【小説】 「悪いのは全部、君だと思ってた」
渋谷のスクランブル交差点で対峙した時、もはや僕に勝ち目はなかった。
Qフロントの真下に彼女がいる。僕は渋谷駅の前、スクランブル交差点を挟んで彼女の真正面に立っている。立ちつくしている、といった方が正しいかもしれない。僕には取れる選択肢が僅かしかない。手に汗をかいている余裕もなかった。
信号が青に変わる瞬間、待ち切れない大勢の人がいっせいに僕の左右から流れていく。
人の波が僕の視線を遮っても、彼女は消えない。そこにあり続けて、何十人、何百人の群れの中でも、じっと僕だけを見