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UV厚盛り印刷? アンカット? 工場見学してきました!|#全恋 マガジン vol.14

2日連続で、こんにちは。
ひろのぶと株式会社 編集の廣瀬翼です。


みなさまからの #全恋 ポーズ

『全部を賭けない恋がはじまれば』
すでにたくさんの方にご購入いただき、ありがとうございます! みなさんが #全恋 ポーズの写真を撮ってアップしてくださっているのを見て、ニコニコする毎日です。

みなさまのツイートのお写真から田中泰延が作成しました

今日は工場見学レポート第2弾をお届けします

写真と共によくいただくのが、カバーのツヤツヤ加工やぷっくりしたハートの手触りへの感想(この♡、手触りまで可愛いですよね!)。また、製本についてもこだわりポイントに気づいてくださっている声をいただくことがあります(ありがとうございます!)。

実は今回、このツヤツヤの加工も、製本所も、著者・稲田万里さんと共に実際に見学させていただきました……!

そこで本日は、藤原印刷さんの印刷立ち合いに続く、工場見学レポート第2弾です!

装幀家・佐藤さんも一緒に見学! ツヤツヤぷっくりの「UV厚盛り印刷」——東洋FPP株式会社さん

時は9月末。松本の藤原印刷さんでの印刷立ち会いの少し前のこと。

「UV厚盛り印刷の見学に、装幀の佐藤亜沙美さんと行くので、ご予定合えば一緒にどうですか?」と藤原印刷さんからご連絡をいただきました。聞くと、UV印刷の工場見学は佐藤さんも初めてとのこと。佐藤さんの「ぜひ、一度見てみたい!」というご希望を受けて、特別に見学できることになったといいます。

企業のリーフレットや商品パッケージ等でも使われることの多い特殊印刷なため、実際に作業をしているところを外部の人が見学させていただけるのは異例なのだそう。

そんな貴重な機会、見させていただけるなら是非にと、一も二もなくご一緒させていただくことに! 10月上旬、川口の東洋FPP株式会社さんへ伺いました!

佐藤さん、稲田さん、藤原さん(藤原印刷)
※ 工場内の撮影はナシという条件で、特別にOKいただけました

「UV厚盛り印刷」とは、#全恋 のカバーに施されているツヤツヤぷっくり加工のこと。メッシュ状の版に孔(あな)をつくり、孔の部分にだけインクを落として印刷する「シルクスクリーン」の一種です。

工場に入ると、印刷機にはカバーたちが。藤原印刷さんで印刷されるのを見届けた後、マットな質感を表現するマットPP加工を全体にかけられた用紙が、その上にUV厚盛り印刷を施されるのを待ち構えていました。

ここで問題!
「UV厚盛り印刷」の「UV」とは、何の略でしょう?



正解は「Ultra Violet」
つまり、紫外線!

「UV印刷」とは、特殊なインクを載せ、紫外線を当ててそのインクを固める加工なんです。ジェルネイルのイメージに近いですね。そのなかでも、特にインク量が多くぷっくり度が高いものを「厚盛り」といいます。

#全恋  は、ふんだんにUV厚盛り印刷を施しています。

印象的な唇と口紅に

帯を外した下の背景のドットや書名部分に

背表紙の透明なハートに

裏側や袖(カバーを折り返している部分)のハートに

さらに頬のキラキラや英字タイトルの細かなところまで

これら全て、カバーの凹凸はUV厚盛り印刷によるものなんです!

藤原印刷さんも、佐藤さんも、こんなに全面にUV厚盛り印刷を使用したのことはほぼないそう。印刷機械の特性上、端のほうは位置がずれやすいそうで、最初は「どこまでできるかな……」という話もしていました。

ところが本紙校正(色校)が上がってきてびっくり! 端までしっかり綺麗、ズレるかなと思っていた細かな英字までピッタリ。

なぜこんなに綺麗に印刷できるのか。見学しながらお話しを伺うと、そこには職人技が光っていました。その一部をご紹介すると……

●紙の種類によるインクの浸透のしやすさなどから、使用するインク量などを判断
長年の経験と知識が重要なポイントです。

●印刷の版は、実際に紙が届いてから、それに合わせて作成する
データから作成すると、さまざまな条件で実際の紙とずれてしまうことがあるそう。

●その日の湿度や温度などに合わせて、印刷直前に版を手で調整
紙も版も、湿度や温度で微妙にサイズが変わってきます。それを調整するのは人の手。シルクスクリーンの版は布で出来ているため、わずかに伸縮性があります。そこで微妙な紙の伸び縮みに合わせ、枠を引っ張るなどして版を調整するそうです。まさに、職人技。

