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私、マヌケだったんです

今日のおすすめの一冊は、萩本欽一氏の『萩本欽一 マヌケのすすめ』(ダイヤモンド社)です。同書の中から、「マヌケは運がたまる」という題でブログを書きました。

本書の中に「私、マヌケだったんです」という心に響く文章がありました。

芸能界に限らず、いろんなところでいろんなマヌケに会ったなあ。 5、6年前に何かの番組でスペインに行ったとき、コーディネーターをしてくれた日本人男性は、なかなかのマヌケだった。 

当時、30歳ぐらいかな。 不動産の仕事で大成功してて、日本人がスペインに住むときはみんなその人に頼む感じなんだけど、でも間違いなくマヌケ。 

「なんでスペインに来たの?」って聞いたら、いきなり「私、マヌケだったんですよ」って。 誰も知らないような大学に行って、何をやってもマヌケで、卒業してこのまま日本の社会で働いても勝てない自信があったから、とりあえず外国に行こうと決めた。 

でも、アメリカは強そうだし、イギリスやフランスも手ごわそうだ。いろいろ考えて、ス ペインってあんまり聞いたことないな、闘牛ぐらいしか知らないな、ノンキそうだから何とかなるかなって思って、いきなり来ちゃった。 

でも、スペインで何がやりたいっていうのはなくて、もちろんスペイン語なんて話せない。 街を歩いてたら日本語の看板を出しているレストランがあって、ここならご飯食べられると思って入ってみた。 日本人は珍しいから、お店の人が「なんで来たの?」とか聞いてくれて、 でも「いやあ、なんかいいことあるかなと思って」とかしか言わない。 

外国に行く人って、たいてい目標が明確なんですよ。 でも彼はそういうのはまるでないから、お店の人にずいぶん心配されたらしい。 ちょくちょく店に行ってたら、そのうち八百屋さんで野菜買ってきてなんて頼まれるようになった。 そういうことを気軽に頼みやすいのも、 何を頼まれても自然に引き受けるのも、マヌケのいいとこだよね。 

あるとき、そのレストランが新しい店を出したいからいい物件を探してくれって頼まれて、それをきっかけにほかの日本人にも家探しを頼まれるようになって、だんだんスペインの不動産に詳しくなってきた。 そのうち、自分が住むために小さな家を1000万円とかで買ったら、スペインにバブルが起きて10倍になっちゃった。 

売ったり買ったりしているうちに資産がどんどん増えて、いつの間にか不動産の世界で大成功。 「俺、何にもしてないのに」なんて言ってるけど、元をただすとマヌケな理由でスペインを選んで、何となくマヌケに過ごしていたから。 

しっかり調べて「これからスペインは 有望だ!」なんて張り切って行ってたら、そうはいかなかったよね。 

◆まさにクランボルツ教授の唱える「キャリアの8割は偶然の出来事で決まる」、という理論通りの実例だ。自分が立てた夢や計画ではなく、目の前にやってきた「偶然」をチャンスとして生かしていく生き方だ。

夢や目標に向かって血みどろの努力を重ねていくという人生もあるが、逆に目標や夢を達成するためでなく、ただひたすら、目の前に来た「頼まれごと」を淡々とやっていく人生もある。 

小林正観さんはこう言っている。 「宇宙の仕組みは、どうも裏返し構造、二重構造になっているみたいだということがわかってきました。 何か意気込んでやろうとしている人ほど、どうも宇宙が味方しないようです。 反対に、執着がない人ほど、宇宙が味方をしたくなるようなのです」(『日々の暮らしを楽にする』Gakken) 

「力を思いっきり入れて頑張るぞ」というより、「力を抜いて淡々と楽しんでやっていく」という人生。 水の中で、浮かぼう浮かぼうと力を入れると、沈んでしまうようなことと同じ。 

ときには、ボーっとすること、力を抜くこと、角張(かどば)っていないこと、鈍(どん)なこと、イライラしないこと。 長い人生、人から愛を込めて… 「マヌケだなぁ」と呼ばれるくらいの人には限りない魅力がある。

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