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石炭火力発電所数が増加・・・国民の意識を変えるためには

今日の日経新聞には、石炭火力発電所が廃炉数よりも新設数の方が多いという記事が出ていて、ショックを受けました。気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で示した、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えることを目標都している中において、それが進むどころか後退している状態だと思います。


1)石炭火力の状況

環境省の資料にちょうどまとめられているのですが、同じ発電量で、石炭は0.733~0.867kg、LNGは0.320~0.415kgの二酸化炭素(CO2)を排出する、ということが次の資料のP.36には書かれています。LNGの約2倍、CO2を排出するのですから、その分、地球に残された1.5度気温上昇を守るための可能なCO2排出量を食い潰す事になります。(CO2は空気中に残存しつつづけるため、1.5度気温上昇を守るためにあと人類が排出可能なCO2量も決まっています)

https://www.env.go.jp/press/files/jp/114277.pdf

CO2排出量で世界の3割を占める中国は電源の過半を石炭に依存しているようで、今夏は熱波によって北京の気温が6月として観測史上最高のセ氏41.1度に達するなど記録的な暑さで、冷房が欠かせなくなっている、とのことが書かれていました。
その脱炭素の足踏み状態は中国のみでなく、石炭需要は22年に世界2位のインドで8%増、インドネシアは36%増、さらには脱炭素の旗振り役だったドイツもウクライナ危機でロシアからのガス供給が滞って石炭火力の稼働を増加、フランスも再稼働に動いたようです。日本もあまり報道されていないのですが、火力発電は電源の30%前後を占める状態が続いています。その結果ですが、世界全体も23年に過去最高を更新する見込み、という状態になっているようです。
(このようなニュースこそ、もっと国民に知らせて行っても良いのではと思うのですが、ニュースにはなっていないように見えます)

特に国連の政府間パネルのIPCCが述べている以下の内容、これは国民一人一人、さらには世界の人々に伝わっているのだろうか。残りの排出可能なCO2の量が決まっているということ、それを超えるともはや誰にもどうなるのかが読めないということを。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は3月の報告書で、1.5度目標の達成に許容できる温暖化ガス排出量は残り4000億トンとの試算を改めて示した。現状の年400億トンの排出ペースが続くと10年ほどで限界に達する。国連のグテレス事務総長は「気候の時限爆弾が針を進めている」と危機感をあらわにした。

2023年8月20日 日経新聞朝刊より

世界の再生可能エネルギー発電量は00年から22年にかけて3倍、直近10年だけでも1.8倍に拡大した、という状況ですが、GDPという経済成長を軸にした世界において、経済成長を目指せば再生エネだけでは支えきれず、結果として、世界全体で石炭による発電量も10年で15%増え、ほぼ右肩上がりが続くという状態を生み出しています。

2)世界の一人一人の意識を変えるための指標値とは

先日にあるテレビを見ていて、GDP(国内総生産)という物質主義的な側面での「豊かさ」だけを求めるような指標でいくのか、ブータンが目指すようなGHP(国民総幸福量)を目指すべきなのか、という議論をしていました。とはいえ、ブータンでも若者が豊かさを求めて、国外に出て行くということをニュースでやっていました。結果、その番組ではどちらが正解という点までは言及していませんでした。

私自身はきっとどちらも正解と思いながらも、ちょうどその話をしていた日に100円均一の店に、本当に久しぶりに行ったのですが、その店にはほとんど全てがプラスチック製品で、ふとそのGDP/GHPの議論について感じたことがあります。今の化石燃料をベースにした製品というのは、地球へのCO2など温室効果ガスを排出するコストが乗っかっていないために、実際には安く見え、結果としてここで生み出された付加価値(100円均一ショップの利益)として生み出され、GDPを増やすという貢献になっているのだと思います。

つまり本来、このプラスチック製品を生み出すために排出されたCO2を除去するべき費用がさらにそのコストには入るべきが、入っていない、さらにはCO2排出によって国民が受ける不満などのスコアが入っていないために、この製品は100円で提供できるのだと。しかし、そのような排出されたCO2を排除するという要素までを考慮すると、本来その企業がそのコストを賄ったとするのであれば、後に残るGDPのようなもの(地球国民への負担考慮後GDP?)が、どうなのか、でみるべきなのではないかな、と思ってしまいました。100円で提供していますが、−10円くらいの地球負担があるのかもしれません。そうすれば本来の付加価値はもっと減ってしまいます。(実際に計算した訳ではないのです)

このような補正されたGDPができれば、もっと温室効果ガスを減らす、という事に対して国としても取り組めるようになるのではないでしょうか。そこに国民の幸せというGHPの考えを入れれば、経済、地球、そして国民幸福という3方を目指す指標ができないのものでしょうか。もはや指標を変えないと、人類の行動は変容しないのではないか、そんなふうにも思えます。

3)国、ではなくて国民の行動変容を起こす

ちょうど私は今、イノベーション・スキルセットという本を読んでいました。この本においては、ビジネス(B)とテクノロジー(T)、そしてクリエイティブ(C)を融合したBTC型人材について書かれています。
今、環境問題を考えた時に、CO2削減のための再生可能エネルギーなどのテクノロジー要素が非常に強いと感じています。そしてビジネス、という視点でもそれをどう収益構造に持っていくかという点、そこにフォーカスされている気がします。
しかし今の日本、身近では家族のゴミの分別問題などを話しても、その切迫感というのは全く伝わってきません。つまりいくら国連が、1.5度の気温上昇で許されたCO2排出量はあと何tと言っても、全くイメージすらついていません。
なんとなくそのイメージを伝える、コミュニケーションツールがクリエイティブ(C)であり、これが環境問題解決のキーにもなってくるのではないか、そんな気がしてなりませんでした。
つまり、先ほど述べたような商品を買った時点で、POSでは地球への環境負荷が数字化され(テクノロジーの世界)、そのインパクトがデザインを通じて利用者に伝わり(クリエイティブの世界)、そしてその行動変容の先の新たなビジネス(例 :植林する、マングローブを植えるなどで地球負荷軽減のお金を払う)などのことができないものだろうか。

4)最後に

石炭火力発電所が増えているのは、各国の責任ではありますが、人類一人一人が考える仕組みを、わかりやすくコミュニケーションする仕組みが、実は大変重要なのではないか、そんな風に思いました。

そんな時、実はデザイン、クリエイティブが環境ビジネスにうまく入っていく必要があるのではないか、そんな気がしてやみません。


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