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本業喪失の危機に備える

今日のおすすめの一冊は、山本康正氏の『シリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタリスト)は何を見ているのか』(東洋経済新報社)です。その中から「本業がずっと同じだなんて、ありえない」という題でブログを書きました。
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ブログの題が「本業がずっと同じだなんて、ありえない」なのに、スペースの関係で触れることができなかったので、こちらでシェアしてみます。

そもそも、会社の本業は変わる可能性が大いにある、ということに気づいておく必要があります。本業がずっと同じだなんて、ありえない。むしろ、本業は変わっていかないといけないのです。例えば、時価総額で世界一を争うアップルは、もともとパソコンを作っている会社でした。社名も、アップルコンピュータでした。ところが、社名からコンピュータを取り、アップルになりました。2007年のことです。
まさにiPhoneが出た年でした。ここから、利益の9割がiPhoneから生まれるような会社になっていった。単なるパソコンを作っている会社ではなくなっていったわけです。同じようなものを世界中の会社が真似て作ってくることもわかっていた。そこで、2019年からは、自分たちはサービスカンパニーになる、と言い出し始めました。
ゲームのサービス、アップルアーケードを出す。映像コンテンツを作るアップルTVプラスもスタートさせる。私が驚いたのは、アップルの記者発表で、もはやハードウェアを大々的に発表しなくなったことです。パソコンやiPhoneがこんなふうになります、ということを、なんともさらっと後から伝えた。これは、もはやハードウェアは単なる箱であって、自分たちはサービスカンパニーになるのだ、という彼らの強烈な意思表明だったのだと思います。
あの時価総額世界一であり優れた製品で知られるアップルでさえ、本業を変えてきたし、変えようとしているのです。およそ10年周期で、変えてきている。だからこそ投資家から評価されているのだともいえます。きちんと未来を見ているということです。株価が示しているのは、未来への評価です。それが出ているのが、まさに時価総額、なのです。今の会計だけではないのです。
グーグルも、もともとインターネット検索サービスを提供している会社でしたが、目指す方向は、「情報を整理して使えるかたちにする」というわかりやすさで、今では人工知能、クラウド、地図、モバイルなど、さまざまなサービスを提供する会社になっています。創業約20年で約100兆円の時価総額(日本最大であるトヨタの約4倍)になり、将来的には今開発中の自動運転やヘルスケアの事業が成長の中心になっていてもおかしくはありません。
アメリカでも、本業を変えられない会社は苦戦しています。HPしかり、デルしかり、スマートフォンの時代、アジア企業が勃興する時代にパソコンを作り続けていても、なかなかうまくいかないのです。

会社の規模が大きくなればなるほど、方向を変えることが難しいと言うのが通説のようになっていますが、いわば世界一の規模のアップルやグーグルでさえ大きく方向転換をしているという事実には驚きしかありません。ここ何十年という日本の大企業や政府組織の頑固なまでの硬直振りが、失われた30年を産んだということがはからずも証明されてしまったということです。

これは、大企業だけでなく、中小企業にも同様のことが言えます。規模が小さく、人数も少ないから方向転換は大企業より有利なはずですが、実際はそうではありません。むしろ、かえって硬直している度合いが強いのかもしれません。まさに、パラダイムシフトが起こっている今、本業があとかたもなく無くなってしまうという「本業喪失」の危機は大小関わらず、どの企業にも押し寄せてくる、まった無しの大問題です。

本業喪失の危機に備えることが今、我々に課せらた喫緊(きっきん)の課題ではないでしょうか。

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