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100年以上続く広尾湯で、三代目として日々、人間ドラマを見届け続ける親父さんの思いに迫る(後編) 【広尾商店街】


前回の記事「新卒さんのお悩みを"広尾湯"さんで湯船に浸かりながらきいてみた(前編)」、界隈でとてもご好評いただいておりまして、みなさまありがとうございます。

>>前編をまだお読みでない方はこちらから



後編は、100年以上続く広尾湯で、三代目として日々、人間ドラマを見届け続ける親父さんの思いに迫ります。

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親父さん(文夫さん)
なんだか恥ずかしいなあ、俺ストレートだからさ、まずいこと言ってたら書かないでおくれよ。

太田
もう優しいお人柄がにじみ出ておられますね^^
わかりました、どうぞお気になさらずお話いただけると嬉しいです。さて、さっそくですが広尾湯さんはもう100年以上の歴史があり、親父さんが三代目を継がれてから早半世紀ですね。

ことちゃん

辞めたいって思われたことはないんですか?

親父さん
ないね。でもさ、自宅にお風呂はもちろんみなさんあるじゃないですか。だから、本当に必要なのかなって、最近思うんだよね。

太田
でも無くさないっていうのはどういうお気持ちからなんですか。

親父さん
ちょっと語弊なく伝えたいんだけど、サウナとかいろいろ揃ってるいわゆるスーパー銭湯とさ、俺んちみたいな湯屋とでは役割が違うと思うんだよね。

うちはお年寄りが多いんだけど、いろんな人が来てくれるんだよ。
大学で研究してる人も、
若い兄ちゃんも
植木屋さんも。

みんな自然と仲良くなって。
みんな裸だから、肩書がなくなって。


楽しそうに背中流し合ったり風呂から上がって、この休憩所場で、昼めし食いに行くかとか言って仲良くなっちゃうでしょ。

そういうの見てるとほんとに楽しい。

ちょこんっ (44)





うちの裏にも爺さんがいて、「孫が生まれましたとか。」連れてきて、また一緒に入っていってくれるんだよね。これは長くやってるからこそなんだよね。

あとはおうちで介護したりしてる人もいるでしょ。その方が来ては、「お母さん入りたいって言ってます、しょっちゅう」って。やっぱり年を取っても入りたい人、いるじゃない。俺もそうだもん。

なんとも言えないよな。


太田

私も銭湯すごく好きで、1年前くらいに引っ越しをしたんですけど、「銭湯」の近くでおうちを探しました。落ち着いたころにご挨拶の意味合いもかねて銭湯へ行くんですが、そうすると大体お年寄りが多いじゃないですか。もちろんいきなり話しかけたりはしませんが、あ、この人がこの地域のドンかなとか。いろいろわかったりして楽しいんですよね。

親父さん
それはさ、とっても素敵なことで、俺もすげえ嬉しいんだけど、ちょっと嫌なお客さんていない?

ちょこんっ (45)


ことちゃん
あはは、確かにマイルールが強めな人とかいますよね。

親父さん
うちは、うちの暖簾をくぐってくれた人はみんな同じだって思ってるんだけど、マナーとかさ、こだわりが強い人っているじゃない。せっかくお母さんと子供が来てくれたのにいろいろ言われてるのが番台まで聞こえてくることがあるわけよ。お父さんもそれが聞こえながらこの休憩所で待ってるわけ。ほんとにね、申し訳ないっていうのと。僕自身も嫌な気持ちで聞いてる。

ことちゃん
でも、そういう風な視点で、親父さんが思ってくださってるっていうのがお客さん側としては本当にうれしいですよ。


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親父さん
お年寄りはさ、話したいんだよ。お店に行って、「これください」って話して終わりとかあるんだよ。俺んちの湯屋で一日の終わりにさ、誰かと話したいんだよ。

大多数が気持ちのいい人ばっかりだけど、そうじゃない場面に出くわすとさ、謝りたいし。こんなことばっかりじゃないから、また来てねって言いたいし。

これっきゃねえとか、そんな覚悟じゃなくてさ、今日は楽しい一日だったって、いい一日だったって毎日を続けていくだけ、すっごく単純なんだけどさ。


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親父さん
でもチカちゃん、休みがないってのはやだよな

チカちゃんさん(息子さんの奥様)
そうですね爆笑。
お父さんのファン、多いんですよ。若いお兄さんとか。すごいんです。「今日は親父さん、いないの」ってよく聞かれます。それを込みで来てくれる人多いですよね。

みんなのお父さん、お母さんの役割なんでしょうね。


親父さん

ここに行けばまだあるって感じになるじゃない。
商店街もすごく変わってるし。
俺、「湯屋」ってことばが好きなんだよね。

太田
なぜ「湯屋」ってことばが好きなんですか。

親父さん
昔はさ、「珈琲屋のお兄ちゃん」とか「八百屋のお母さん」とそういう言われ方をしてきたわけ。自分で「お湯屋」っていうのはちょっと変だから「湯屋」。俺んちは「湯屋」で俺は「湯屋のおやじ」なんだよね。

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さあ、あっという間にお時間が。
広尾湯さんは100年以上の歴史があり、どんな広尾商店街の変化も毎日の繰り返しの中でじっと見続けてこられました。よく「湯屋」を社交場だと表現することがありますが、その交わり合いを、こんなにピュアに見届け続ける人がいる。それこそが宝物であると感じました。

一日の終わりに「今日もいい日だったと」
終えられる"節"の役割。
それを毎日ただ単調に担い続ける。
それが広尾湯さんなのだと。

本当に気持ちのいいお風呂、ご馳走様でした。


広尾湯
■ 営業時間
15:00~24:00
※当面の間は23:00まで。
■ 定休日
水曜
■ アクセス
東京都渋谷区広尾5丁目4−16
※広尾駅から徒歩1分程度です。
■ HP:https://hirooyu.com/


最後の最後に
広尾湯さんを、勝手に私が大好きな音楽で例えるとこの一曲。Mockyで「Surprise You With A Smile」



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「うちも紹介したいことがある!」「紹介したいことはないけど太田の素顔をみてみたい!」といった思いをお持ちの広尾商店街振興組合加盟店の皆様、ぜひご連絡ください。内容をお伺いさせていただいた上で取材し、こちらのコラムにて掲載させていただきます。

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広尾商店街振興組合 おおたのコラム係
✉ pichipichifish@air.ocn.ne.jp

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次回は2週間後の更新予定です。
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