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【書評?】52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち 町田そのこ著 中央公論新社

はじめに

これはあくまで書評? であり、書評ではないかもしれない。読書感想文として読んでいただけるとありがたい。ここに書いてあることは、あくまで個人の感想であり、それ以上でもそれ以下でもない。

あらすじ

52ヘルツのクジラとは――
他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。
たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。
そのため、世界で一番孤独だと言われている。

自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。
(帯より)

感想

この作品を読んでいる間、私はずっと苦しかった。読んでいるうちに、自分の身におきた嫌な記憶がどんどんフラッシュバックしてきて、途中で読むのをやめようとも思った。けれど、それでも最後まで読めたのは、最後に何か救いがあるはずだと思ったからだ。

とても切ない物語だった。けれど、光はちゃんとあってそこに救いはあったのだと思う。

私がもし主人公だったら、きっと耐えられないと思う。家族に搾取され、挙句お前が死ねば良かったと言われても、それでも母の愛を欲する姿はとても痛々しかった。そこから、アンさんに助けられ、新しい人生を踏み出していくまでも、苦しくてしんどくてそれでも、仲間が優しくて。

貴瑚は元の自分を取り戻し、そして主税と出会う。主税は会社の専務で貴瑚の8歳年上の男性だ。とても魅力的で、そして貴瑚を新しい世界へぐんぐん引っ張っていってくれる。そんな存在に出会ったら、私もきっと惹かれてしまうと思った。

けれど幸せは長続きしない。幸せが終わった主人公は一人大分で暮らすのだ。死んだように生きて、そしてムシと呼ばれている少年と出会った。二人の触れ合いは、温かくてでも不器用で、でもだからこそそこに嘘はなくて、切なかった。

52ヘルツのクジラのように、誰にも聞こえない声をあげている人々がたくさんいるのかもしれない。私はその声を聞くことが出来るだろうか。その声を聞くことが出来る人間でいたいと思う。

おわりに

この物語はとても切なかった。苦しかった。しんどかった。けれど、温かかった。私のように嫌な記憶がフラッシュバックする人もいるかもしれない。けれど、そういう人ほど読んでほしい。きちんと光はあるから。

今回は52ヘルツのクジラたちを書評?してみました。皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。

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