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年齢を重ねても、記憶力は落ちない

今日のおすすめの一冊は、中野信子氏の『あなたの脳のしつけ方』(青春文庫)です。その中から「素敵な先延ばし」という題でブログを書きました。

本書の中に「年齢を重ねても、記憶力は落ちない」という興味深い文章がありました。

よく、「最近、年をとったせいで、記憶力が悪くなってきて...」などといいますよね。 若いころは新しいことをどんどん覚えられたし、人と話すときも言葉がスラスラ出てきたはずが、最近ではなかなか覚えられない。

 いざ人に話そうにも、「なんだっけ、ほら、アレ、アレ!」と肝心の単語が出てこない。 そんな方も多いでしょう。 やはり年齢を重ねることで、脳が衰えて記憶力が悪くなるのでしょうか? それとも、それは単なる錯覚にすぎないのでしょうか? 

結論をいうと、どちらも正確ではありません。 果たして年をとると、人の記憶力は いったいどうなるのでしょう? まず押さえておきたいのが、人は年齢を重ねても決して“記憶力”そのものが落ちるわけではないということです。 

では、なぜ年をとると物忘れが激しくなるのか。 それはこうです。 脳の記憶を保管するデータベースを “箱” にたとえるなら、箱の容量自体は変わらないものの、その "入り口" が狭くなるからです。

 入り口が狭くなることで、ものを入れづらくなる。 だから年をとるとものが覚えられないというよりも、そもそも脳がものをあまり覚えようとしなくなるのです。 

なぜ記憶の箱の入り口が狭くなるのでしょう。 脳を動かすにはかなりの酸素と栄養が必要です。 したがって、できることなら余計な動きは省略し、できるだけリソースを節約したい。 だから年齢を重ねてさまざまな記憶が箱を満たすようになると、新しい経験に対して「これはもう必要な情報ではない」と判断して記憶の箱に入れないようにするのです。 

でも、いくら脳が記憶を拒否しても、覚えたいものは覚えたいですよね。 そんなときこそ、「エピソード記憶」が役に立つのです。 ただ単語として覚える意味記憶では 脳が “不必要" とジャッジする可能性が高いけれど、エピソードや感情、五感などと結びつけることでエピソード記憶として覚えようとすれば、脳が「これは必要!」とジャッジする。 こうしてみごと記憶の箱に収まるというわけです。 

年をとるともう1つ困った症状が表れます。 それは、「覚えていたことが、いざというときに出てこない」というものです。 

会議のここぞという場面で発言権を得たのに、肝心のところで肝心の単語が出てこない。 あるいはメールや資料作成で文章を書いているときに、ピッタリな言葉があることはわかっているのに、どうしても出てこない......。 

似たようなことは誰もが覚えがあるのではないでしょうか。 しかもこれ、年々ひどくなっている気がしませんか? まさにこれこそ、加齢による衰え? 

再び記憶の箱でたとえるなら、これは箱の中身がたくさんになってしまったことによって、いざ中身を引っ張り出そうにも見つかりにくくなっている状態です。 要は データベースが膨大になってしまったことで、検索に時間がかかるようになってしまっているのです。 

「えっと、あの人、なんて名前だったっけ......」と、ハードディスクがカリカリカリカリと検索し続けているイメージです。 だから、これも決して記憶力そのものが落ちているわけではないのです。 

これを払拭するには、なるべくふだんからよく検索にかけておくことに尽きます。 その記憶と結びついている紐を、しょっちゅう引っ張ることで強化するイメージです。 要はそのことをよく考え、よく話すようにすれば、いざというときに思い出せる確率が高くなるというわけです。 

中野氏は、記憶には、「意味記憶」「エピソード記憶」があるという。 意味記憶とは、言葉の意味を表す知識や記憶のこと。 対してエピソード記憶とは、経験したことについての記憶のこと。 

例えば、名前を覚えるとき、ビジュアルと結びつける方法。 内田さんという男性なら「イケメンのウッチー(サッカー選手の)」というイメージで覚える。 これは、日々の練習が必要で、練習すればするほど上達するという。 

面倒くさいと思っても、ふだんからなるべく“ひと手間”かけて、記憶するクセをつけておくといいそうだ。 覚えるときは、エピソード記憶にして何かと関連付けて覚えること。 そして、思い出すときは、ことあるごとに思い出し、それを反復し、復習する。 

つまり、不断の努力が必要だということだ。 まさに勉強と同じ。 すべてにおいて、うまい話はない。 歳をとっても記憶力は落ちないが、ただ勉強量が落ちているだけなのだ。 覚えること、思い出すことに対して… 不断の努力を重ねたい。

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