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【書評?】汚れた手をそこで拭かない

汚れた手をそこで拭かない 芦沢央著 文藝春秋

あらすじ

平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。元不倫相手を見返したい料理研究家…始まりは、ささやかな秘密。気付かぬうちにじわりじわりと魔の手はやってきて、見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。
(読書メーターより)

感想

直木賞候補作。好きな作家さんなので、書店に並び始めた頃から気になっていたものの、今の今まで未読だった作品。好きな作家さんの安心感たるや。スラスラと一気に読み終えてしまった。

個人的な感想を述べると、好みだったと言わざるを得ない。けれど、直木賞の選評通り短篇集としてのまとまりがないとも感じた。もちろんすべての短篇が独立して面白い短篇集ではあるだけれど、どうにもまとまりきれていない感を覚える。

一つ一つの作品はどれも秀逸で面白い作品なので、一読の価値はあると思うし、私は人におススメもするとは思うけれど、短篇集としてどうかと問われたらまとまりがないと答える。

私がこの作品で印象に残ったのは、最初の「ただ、運が悪かっただけ」と最後の「ミモザ」。他の作品も勿論面白かったけれど、この二つは私の中で特に秀逸だった。

「ただ、運が悪かっただけ」は余命いくばくもない妻が、夫の長年抱いてきた罪の話を聞く話で、最後にはタイトルにゾッとする作品。あんまり書くとネタバレになりかねないので最小限で。

「ミモザ」は元不倫相手と久々に会った料理研究家が、元不倫相手を見返してやりたいと思ってお金を貸したことがきっかけでどんどん沼にはまっていくお話。最後はやっぱり嫌ミスだなという展開でこれこれ、これを待っていたとなる。嫌ミス好きにはおススメ。

短篇集としてはまとまりがないと感じたものの、十分に楽しめる読書体験ができたので、個人的評価としては★4つけたいな。

終わりに

今回は芦沢央さんの汚れた手をそこで拭かないを書評?してみました。嫌ミスが大好物な私にとっては、大満足の一冊です。短篇集で読みやすいので、軽く読みたいなという時にもおススメかなと思います。


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