会えなかった大好きなあなたへ
一生で一番愛する人には二度と会えないどころか、一度も会えなかった。だから悲しい。
好きという気持ちを封印したいくらい、つらい。
芽生えてしまった母性はいつまで経っても消えてはくれない。
一度でいいから、会いたかった。見たかった。触れたかった。
まだ触れることさえできない、か弱い存在…。
儚いのに揺るぎない、小さいのにとても大きな存在だった。
馬鹿な私はあなたと一緒に今を生きている想像をしてしまう。
色づいた葉っぱがたくさん落ちている小道を手をつないで一緒に歩く。
落ち葉にはしゃぐあなた。
「お母さん、これ、あげる。」
ほっぺを真っ赤にしたあなたは小さな手で拾ったイチョウの葉を私に差し出した。
「ゆきと、ありがとう。」
何のへんてつもない一枚の落ち葉が、私にとってはきっと宝物になる瞬間がたしかにあった。
そんな想像をしたところで、虚しくなるだけなのに、馬鹿みたい…。
でもなぜか想像せずにはいられない。ひとりでいても、いつだってあなたのことを考えてしまうから。
「高い、高い。」をするように、宝物の写真を高くかざす癖がついた。
綺麗な景色を見かけると、あなたにも届けたいと願ってしまう。
だからあなたの写真と一緒に美しい景色を撮り続けているよ。
私はそうやって、毎日、今日を生きている。
命を途絶えさせてしまったゆきとに、私は生かされている。
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