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テセウスの船から家族を振り返る

※テセウスの船に関して、ネタバレ含みます。それよりも大筋、私事が多いです。毒づいていますので、閲覧注意です。

テセウスの船は何気なく見ていて、見逃した回もあるため、すべての伏線を理解しているわけではないけれど、それでも十分に楽しめるドラマだった。本当に優れているドラマって、別に毎回一瞬も見逃さずに真剣に見なくても、ストーリーを掴めるものだ。なんとなく見ていてもなんとなくストーリーが分かって、純粋におもしろくて、続きを早く見たいと思える、そんなドラマだった気がする。

テセウスについては私が語らなくとも、多くの人たちの考察や感想がネット上に溢れているから、内容について詳しく書こうとは思いわない。ただ、そのドラマを見て感じたことを自分なりに書いてみたくなった。

ミステリー、ファンタジー(タイムスリップ)、家族愛など、融合されたドラマだから、つまりショッピングモールのような?たくさんの世代が楽しめる複合的なドラマだったため、多くの人たちから支持されたらしい。たしかにその通りで、私は別にミステリーが大好きとか、ファンタジーだから見たいとか、ヒューマンドラマを好むとかそういうわけではなく、それぞれの要素がおもしろくて最終回まで見てしまった気がする。
でも一番惹かれたポイントはやはりタイムスリップで。常々人生やり直せたらいいのにと思って生きているから、興味深かった。

今朝こんなツイートをアップした。

<テセウスの船、正志が本当に恨むべきは父親だけで良かったはず。だって文吾は食中毒を事故処理しようとしたのに犯人探しを命じたのはその父親で。自分の身内が毒キノコを間違って混入させたと知った途端、揉み消そうとしたんだから。文吾はそれを正志に教えなかったからやさしいと思う。>
<お前の親父に言われて仕方なく事件扱いしたんだと命乞いしたら、正志がますます父親を恨むことになるから言わなかった文吾はやさしい。という解釈で良いのだろうか…正志の父親がみきおに殺されたのは因果応報。すべての事件の根源は正志の父親かも。自分勝手な人間には天罰が下る。>

どうして正志の父親にこだわったのかというと、自分の家と重なってしまったから。私ではなく、父親とその父親がそんな感じだから。私が生まれる前、40年ほど前に他界した祖父。政治家で地元では名士だったらしい。慕われていたらしいのだけど、それはきっと表向きで。選挙が絡む家だから、敵か味方しかいない。持ち上げてくれる人もいれば、煙たがる人もいるわけで。そんな家庭で育った私の父親は性格が歪んだ。両親は選挙で忙しいから相手にしてくれない。末っ子の父を女中さんが面倒を見ていたらしい。世渡り上手な性格なら、家の権力を利用して、のほほんと暮らしてれば良かったのに、純粋で、まっすぐで、正義感が強くて、コネ関係が大嫌いな父親はその家に馴染めなかったのだと思う。どんなに努力しても、親の七光りとしか見てもらえなかったといまだに世間に対するちょっとした恨みを抱えて生きている。とは言え、ちやほやされるのを嫌っていたわけでもなく、相手にされることはうれしかったらしい。親にあまり相手にしてもらえなかったため、愛情に飢えていただけで、特に酔っぱらうと周りが自分を構ってくれることがうれしかったらしく、なかなか酒乱だった。タバコを食べたり(当然、死にかける)、カエルを口に入れたり、木に登ったり、まだ帰らないと駄々をこねたり…というシーンを私は幼少期間近で見ていた。

そんな親の元で育ったせいか、私は妙に冷めた人間に成長していた。一方妹はだんだん狂い始めて行った。今となっては近所では有名な立派な発狂女に成長した。
何を言いたいのかというと、私は政治、選挙が嫌いだ。民主主義は否定しないけど、でも選挙に躍起になる家庭は子どもをダメにすると思うから。父親はある意味、被害者で。素面だと堅物、エゴの塊なのに酔うと突拍子もないことを仕出かす父親が嫌いだけど、そんな父親をかわいそうだなとも思う。

別に父は父を憎んでいたわけでもなく、ただ単純にもっと構ってもらいたかったという雰囲気を子どもながらに感じていた。父は祖父を尊敬していたようだし。
でも性格が歪んでいるのは事実だし、その父が結婚して家庭を築いてしまったから、妹のように発狂する子ども、私のように冷めた子どもが形成されたから、みんな選挙の被害者だよなと思う。父と妹はなぜか選挙が大好きなのだけど。

別に政治の話をしたかったわけではなく、テセウスに戻って一番言いたかったことは、結局正志が黒幕だったものの、正志は正志で被害者だよなということ。父親が議員になるために村に不安を残したくないと犯人捜しを命じ、妻が犯人と知ると今度は自分の面子を保つために事件もみ消しをはかるという…全部、自分の身を守るための軽率な行動で、正志の父親さえ騒がなければ、ただの事故で済んだのにと。おかげで、妻、正志を含めた子どもたちは不幸な人生を歩み、正志は新たな事件を企ててしまった…全部議員選挙のせいじゃないかと思った。父親が政治家でなければ、何も起こらず平和だったのにと。それではテセウスの話にはならないわけだけど、現実でもあり得る話なわけで、タイムスリップものなのに、妙にリアリティが感じられて、考えさせられた。

