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人口減に負けない処方箋

今日のおすすめの一冊は、河合雅司氏の『未来を見る力』(PHP新書)です。その中から「人口減少に負けない思考法」という題でブログを書いてみました。

河合氏は人口減少に負けない処方箋として次のようなことを言っています。

人口減少に負けない思考法からすれば、コンパクトでスマートな街づくりに転換することだ。ただでさえ人口が減っていくのだから、郊外に市街地を拡大させて人口密度をより低下させるよりも、既存の「賑わい」に磨きをかけて、より住みやすい人口集積地をつくることに力を入れたほうが街は手早く活気づく。そのほうが“消滅”のリスクを減らせるだろう。
働き手が減る以上、民間サービスはもちろんのこと、地方自治体の職員や警察官、消防士と言った暮らしの基盤を維持する職種の人手が不足していく。その上で、コミュニティを構築して「共助=助け合い」の仕組みを噛ませていかなかれば、暮らしの質を維持することはできない。
ドイツでは、多くの都市が中心市街地から自動車をシャットアウトし、歩行者だけの空間としている。日本がシャッター通り商店街にしてしまっているのとは大きな違いがある。しかも、単に自動車を締め出しているだけではなく、多様な世代が交流するコミュニティを形成している。車いすの人もいれば、ベビーカを押す人もいる。
これはスイスなどにも見られる光景だ。街角のいたるところに椅子が置かれ、街中にくつろぎやすい空間が用意されていたりする。人々の息遣いが聞こえる街づくりだ。将来的に高齢化率が4割近くになる日本にとって大いに参考になるだろう。また、ヨーロッパの広大な穀倉地帯に通る一本道をたどっていくと、ところどころに小さな街が現れる。小さな教会と、それを取り囲むような家々だ。そこには、日本で見られるような寒村のイメージはない。
人口減少社会においては、これまでのような「分業体制」がうまく機能しなくなるという事情もある。東京や大阪といった大都市圏に資本も人材も集め、そこに立地する本社の企画部門、開発部門が頭脳の役割を果たしてきた。地方には工場が建設され、本社からの指示に従って製品をつくり、販売や物流を担ってきた。
これに対して分業ではなく、地方においても、企画から商品開発、販売まで企業活動のすべてがその内部で一貫して行われることをイメージしている。インターネットが普及し、日本国内のどこにいても世界と直接つながることができるので、「拠点」内での完結は十分可能だろう。製品開発や海外のニーズを把握するマーケティングには高度な技能や技術を必要とする。
海外の顧客と直接交渉するには貿易実務や語学力も重要となる。大学などで学んだ知識や身につけた技能を活かせる仕事があれば、大都市の企業でなくとも就職する人は増えてくる。Uターンも進むだろう。結果として、企業は小規模でも利益が上がり、「拠点」の住民は世代交代が進んで活性化する。世界にとってなくてはならない場所を目指すのである。
人口減少社会において、人口の密集を図っていくことは重要だ。たとえば、秋田県の人口は現在95万6000人ほどだ。2015年比で41.2%減と、全国で最も激しく人口が減るとされている。だが、すべての県民が県庁所在地の秋田市の一定エリアに集まり住んだらどうだろう。たちまち100万人近い政令指定都市が誕生する。そうなったら、そのマーケットに期待して資本も集中し、転入者も増えることだろう。秋田県の将来人口推計は全く違うものとなる。
最も肝心なのは、単に人口を集約するのではなく、そこにコミュニティを構築することである。少子高齢化し人口が減少する社会において、住民同士の助け合いは不可欠である。戦後の焼け野原から、日本が何とか立ち上がってこられたのは、“お互い様”の精神が下支えしてきたことが大きい。そうした「共助」の価値感を、いま一度、思い出すことが必要なのである。助け合うには、ポツンと一人で暮らしていては始まらない。
人口減少社会においては、既存自治体の境界線とは関係なく全国各地に「拠点」を設けていく「ドット型国家」に変更せざるを得ないということである。働き手が減る状況下で、われわれが快適に暮らせる場所を少しでも多く残すには、大きく発想を変えざるを得ない。人口が少なくなっても、世界的に注目される特徴的な「拠点」を全国に数多くつくりあげられたならば、日本全体の豊かさを維持できよう。

過疎地から人を移動してもらい、ある程度の人口密集地に集めるというアイデアは素晴らしいとは思いますが、ではどうやったら、先祖代々の土地を捨て、人が拠点に集まってくれるかが大きな問題です。それを、河合氏は移行期間は2拠点生活を認め、公費でそれを補助する仕組みをつくることだといいます。

いずれにせよ、大きな発想転換をしなければ、人口激減というこの「国難」は乗り切れません。今後、すべての人達にとって、人口問題の解決が大前提となってきます。人口問題はDX(デジタルトランスフォーメーション)と並んで、企業や役所にとって、将来の方向性を決めるための超重要な、一丁目一番地の施策となるはずです。

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