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サードプレイスとは

今日のおすすめの一冊は石山恒貴氏の『地域とゆるくつながろう!』(静岡新聞社)です。その中から同名の「地域とゆるくつながろう!」という題でブログを書きました。

同書の中に「サードプレイス」のことが書いてありましたが、引用先であるレイ・オルデンバーグの書いた『サードプレイス(コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」)』(みすず書房)の中のエッセンスを書きました。

ヨーロッパとアメリカで二重居住をしているヴィクター・グルーエン(オーストリア出身の建築家、都市計画家。ショッ ピングセンターの父と言われる)とその妻は、ロサンゼルスに広大な住居を、そしてウィーンに 小さな住居をもっている。彼はこんなことに気づいた。「ロサンゼルスでは、安全なわが 家から出て友人宅を訪ねたり、文化行事や娯楽の催しに参加したりする気になれない。そのような外出はひどく時間を食い、長距離の運転で神経をすり減らすことになるからだ 」。しかし、と彼は言う。ヨーロッパでの経験はずいぶん違う。「ウィーンでは、背中を 押されるようにして外出することもしばしばだ。なにしろ歩いてすぐのところにコンサー トホールが二つあり、歌劇場、いくつもの劇場、そして種類も数も豊富なレストランやカ フェやお店があるのだから。ロサンゼルスにいるときとは違って、旧友たちと会うにも事 前の段取りは不要で、たいてい路上かどこかのカフェでばったり出くわす」。グルーエン 夫妻は、アメリカに100倍以上の住空間をもっているのに、ウィーンのささやかな住ま いの半分も楽しんでいない感がある。
ジョゼフ・ ウェクスバーグ (チェコ出身でアメリカに移住した著述家、ジャーナリスト、ヴァイオリニスト、美食家)は、ウィーンのコーヒーハウスが一般市民に「天国と静穏の島、読書室と賭博場、宣伝手段と不平をこぼす場」を提供し、「少なくとも、口うるさい女房とやんちゃ坊主ども、一 本調子のラジオと吠える犬、手ごわい上司とせっかちな債権者から身を守れる」と提言 している。サードプレイスに足しげく通うことには、ストレス源からの逃避や息抜きをはる かに超えた意味がある。人生の退屈しのぎ以上のもの、競争社会の土俵をおりたひと休み以上のものを、サードプレイスの仲間たちから得られる。
会話の達人の多くが、サードプレイスでの簡単なルール を挙げている。ヘンリー・ドワイト・セジウィック(アメリカの法律家・叙述家)は、①自分に割り振られた時間は黙ったままでい る(なるべく長く)。②ほかの人たちが話しているあいだは、その話に真摯に耳を傾ける。③自分の考えを言うが、他人の感情を害さないように気をつける。④「誰もが関心をもつ話 題でないものは避ける。⑤「自分の個人的なことは極力話さず、そこに集った人たちについて語る。⑥説教をしない。⑦ほかの人に聴き取れる範囲のなるべく低い声で話す。
アメリカのコーヒー&ドーナツ店は大半が二四時間営業だ。 居酒屋は、法律で禁止されていないかぎり、たいがい朝の九時から翌日の明け方までやっている。多くの小売店のなかでもコーヒースタンドは、開店時刻がほかの店よりずいぶん早い。サードプレイスとして機能している施設のほとんどが、一日のどんな時間帯にも利 用できる。 それもそのはず、サードプレイスが人びとを受け入れるのは、彼らがほかの場所での義務から解放されたときだけなのだから。基本的な組織―――家庭、仕事、学校からの要求は、無視できない優先課題だ。サードプレイスは、人がよそで義務をこなす前であれ、 合間であれ、後であれ、社交や気晴らしをしたいときにいつでもその要求に応える用意が できていなければならない。
サードプレイスの魅力は、座席の数や、出される飲み物の種類の多さ、駐車場が使えるかどうか、値段といった特徴にあまり左右されない。固定客をサードプレイスに引き寄せ るものは、店側が提供するのではなく、客仲間が提供する。サードプレイスは、しかるべ き人びとがそこにいて活気づけてこその空間であり、その「しかるべき人びと」とは常連 である。常連は、その場所に特色を与え、いつ訪れても誰かしら仲間がいることを確約し てくれる。 サードプレイスは常連に支配されているが、かならずしも数の上でというわけではない。 常連は、いついかなるときも人数に関係なく、その場所を熟知していて、にぎやかな雰囲気を作ってくれる。常連の気風と物腰が、人から人へと伝わり広がる交流のスタイルを提供するから、常連が新顔を受け入れることはとても重要だ。店主が歓迎することは、重要とはいえ大した問題ではない。バーカウンターのこちら側での歓迎と受容こそが、新参者 をサードプレイスの交友の世界へといざなうのである。
サードプレイスは中立の領域に存在し、訪れる客たちの差別をなくして社会的平等の状態にする役目を果たす。こうした場所のなかでは、会話がおもな活動であるとともに、人柄や個性を披露し理解するための重要な手段となる。サードプレイスはあって当たり前の ものと思われていて、その大半は目立たない。人はそれぞれ社会の公式な機関で多大な時 間を費やさなければならないので、サードプレイスは通常、就業時間外にも営業している。
サードプレイスの個性は、とりわけ常連客によって決まり、遊び心に満ちた雰囲気を特徴 とする。他の領域で人びとが大真面目に関わっているのとは対照的だ。家とは根本的に違 うたぐいの環境とはいえ、サードプレイスは、精神的な心地よさと支えを与える点が、良 い家庭に酷似している。 以上が、万国共通の、活気あるインフォーマルな公共生活に不可欠と思われるサードプ レイスの特徴だ。

サードプレイスとは、第一の場所である家、第二の場所である職場に続く第三の場所と言われています。したがって、ここに書かれているサードプレイスは、ヨーロッパのカフェや、イギリスのパブ等を多くあげています。つまり、飲食店がサードプレイスには大きな役割を果たしているということです。しかし、コロナ禍によりリモートワークが進んだ現在、この本が書かれた当時(2013年)とは大きく状況が変わっています。昨今では、地域の様々な勉強会やコミュニティ(目的交流型)が進化形のサードプレイスとして大きな比重を占めています。

というより、これからはますます、この「目的交流型」がサードプレイスとして大きな役割を果たしていくと思われます。サードプレイスからますます目が離せませんね。

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