自分の話に戻ると、発狂している妹の気持ちは分からなくもない。こんな家庭で育てば発狂したくもなる。妹は完全に被害者で、それは存在させた親の責任。でもどんなに妹の気持ちが分かるとしても、私は妹のように暴れるのではなく、もっと賢い反抗心を示そうと決意した。つまり物書きになるということ。発狂したい気持ちは文章上で表現すればいい。いつも冷静で、何考えているか分からないような外面をキープしつつ、内面の反抗心を示すため書きまくるという手法を思いついた。おかげで、妹のように暴れたくなることはなく、表向き、平穏に暮らしている。心の中ではメラメラ復讐心?に火を灯しながら書いているけれど。

もしも物書きになれたら、親孝行にもなるし、選挙家庭に対する復讐にもなる。妹のように発狂せず、正志のようにバカな事件は起こさず、私は私の手段で、自分の世間に対するちょっとした恨みを果たそうと決めた。けっこう綺麗事書いているし、褒めてもらえることも多くなったけれど、本性はみきお並みに歪んでいるかもしれない。でもみきおの目的が鈴を手に入れることという単純なものだったように、私の目的も単純で、別に孝行や復讐だけが目的ではない。物書きでそれなりに売れて、大金を手にしたら、妹を他人の手に委ねたいということが目的。施設でもいいし、24時間体制のヘルパーでもいいし、とにかく、親が亡くなった後、私ひとりでは手に負えないから、今のうちに資金を貯めたい。普通に働いただけでは自分が食べていくのがやっとだから、大金を手に入れる方法は作家になることではないかと単純にそう考えた。

去年、ちょっとした公募に応募したら、講評が届いて、受賞は逃したものの、自費出版いかがですか?と持ち掛けられた。吉本ばななさんなんかはちょっとしたコラム400字程度でも100万円の価値があるんですよなんて電話越しに言われた。最初は200万円出してもらうことになりますが、売れればすぐに元取れますよと現実味のない話を言われた。もちろんそんなうまい話があるわけがないから、お断りしたけれど、でも作家っていいなと憧れは抱くようになった。100万円はありえないけれど、この前1300字書いた原稿は7000円相当の原稿料をもらえたし、つまり1時間で書いたから時給7000円。悪くない。こういう仕事だけできるようになれたらいいのにと夢見てしまう。

話が脱線したので、テセウスに戻ると、もしも心のようにタイムスリップが可能なら、私はまず全力で両親の結婚を阻止したい。父は母を嫌っているし、母は父の愚痴ばかりだし、うんざりする。昔からずっと。本当は婿に来る予定だったのに、ドタキャンして母が父の名字になったし、父の妹に少し悪い噂があっても、父と父の家族はそれを母には隠して結婚した後に暴露するという卑怯な面もあるし、そもそも結婚前夜に結婚をやめたいと母は思ったらしいから、私が全力で止めに掛かりたい。あの人と結婚したらろくな人生歩めませんよと父と母、それぞれに伝えて説得する。破談にする。そのためなら何だってする。心と同じように、命に代えても。というか父と母の縁談を破談にすれば私はそもそも存在しないし。存在しなくて済むし。

心と同じ手段でタイムスリップできたとして、私は心のように家族の絆を取り戻すどころか、家族を引き裂きたいなんてやっぱりみきお並みに歪んでいる。
心と文吾のような親子に憧れるけれど、あんな親子現実に存在するのかな。あまりにもキレイすぎて、理想的すぎて、感動はするものの、到底真似できない。事件前の心の家族を見ていると、自分の家族との落差が激しくて、少しつらくもなった。事件後の家族はバラバラになったから、まぁうちと同じようなものだって思ったけど。

しかしポイントはやはり由紀のような存在なわけで。亡くなった由紀のおかげで、心は文吾を信じてみようと思えたわけだし、記者の由紀がいなければ、事件の真相を追えなかった。ああいう自分を救ってくれる存在がいるだけで、強くなれるんだなと。私にはそんな人いないから。だからまだ信じてみたいとか思えない。
誰もいないから、仕方なく、自分で自分の心を救うべく、物書きを目指している。理想的なエンディングの物語を書いて、満足して、自分の人生やり直している。

だから心が死んでしまって悲しいラストだったけれど、私は自分でその後の話を想像している。心は過去で亡くなったことにより、タイムスリップする前の時代に戻って、めでたく記者の由紀とも結ばれた話を妄想している。だって私は記者の由紀も好きだったから。カップルじゃない関係なのに、お互いに協力し合って、素敵だと思ったから。すでに付き合って結婚してる最初の由紀とラストに登場した現代の由紀は別に最初から幸せだから興味ない。記者の由紀が一番、赤の他人なのに、ひとりで突っ走って、心を助けようとしてくれたから、憧れた。こういう関係もいいなと。だから幸せになってほしい。心が無事戻れて。でも指輪は文吾が持ってるから、新しいものを用意して。

というような続きを妄想したくなるドラマだった。それぞれのキャストがいい演技していたから、回収できていない部分の続編なども期待したい。なんだかんだみきおと鈴は結婚してほしい気もするし。本当の本当の黒幕はもっと別にいるとか。だって、毒キノコで恨むのは本当は母親を亡くした徳本じゃないかとか、校長の息子のケンカも気になるし…校長最後はなんだかあっけなかったし。さつき先生の高校時代の相手も気になるし。いくらでも続話は膨らみますね。

続編が放送されるまで、私は妹のように発狂することなく、正志のように加害者になることもなく、平穏な闘志を持って何かしら執筆し続けようと思います。
心たちの家族愛によって、自分の家族を振り返りたくなったという話でした。

  #テセウスの船    #タイムスリップ   #夢   #物書き

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