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自動車の歴史的大変化

今日のおすすめの一冊は、山本康正(やすまさ)氏の『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』(SB新書)です。その中から「テクノロジーで世界はこう変わる」という題でブログを書きました。

本書の中に「自動車の歴史的大変化」という興味深い文章がありました。

自動運転も含め、自動車の製造過程や評価ポイントが、これまでと大きく変わってきています。

今まで、自動車を開発する上で一番難しいとされていたのが、内燃機関の技術の塊であるエンジンでした。 しかし、EVになればモーターがあればいい。端的に言えば、モーターとバッテリーさえあれば、それなりの車を開発できる。

その結果、これまで自動車を作っていなかったような企業や、作りたくても作れなかった企業が、続々とマーケットに参入してきています。 中国ではバイドゥ。ベトナムでも同国最大の財閥ビングループが、2017年にビンファストという自動車メーカーを設立し、東南アジア最大の自動車メーカーになることを掲げています。 

ベトナムは国策として、EVをビジネスの中心にしようと意気込んでおり、当面目指している生産台数は、年間数十万台規模。すでに年間15万台の生産を可能とする工場を、アメリカのノースカロライナ州に建設中です。 

乗り物の大革新には、自動化も関係しています。この先、完全自動運転が実現すればハンドル、アクセル、ブレーキはなくなるでしょう。その結果、人が運転する機会がなくなります。

すると、車は何で評価されるようになるのでしょうか? たとえば、移動している間に室内でいかに楽しく、快適に過ごすことができるか。乗り心地という点ではもちろん、ハードウェアの技術も関係してきますが、それ以上に車内の空調や音楽といった体験面が重視されるでしょう。


ましてやハンドルはないわけですから、前方一面にはモニターが掲げられ、映し出された映画を観ながら移動する。このような未来が想像できます。 実際、そのような車を打ち出している企業もあります。

ソニーとホンダが共同出資して2022年の9月に設立した、ソニー・ホンダモビリティが手がける「AFEELA(アフィーラ)」 です。 AFEELAではまさに、運転席から助手席にかけて大きなディスプレイがデザインされています。

AFEELAをひと言で説明すれば、スマホと車をドッキングしたエンタメコンテンツ、と言えるでしょう。 車に対する評価も、今後はエンタメのボリュームが増えることになりそうです。AFEELAは2025年に予約が始まり、2026年ごろに実際に発売される予定となっています。 

ソニーと同じくアップルも、2026年ごろに、完全自動運転のレベル5を搭載した車両を販売する予定だとも言われています。

MITのジョン・J・レナード氏、デビッド・A・ミンデル氏らが発表した論文によれば、2025年までにレベル4のタクシーや「ライドへイリングシステム(日本以外の国でウーバーなどが展開する大規模な配車サービスのこと)」の数が徐々に増加し、都市部全体に広がり、シャトルバスや公共交通機関、長距離の高速道路ルートではトラックの自動運転化が進む、と論じています。 

また、自動運転化は事故や死亡者数の減少、時間の有効活用、そのほか駐車場の需要の低下、環境への負担軽減、都市の景観の変化をもたらす、とも論じています。

日本の場合、タクシー料金の約7割はドライバーの人件費だと言われています。無人タクシーが増えていくことで、従来のタクシーよりも安価な料金で提供しても利益が出る。そうなれば、広く社会に浸透していく可能性は十分にあります。

◆自動車の発展の歴史は、工業発展の歴史だ。現代技術の粋が集められている。その技術が今やEV化により新たな次のフェーズに入った。つまり、車輪のついたスマホ化している。

「哲学者ヘーゲルは『法の哲学』の序文で、『ミネルバの梟は黄昏(たそがれ)に飛び立つ』という有名な言葉を記している。

ローマ神話の女神ミネルバは、技術や戦の神であり、知性の擬人化と見なされた。梟(ふくろう)はこの女神の聖鳥である。一つの文明、一つの時代が終わるとき、ミネルバは梟を飛ばした

それまでの時代がどういう世界であったのか、どうして終わってしまったのか、梟の大きな目で見させて総括させたのだ。そして、その時代はこういう時代だったから、次の時代はこういうふうに備えよう、と考えた。(『魂の経営』東洋経済新報社)より

20世紀を代表するアメリカの科学史家、トーマス・クーンはコペルニクスの時代を丹念に研究した結果、驚くべき結論にたどり着いたという。それが「パラダイムシフト」。古いパラダイムが、あたらしいパラダイムに移り変わるためには「世代交代」が必要であるということだ。

 今まさに、「自動車の歴史的大変化」のとき、という事実を胸に刻みたい。

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