廣澤やすまさ
#6 あなたの会社の意識は、80年代のままじゃない?
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#6 あなたの会社の意識は、80年代のままじゃない?

廣澤やすまさ

最初に質問します。「企業はものを売るのが仕事だと思いますか?」この問いかけに、即答で「当たり前」と思った方々には特に、この先も読んでいただきたい。もちろん、「売るのが仕事」がまったくの不正解とは言えませんけど、それ以外にも考えなきゃいけないことがあるんで、ここは即答じゃなく、少しは悩むべきところです。ポイントは、ものを売るのは「手段であって目的ではないかも?」ということについてです。ドラッカーは『マネジメント 基本と原則』という本で、「企業とは何かと聞けば、ほとんどの人が営利組織と答える。経済学者もそう答える。だがこの答えはまちがっているだけでなく的はずれである。」「利益は個々の企業にとっても、社会にとっても必要である。しかしそれは企業や企業活動にとって、目的ではなく条件である。」さらに、「企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客を創造することである。」と書いています。

最近はドラッカーもちょっと忘れられがちというか、厳しい現実への対応で忙しい方々にはちょっと思想的すぎて、顧みる気がしない感じですかね。でも、これからの時代を考えるととても大事なことを言っていると思うんで、ここで「売る」ことについて改めて考え、それが「目的」になってしまうことの問題点を、ブランディングの観点から探っていきます。

メーカーを例にしますが、今や企業の技術力とか企画力はすごく高いので、出すものはどれも基本的に「良いもの」です。つまり「良いもの」はもはや当たり前で、それ以上の何かが無ければ売れてくれない。というわけで企業はいろいろ考えて、手を打って、その「良いもの」がもっと売れるように頑張っています。そして問題は、その内容です。

日本のけっこう多くの企業は、商品周りやお客様周りだけで買ってもらおうとしすぎ、なんです。もちろん、優れた商品力やお得なキャンペーンを知らせれば、魅力を感じてもらえ、売上げにも貢献するでしょう。でも、それはその時のその商品に限ってのこと。このごろの人々は、「自分や社会の価値観に合っているか?」という興味も持ちながら、その企業を見ているのです。その期待に応えていく作業がブランディングで、長くて熱心なブランドのファンになってもらい、周りにも良さを広げてもらうことにつながります。

便利なのでコトラーの区分を僕なりにちょっとだけアレンジして、時代の流れで説明します。

《マーケティング1.0(商品主導=1900〜60年代)》

 ものが足りなかったので商品が主導権を握っていて、出せば売れていた。

《マーケティング2.0(顧客主導=1970〜80年代)》

 商品はどんどん多くなってきて、しかも物価が上がって慎重になったりで、
人々は機能などを比べてから買うようになり、お客様が神様になった。

《マーケティング3.0(価値主導=1990〜00年代)》

 もはや人々はものをたくさん持っていて、商品そのものの魅力だけでなく、
それがもたらす満足に価値を見出すようになった。
そしてその満足には「社会性」への視点が欠かせなくなってきた。

マーケティング4.0(自己実現=2010〜20年代)

 自分らしさをさらに追求しつつ、先行き不安を抱えた不平等な世界への
不満から、人々は「ちゃんとしてる社会」への欲求をますます強めてきた。
そして人々は、ネットによって情報の獲得力ともに発信性を高めている。

つまりですね。ここで言いたいのは、商品周りやお客様周りのことだけで対応を考えるのは1980年代的ということです。マーケティングの専門家たちが言う「日本はマーケティング2.0で止まっている」状況なわけです。商品やお客様について考えることは今でももちろん大事ですが、さらに、社会や未来を大事に考えている姿勢を伝えたり、情報の発信源が自分たちだけでなく人々にあることを意識してビジネスの仕組みを組み立てなければ、2020年代に対応してるとは言えない時代なんです。

状況がいちばん分かりやすいのは、大手企業のテレビCMかもしれません。かなり多くの広告主は、CMを「商品を売る」ために流すものだと思っているように見えます。そりゃまあ大手ですし、お客様との接点はCMだけじゃないんで、「自分たちの思い」は商品そのものでとか、店頭でとか、アフターサービスでとか考えているのかもしれません。でも、ですね、CMなどのプロモーションは、「思い」を伝えるには最適な接点でしょう。これらの接点の特徴などについてはまたの機会に書きますが、企業が本気で自分たちの「思い」を伝える気があるのなら、企業広告としてのCMを作るか、それほどではなくても商品広告に「思い」の要素を加えて表現するでしょう。そういう「もの訴求」に「思い訴求」を組み合わせた表現が、これから重要になるわけです。

ネットの世界でも、情報発信は企業側ではなく消費者側にあることを強く意識し、まず感度の高いお客様に認めてもらい、良い評価を広げてもらうようにしなくてはいけません(念のため言っときますが、金を払ってインフルエンサーに良いことを書かせるステルスマーケティング的なやり方は、最悪ですからね)。

そして、人の役に立とうとか、社会性や未来に対する取り組みは、本気じゃなければ、人々の共感を得ることはできません。というわけで、80年代から一気にワープして2020年代に対応したブランディングをやるなら、「ものを売ろう」とする前に「考え方を売ろう」としないとね、という話でした。

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廣澤やすまさ
ブランドストラテジスト /クリエイティブディレクター /コピーライター ◆ https://yasumasa-hirosawa.com/