さんまさんの「努力論」
今日のおすすめの一冊は、中野信子氏の『努力不要論』(フォレスト出版)です。その中から「人の能力を見抜く才能」という題でブログを書きました。
本書の中に『さんまさんの「努力論」』という心に響く文章がありました。
私は、脳のことをすこしばかり研究したり勉強したりしてくる中で、努力と言うものの本質が持つ、心理的な罠(わな)について気づくことができました。 また、人が持っている能力は、生まれつき持っている才能でどれくらい決まるのか、努力でどれほど変えることができるのかについて、一定の知識を得てきました。
こうした知識を持って、世の中を見てみると、じつに無意味な努力を重ねさせられ、そのうえに搾取されてしまっている人が多いことがわかるのです。 本当は、声を上げるべきなのに、すべて自分のせいにしてしまう。
それを美しいという人もいるでしょう。 声を上げないのは日本人の美徳だという人もいます。 でも、本人は苦しい。 見栄を張るためとか、周りの人に自分の存在意義を認めてもらうだとか、自分で自分に言い訳するための努力はもうやめにしませんか。 こんなことを続けていれば、いつまで経ってもあなたの人生は、あなたから搾取したい誰か他人の思惑に左右されてしまいます。
先日、「ホンマでっか!?TV」でお世話になっている明石家さんまさんが、「努力は報われると思う人はダメですね」とおっしゃったということが話題になりました。 私は、さんまさんの意見に全面的に賛成です。
もちろん、さんまさんが努力されていない、ということではありません。 収録のときにはいつも感じるのですが、さんまさんは本当にプロ意識の高い方なのです。 たとえば、専門家たちがこれまでにコメントした学術的な内容はほとんど記憶されていますし、他局の番組での内容を、「ホンマでっか!?TV」の内容と混同されることも一切ありません。
そして、さんまさんが次々と繰り出す言葉が笑いの渦を起こすときは、まるでレベルの高いサッカー選手が、小気味よくシュートを決める瞬間を見るかのようです。 さんまさんが持っているこうした力を、努力の賜物と呼ぶか、才能と呼ぶべきなのか? 少なくとも、さんまさんご自身はこのお仕事をとても楽しんでいらして、そのための努力を苦痛とは感じないのでしょう。
見返りを期待して、楽しくもないのに苦痛を伴う努力を重ね、恨みをため込むくらいなら、やめたほうがいい…。 そんなさんまさんのアドバイスは、努力というものの本質をついています。
話題となった、努力についての記事を、一部引用してみましょう。 さんまさんの発言があったのは、2014年6月7日放送の「MBSヤングタウン土曜日」(MBSラジオ)でのことだ。 有名人の「名言」や「珍言」をリスナーがメールで紹介する「名言珍言ゆとっtter」というコーナーで、この日ゲストだったアイドルグループ「アップアップガールズ」の佐藤綾乃さんがインタビューで言っていたという、こんな話が紹介された。
「努力は必ず報われる。その言葉、最初は信じなかったんですよ。そんなこと言っても、本当に努力を見てくれてるのかよって。でも、自分の経験上、努力をしていれば必ず誰かが見てくれていて、報われることがわかりました」 これに対しさんまさんは、「それは早くやめた方がぇぇね、この考え方は」とバッサリ。
佐藤さんやレギュラーメンバーのモーニング娘。 道重さゆみさんが驚いていると、「努力は報われると思う人はダメですね。努力を努力だと思っている人は大体間違い」と持論を展開した。
「好きだからやってるだけよ、で終わっといたほうがぇぇね。 これが報われるんだと思うと良くない。 こんだけ努力しているんい何でってなると腹が立つやろ。 人は見返り求めるとろくなことないからね。 見返りなしでできる人が一番素敵な人やね」
本田静六氏は「成功するために必要なシンプルな話をしよう(知的生き方文庫)」の中で、こんなことを語っています。
『人生の最大幸福はその職業の道楽化にある。 富も名誉も美衣美食も、職業道楽の愉快さには遠く及ばない。 職業の道楽化とは、学者のいう職業の芸術化、趣味化、遊戯化、スポーツ化もしくは享楽(きょうらく)化、であって、私はこれを手っ取り早く道楽化と称する。 名人と仰がれる画家、彫刻家、音楽家、作家などが、その職業を苦労としないで、楽しみに道楽としてやっているのと同様に、すべての人がおのおのその職業を、その仕事を道楽にするということである。』
本田静六氏(1952年没)は、日本のバフェットとも呼ばれる投資家でありながら、東大の教授であり、日本最初の林学博士でした。 貧しい家の出身ではありましたが、苦学して資産を築き、60歳で退官するときに、匿名で当時の金で100億円以上を寄付したと言われています。
職業を道楽化している人は、自分が努力をしているとは思いません。 苦労も、努力もしないで、楽しみや道楽として仕事をする。 そういう境地になった人は、ますます成功します。
反対に、「努力しなければならない」という「ねばならぬ」状態で仕事をしている人は、どんどん苦しくなります。 どんな仕事に対しても… 「好きだからやってるだけよ」と淡々という人には限りない魅力があります。
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