Netflixのドラマ「脱走兵追跡官」と韓国軍について
Netflixで「DP 脱走兵追跡官」というシリーズがあった。
たしか2021年ごろにシーズン1が、今年に入ってシーズン2が放映されていて、コメディーみたいな軽い乗りもあるけど韓国軍の実態について分かるショッキングなドラマという印象だった。また、実際に兵士が起こした銃乱射事件を基にしているようである。
周知のように、韓国の男性には兵役の義務がある。調べると、18ヶ月から22ヶ月くらいの期間らしい。(一方、女性にはなんの義務も課されないことが不思議なのですが?)
問題なのは、軍内部の体質が最悪ということだ。上の人間が下の人間をしばき上げる、それを露骨に暴力的にやる。みていてここまで酷いのかと、暗澹たる気分になってきた。
おれは陸自にいたことがあるけど、自衛隊でさえここまで酷くはなかっただろう(それも部隊によるかも知れないけど)。
入隊した新兵のなかには、軍隊の兵営生活に嫌気が差し脱走する者が出てくる。なかには、ドラマにも描かれる通り武器を持って脱走し(武装脱営)、その後大きな問題に発展していくこともあるようである。
そんな脱走兵を追いかけ、捕まえていくうちに、脱走兵追跡官たちの胸中にも複雑な思いが交錯するようになる。彼ら自身も同じ兵営内で生活し、先輩兵士から理不尽な仕打ちを受けてきたので、脱走する側の気持ちがよくわかる。だから、そうした軍内部の陰湿・陰険な体質を変えていきたいと内心では思っている。
一方、軍上層部は臭いものにふたをするかのように、都合の悪い真実は掩蔽したいと考えている。こうして、現場の追跡官たちと軍上層部との間に確執が生まれることになる。
このドラマをきちんと理解するには、軍隊の階級について知っておく必要がある。というか、軍隊の階級は世界中どこでも大きな違いはないので、国際常識として知っておくべきでしょう。
いちばん最下位には兵卒がいる。韓国軍には、二等兵〜兵長までがあるようである。この階級群では、駐屯地内の営内班で寝起きをし、上官から命じられたことを行う。劇中の登場人物たちはこの階級群に属する。自衛隊では陸士とよばれる。
その上には、兵卒を束ねる下士官がいる。いわゆる軍曹。韓国軍では副士官とよばれるようで、劇中のパク中士がこれに当たる。自衛隊では陸曹とよばれる。
さらに上には、部隊を管理運営する士官がいる。尉官、佐官、将官に大別され、さらに細かく階級が分かれている。劇中では、補佐官の大尉がこの階級群に属する。自衛隊では幹部とよばれる。
韓国の男性の多くが兵役を経験していることを踏まえると、軍隊の人間関係は韓国社会の縮図と考えることもできる。他の韓国ドラマを見ていても感じることだが、上下関係が異様に厳しいのが気になる。日本の社会も上下関係にうるさい社会といえるが、韓国はその上を行く窮屈さである。
しかも韓国の場合、戦前まで日本の植民地支配の影響をうけており、旧日本軍の体質を引きずってるらしいのだ。“憲兵”という用語もそこから来ているのだろう。
この国は、徴兵制とKポップとオンラインゲームとが入り混じった奇妙な国、という感じである。ドラマでは、生真面目なアン・ジュノ一等兵と脳天気なハン・ホヨル兵長のコンビが絶妙でよかったように思いました。