぷんかんぷんな映画は初めてぐらいで、ある意味、別の意味での現代のゴダールだよ。

今回の映画は、ノーラン監督が完全に趣味で作ったんだろうなと思ってしまった。

ふつうはプロデューサーとか偉い人が「これじゃあ、一般の人はついてこれないので、もっとわかりやすい脚本にしてください」って修正かけるんだろうけれど、もう完全に好き勝手に作りました、という内容で笑ってしまった

『インセプション』あたりまでが、まだわかりやすいけれど、『テネット』になったら一見さんお断りで、なにも知らずに見たら正直つらいと思う。

けっきょく『テネット』を日本語に訳したら『山本山』ということで。



「おまけ:4Dで見たらストーリーどころじゃなかった話」

初めて4Dを体験したんだけど、シートは動くし、銃が飛んできたら耳元で「プシュっ」て風が出るし、殴られたらシートの背中が「ボコっ」て動くし(ちょっとイラッとする)、爆発したらフラッシュが焚かれるし、火事になったら煙が出るし、敵がツバを吐いたら水しぶきがかかるし(汚えし)、もう臨場感ありすぎて映画のストーリーどころじゃなかった。

2Dで見てから4Dで見るのがいいかも。でも私はこれに懲りずに、けきょくまたノーラン作品を追っかけますよ。



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