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陰謀論にはまる人

今日のおすすめの一冊は、米重克洋(よねしげかつひろ)氏の『シン・情報戦略』(KADOKAWA)です。その中から「デジタルカルト」という題でブログを書きました。

本書の中に「陰謀論にはまる人」という興味深い文章がありました。

陰謀論にはまってしまった人は、自分の意思で望んで、自分の意見をより強化してしまうということだ。

ある陰謀論に興味を惹かれた人は、そこに潜む「真実」を解き明かすため、更に情報を集めようとする。陰謀論を発信する情報源を自分で好んで選んでいるのだ。そして、それをたしなめる人の意見は、「騙されている」か「無知で残念な人」の苦言であり、自分こそが他の人が知らない「真実」を知っている、という確信をより深める。 

これを裏付ける学説もある。陰謀論を研究している、イギリスのケント大学のカレン・ダグラス教授によれば、人が陰謀論にはまってしまうのは、以下の3つの心理的動機が満たされていない時だという。

 1つ目は、政治的・社会的な出来事の意味を理解するうえで、情報に不完全さや曖昧さを感じた時の知識的な欲求による動機である。例えばアメリカのドナルド・トランプ前大統領の選挙での敗北、あるいは新型コロナウイルスをめぐる話題や、ロシアのウクライナ侵攻のような出来事について、その背景や関連情報に疑問を持ち、もっと知りたいと思う。 そこで陰謀論に出合ってしまう。

2つ目に、自らの存在を脅かされるような不安や不確実性を排除したいという動機である。あらゆる種類のワクチンに忌避感、不信感を持ってきた人が、新型コロナウイルスのワクチンに対しても同様に忌避感を持つだけでなく、ワクチン接種後に死亡した人の個別のケースを取り上げて「国民へのワクチン接種は人口削減計画に基づいて行われている」など、荒唐無稽な陰謀論に飛びついてしまう。そして、一人納得してしまい、ワクチンを打たないという決意に至る。そんな例も、この2つ目の動機にリンクしていそうだ。

3つ目に、他人が知らないことを知っているといった自尊心につながる、社会的欲求による動機である。メディアで報じられない「真実」を知っている、という思い込みが、自らの自尊心につながり、より思い込みを強化してしまうのだろう。

こうした条件を満たすことで陰謀論にはまるリスクが高まるためか、ある陰謀論にはまっている人は他の陰謀論にも関心を持ちやすいようだ。

東京大学の鳥海不二夫教授の分析によれば、Twitter上で「ウクライナ政府はネオナチ」であるという陰謀論を主張しているアカウントは、アメリカの陰謀論集団「Qアノン」に関連する投稿や、反ワクチ ン関連の投稿を多く拡散していたという。

 新型コロナウイルスや戦争といったキーワードが飛び交う、先行き不透明感の強い時代には、多くの人々が不安や不確実性へのストレスを感じる。 陰謀論は、その「意外性」と「単純さ」という特徴を持って、その不安や不確実性に「答え」を出してしまう。

マスコミや一般的な報道機関では報じられていないことをさも「真実」のように語り、そのうえで、その背景を極めて単純に説明する。例えば「闇の権力者が世界の全てを差配している」とか「ワクチンを接種し始めてから超過死亡が発生しているのは、ワクチンに多くの人を死に至らしめるものが入っているからだ」といった具合である。 

こうした陰謀論の流布が社会にいかに悪影響をもたらすかは、その血塗られた歴史が証明している。

エコーチャンバーという言葉がある。エコーチェンバーとは、SNSなどで、自分と似た考え方や発言している人をフォローし、同じような意見を発信すると、自分と似た意見がかえってくるという状況をいう。閉じた部屋で音が反響する物理現象にたとえたもの。

まさに、陰謀論にはまる人も、このエコーチェンバーに毒されている。SNSにおいては、ファクトチェックをして、常に「価値ある情報」「確かな情報」を手に入れることができる人でありたい。

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