他にもポイントはたくさんありますが、とにかくひと作業ひと作業が、聞くごとに「そこまで手をかけてるの?!」と思うほど丁寧。だから、一日に印刷できる枚数も限りがあるとのこと。そんなUV厚盛り印刷をこんな全面にふんだんに使っているなんて……なんて、贅沢なカバー……と改めて実感。

佐藤さんも初めての見学に発見がいっぱいあった様子で、喜んでらっしゃいました。

東洋FPP株式会社さん、特別に見学させてくださり、そして美しい加工で 『#全恋』を艶やかに彩ってくださり、本当にありがとうございます!

本が“本”になる瞬間! 「アンカット」までこだわった仮フランス装 製本の現場へ——加藤製本株式会社さん

10月の第2週。再び藤原さんよりご連絡をいただきました。
「今週、製本過程を工場で見学できます!」
ということで、再び稲田さんと一緒に、本が、本の形になる瞬間を見に行ってきました!

写真暗くてごめんなさい! 
見学終わった後に撮ったら、もう暗かったのです。

今回の製本は「仮フランス装」というスタイル。小説はもちろん、海外の高価なステーショナリーブランドでも使用されていた製本方法です。

「仮フランス装」の大きな特徴は2つ。

●表紙は、天地左右の余白を折り返して糊付けしてある

天地左右を折り返して糊付け。

●表紙が、中身の本に対して少し大きい

……とここで、写真を見て「ん?」と思った方。鋭いです!

はい、今回の製本、もう1つ特徴があります。
それは、本の上部「天」が切り揃えられていないこと。

これはミスではなく、「アンカット」と呼ばれる製本手法です。特に左右と地(下の部分)の他3辺は切り揃え、天のみアンカットにしていることを、「天アンカット」と言います。中世ヨーロッパの製本の伝統的な雰囲気を引き継いだ手法で、仮フランス装に限らず文芸の世界では取り入れられることが多く、例えば岩波文庫、新潮文庫でも採用されています

そんな細部まで、製本所さんにひと手間掛けていただいてこだわった製本。まずは「一部抜き」といわれる状態からスタートします。

16ページ1束です

工場には、これに見返しをつけて束にして天以外の3辺を切り揃えた「中身」と、「表紙」が用意されていました。

中身
表紙

製本機のスタート位置では、「中身」をスタッフさんがどんどん機械に入れていきます。この時、3辺のカットが綺麗にされているか、天がアンカットになっているか、向きが合っているかなど製本前の最終チェックをします。

たくさん積まれた、 #全恋 の中身!
人の手で確認しながら、製本機に入れていきます

そうして製本機にセットされた「中身」は、一定の間隔でどんどん送られていきます。

機械で持ち上げ、背にローラーで糊をつけます。

動きが速くてブレブレですが、左下・白い筒状のものが糊のついたローラー。銀の四角いものに、背を下にして「中身」が挟まれています

そのまま運ばれていき、綺麗に開かれた表紙の元へ。スッと表紙の中央に置かれて、接着。

製本機の先で待っていると、糊を乾かし、表紙を折った本が、ドンドコ出てきました。

#全恋  の行進!

うわぁ、本だ……「製品」としてつくられている本だ!!!

最後は、10冊ずつ綺麗にまとめられ
スタッフさんが手で最終確認をしながら丁寧に積んでくださいます。
これ、全部 #全恋 です!

私は、ここでたくさん並んで運ばれてきているのを見て、初めて「商業出版」として世に出していくんだと実感できた気がします。それと同時に、なんだかこれまで自分たちの腕の中にあったものが、知らない大海に旅立っていくような気がしました。

加藤製本さん、見学の機会をいただき、ありがとうございました!

・・・

みなさんのお手元に届いている #全恋 は、私たちが見学した日に出来上がった本に、後日カバーと帯を、こちらも加藤製本さんが丁寧に巻いてくださったものです。

東洋FPPさんも、加藤製本さんも、見学では「わぁ、工場だ! どんどんできていく! すごい!」と思ったのが半分。一方で、「工場」と聞いてイメージする以上に、細部でたくさんの人が関わっているんだなと改めて感じました。

ぜひ、カバーの手触りやページの雰囲気なども感じながら、読んでくださいね。そうして何度も手に取り愛でられて、あなただけの一冊になりますように。

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カバー印刷立ち合いの記事はこちら


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